24sp-4


 




江原 雅裕(24歳・日鉄ステンレス) 投手 186/83 右/右 (天理-国学院大出身)
 




 「真っ直ぐだけだったけれど」





 この夏の都市対抗では、真っ直ぐだけしか投げていなかった 江原 雅裕 。国学院大時代は、リーグ戦での登板は僅か1試合。ほとんど、無名の存在が、大舞台で153キロを記録したのは圧巻だった。


(投球内容)

 今年度の公式戦では、
16回 8安 7四死 16三 防 2.81 と全てリリーフとしての登板。補強選手として、大舞台を踏んでいる。

ストレート 常時150キロ~MAX153キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 
指にかかった時のボールが、ミットに収まる時の爽快感は見事。しかし、ボールも抜けたり、意識的なのか無意識なのか? 結構動くことも少なくない。これだけのボールを持っていながら、これまで無名だった要因はコントロールだろう。抜け球も少なくなく、今年も16イニングで7四死球と、制球がかなり粗いことは確か。

変化球 スライダーなど 
☆☆★ 2.5

 スイーパーのような、曲がり過ぎるぐらいのスライダーを投げてくる。最近は、多少セーブしてカウントを整えてくることが多い。他にもカットボールやフォークなどがあるそうだが、どれがそれなのかはよくわからなかった。いずれにしても、
真っ直ぐへの依存度が高い投球スタイルだった。

その他

 クィックは、0.95~1.0秒 ぐらいと高速。フィールディングの動きも良く、牽制も適度に鋭い。それほど走者への目配せをしているように見えなかったので、フォームを盗まれないように注意したい。
投球以外の部分の能力は、想像以上にしっかりしている。

(投球のまとめ)

 全く変化球を交えられない投手ではないみたいだが、普段から真っ直ぐへの依存度は相当高い。スライダーも、腕の振りが早すぎて曲がり過ぎてしまい、コントロールできないこともあ多々あるのかもしれない。恐らく縦の変化も、大事なところで使えるほどの精度・キレはないからこそ、滅多に観られないのだろう。現状は、あくまでも
素材型の域を脱していないようには思える。





(投球フォーム)

 今後の可能性も考え、投球フォームについて考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さがある。フォーム序盤からも高いエネルギーを捻出されており、やはり
リリーフタイプなのだろう。軸足一本で立った時には、膝から上がピンと伸び切ることはなく、適度なバランスを保って立てていた。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 比較的高い位置で足を伸ばせているので、お尻は適度に一塁側には落ちている。したがって体を捻りだすスペースは確保できており、カーブやフォークといった球種を投げるのには無理は感じられない。

 しかし、「着地」までの地面の捉えは平均的。そのため、体を捻り出す時間は並ぐらい。もっと「着地」までが粘れて来ると、曲がりの大きな変化球の修得も可能になってくるかもしれない。ただし腕の振りが鋭すぎてボールが制御できず、球速のある小さな変化球を中心に、ピッチングを広げてゆくタイプなのかもしれない。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 
グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めている。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすい。足の甲での地面の捉えが浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」は悪いようには見えないが、抜け球も多く指先の感覚は良くないように見えた。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は落とせているので、カーブやフォークを投げても肘などへの負担は少なそう。腕の送り出しを観ても、肩などにも負担がかかっているようには見えない。力投派ではあるのだが、そこまで疲労を溜め込むほどでは無さそうだ。故障のリスクが低ければ、どんどん投げ込んで新しい技術を試して行けそうだ。

<実戦的な術> 
☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りが平凡で、
ボールの出どころはやや見やすい。それでも圧倒的なボールの威力があるからか? 被安打は非常に少ない。腕が投げ終わったあと体に絡んでくるようなことはないが、腕の振りが鋭すぎて上手く変化球が制御できていないように思える。ボールにまだ体重が乗せきれているといったほどではないので、さらに打者の手元の真っ直ぐの勢いや球威が良くなってゆく可能性を秘めている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」などでは、
動作全体に粘りが足りず物足りなさが残る。制球を司る動作では、足の甲での地面の捉えの浅さからか? ボールが高めに抜けやすい。故障のリスクが低いのは明るい材料だが、腕の振りが鋭すぎるのか? 動作の割に上手くボールが制御できず、変化球を操ることができていないように思える。この微妙な感覚を、掴むことができるかが鍵になりそうだ。


(最後に)

 限りなく素材型の域を脱しておらず、即戦力として期待するのは厳しそうだ。プロの指導や環境の元、何か感覚的に掴めるかどうか? それでもこれだけの真っ直ぐを投げられる素材だけに、社会人選手であることを考えると、本会議の最後の方に指名して来る球団が出てくるのではないのだろうか。かなりリスキーな素材ではあるが、化けた時のリターンは大きいだろう。ただし、社会人チームの所属で無ければ、育成枠で指名したいタイプではないのだろうか。そのため私の評価でも、本会議級である 
 をつけることはできなかった。


(2024年 都市対抗)