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 木下 里都(23歳・KMGホールディングス)投手 183/87 右/右 (福岡舞鶴-福岡大出身)
 




 「球速は破格」





 今年の都市対抗では、最速156キロを記録していた 木下 里都 。そのスピード能力は、今年のドラフト候補でも屈指のレベルにある存在だと言えよう。そんな男が、なぜ1位候補とまではならないのか? 考えてみた。


(投球内容)

 今年度の公式戦の成績は、
52回1/3 57安 13四死 39三 防 2.92 といった成績になっている。都市対抗では先発したが、3回2/3 4安 2四死 5三 3失 といった内容で、早々降板している。

ストレート 150キロ~156キロ 
☆☆☆★ 3.5

 確かに
破格の球速を記録するし、ボールの勢いも悪くない。しかし気になるのは、投球回数を上回るほどの被安打を浴びていることと、奪三振率の低さにある。四死球率こそ悪くはないのだが、ゾーン内では、結構バラツキが激しい。そういった意味では、球速こそ破格ではあるものの、それを活かせるだけの技術が、まだまだ備わっていない感じがした。

変化球 スライダー・カット・ツーシームなど 
☆☆☆ 3.0

 スライダーでは、結構カウントを整えることができる投手です。またカットボールを交えたり、沈む球がツーシームなのではないのでしょうか。
絶対的な変化球はないのですが、カウントを稼ぐことはできているので、四死球で自滅することは少ないようにも思います。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒 ぐらいとそれなり。それほど牽制は入れて来ないのですが、
ボールをじっくり持って投げるので、走者が焦らされてスタートは切り難いように思います。細かい制球力はありませんが、そういった「間」みたいなものは意識して投げられていました。

(投球のまとめ)

 粗っぽい部分も残しますが、四死球で自滅するような危うさは少なく、ランナーを出しても冷静に対処できているなど、投手らしい一面も顔を覗かせます。即戦力とは言えませんが、今後
新しいものを吸収して行ける、そういった素養はあるように感じました。





(投球フォーム)

 セットポジションから、
勢い良く高く足を引き上げて来るリリーフタイプの入り方です。軸足一本で立った時に、膝から上がピンと伸び切って余裕が無いのですが、高く引き上げた足を使ってバランス良くは立てています。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 
引き上げた足は地面に向けて伸ばしがちなので、お尻の一塁側への落としには少し甘さが残す。したがって、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種の変化は鈍くなりがち。

 「着地」までの粘りは平均的で、体を捻り出す時間は並ぐらい。したがって武器になるような大きな変化は期待できないが、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 
グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドのへのコントロールはつきやすい。ただし、少し腕が外旋しているのと腕の振りが強すぎるので、狂いが生じやすいのかもしれない。

 足の甲での地面の捉えは、少し押し付けが遅れて若干浅く見える。また「球持ち」は悪くないように見えるが、
ボールの押し込みが足りない気がする。この辺が、ボールが高めに集まりやすい要因かもしれない。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォーク系の球は観られない。ツーシームを投げることで、多少負担はかかっているかもしれないが、そこまで現時点では気にする必要は無さそうだ。

 
腕の送り出しにも無理は感じられず、肩への負担は少なそう。むしろ、かなりの力投派であることからも、疲労は溜めやすい恐れはある。そのため、思わぬところを痛めたりする可能性は否定できない。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 
「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。そういった意味では、球速ほど打者は苦になり難いフォームなのかもしれない。投げミスも少なくないことも相まって、被安打は投球回数を上回ってしまっている。

 
腕は強く体に絡み勢いがあるのだが、ボールが見やすいのか? 思いのほか奪三振率は低い。しかし、ボールにしっかり体重を乗せてからリリースできており、地面の蹴り上げは素晴らしい。そういった意味では、最後までしっかりエネルギーを伝達することは出来ているのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「着地」までの粘りと「開き」に課題があることがわかる。制球を司る動作は平均的で、故障のリスクが高くないのは明るい材料。今後、いかにして真っ直ぐを活かすだけの技術と変化球を磨けるかではないのだろうか。


(最後に)

 速い球を投げるということに関しては、今年の候補でも屈指のレベルにある。しかし、
それを活かすだけの変化球やフォームにコントロールなどには課題を残している。大卒社会人ではあるものの、まだまだ素材型。しかし、新しいものを吸収して行ける素養を感じさせる選手だけに、1,2年ファームでしっかり土台を作ることができたら、リリーフでチームに欠かせない存在になれる、そういった素材ではないのだろうか。リスキーさも伴うが、3位前後であれば賭ける価値はありそうだ。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2024年 都市対抗)