24sp-3





吉田 聖弥(22歳・西濃運輸) 投手 176/77 左/左 (伊万里農林出身)





 「もっと速く見えた」





 都市対抗の東海予選の時には、もっと真っ直ぐで押していたイメージが強かった 吉田 聖弥 。しかし、都市対抗本戦では、試合を壊さないように丁寧に投げていた感じで、3試合ともにそんなピッチングに終始していた。


(投球内容)

 高卒4年目ながら、完全に西濃運輸のエースに成長。ここまでの公式戦では、
71回1/3 65安 25四死 81三 防 2.52 という数字を残している。

ストレート 140キロ~140キロ台後半 
☆☆☆ 3.0

 キレのある球というよりも、ズシッとした
球威のある球で詰まらせるタイプです。両サイドに投げ分けるコントロールがあるものの、時々高めに浮いてヒットされるケースも目立ちます。高めにゆくのであれば、空振りが取れる球質じゃないと苦しいようには感じました。ただし、四死球で自滅する、そういった危うさは感じません。

変化球 チェンジアップ・スライダー・カットなど 
☆☆☆★ 3.5

 投球の多くが、真っ直ぐとチェンジアップとのコンビネーションで組み立てられています。時々曲がりながら沈むスライダーやカット系も見受けられますが、頼れる変化球は
腕の振りから見分けの困難なチェンジアップにあります。この球は、プロでも有効に使える球種だと考えられます。

その他

 クィックは、1.0秒前後 と素早く、時々投げるタイミングも変えてきます。それほど細かい出し入れとかよりも、淡々とコースに投げ分けて来る感じ。牽制などは、確認できませんでした。

(投球のまとめ)

 速球とチェンジアップとのコンビネーションなので、やや
単調な印象は受けます。本当ならば、もう少し他の球を使ってピッチングの幅を広げたいところですが、それほど効果的では無いので、チェンジアップに頼ったピッチングスタイルになっているのでしょう。何度も対戦するプロの打者相手に、この投球スタイルで何処まで行けるのか微妙な感じはします。また、アマでは打ち損じてくれていた高めの速球も、プロの一軍レベルの打者になると、見逃してくれない恐れはあります。都市対抗予選の時には、もっと真っ直ぐ中心に、グイグイ押せていた印象があるので、その平均値が何処にあるのか掴みきれていません。





(投球フォーム)

 セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり。そういった意味では、先発だけでなく、リリーフ適性もあるのかなとは思いました。軸足一本で立ったときにも、膝から上が真っ直ぐ伸び切ることはなく、
力みなくバランス良く立てていました。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足は地面に向けて伸ばしがちなので、お尻の三塁側(左投手の場合は)への落としには甘さは残します。したがって、カーブやフォークといった球種の曲がりは、鈍くなりがちになります。

 「着地」までの粘りはそれなりで、体を捻り出す時間は確保。そのため、カーブやフォークのような捻り出して投げる以外の球であれば、曲がりの鋭い変化球の修得も期待できます。実際には、
チェンジアップに威力があるので。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 
グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすいかと。しかし、足の甲での地面の捉えが浅く、浮き上がろうとする力を充分には抑えられていません。したがって力を入れて投げると、ボールが浮きやすいのではないのでしょうか。 「球持ち」に関しては平均的で、制球を大きく崩すタイプでは無さそうですが、そこまで繊細なコントロールがあるわけでも無さそうでしたが。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さを残すが、カーブやフォークといった球種も滅多に観られないので、そこまで気にすることも無さそう。ただし、腕の送り出しでは、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がりがちには見えるものの、これも肩に大きな負担がかかるほど極端なものでは無さそう。また、力投派でもないので、疲労も溜めやすいということもないのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそれなりで、ボールの出どころも適度に隠せている。そのため、打者から合わされやすいことは無さそう。あとは、高めに浮くなど、甘く入らないように注意したい。

 腕の振りは特別鋭さはないものの、
リリースポイントや腕の振りから真っ直ぐと見極めが難しいとされている。ボールへの体重の乗せも適度に出来ているように見えるが、時々三塁側に投げ終わったあと流れるなど、作り出しエネルギーをロスしてしまっている。こういった部分が改善されて来ると、もっと打者の手元まで生きた球がゆくようになるのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「体重移動」に改善の余地が残されていそう。故障のリスクやコントロール司る動作に関しては並ぐらいで、今後先発として活躍するためには、使える球種を増やし投球の幅を広げて行けるかではないのだろうか。


(最後に)

 プロの一軍で活躍するためには、もう少し
真っ直ぐで押せるだけのものがないと苦しくなりそう。それでも社会人でも実績を重ね、適度なまとまりも持っている。年齢的にも、大学4年生と同じ世代。貴重な先発が期待できる左腕ということで上位指名が予想されるが、プロで活躍するためには、もう一つ何か欲しいという思いは否めなかった。都市対抗予選のボールの勢いを、プロでも安定して出せようになれれば、また違ってくるのかもしれない。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2024年 都市対抗)