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早川 太貴(25歳・くふうハヤテ)投手 185/96 右/右 (大麻-小樽商科大-ウィン北広島出身) 





 「ボールが強い」





 驚くような球速の持ち主ではないが、打者の手元まで力強いボールを投げられており、容易には長打を喰らわない球威を持っている 早川 太貴 。短いイニングであれば、一軍でも面白いのではないかとみている。


(投球内容)

 今シーズンからウエスタン・リーグに参戦した くふうハヤテ の主力投手として活躍。今シーズンは、
25試合 4勝7敗 防 3.22 といった成績が残っている。

ストレート 常時145キロ前後~150キロ台前半 
☆☆☆★ 3.5

 球速としては、昨今のドラフト候補としては際立つ数字ではない。それでも、打者の手元までのボールの威力のみならず、結構
要所で内角を厳しく突くことで、詰まらせるケースが目立つ。そういったところに投げられる制球力に、度胸の良さを持っている。

 今シーズンは、95イニングで89安打。被安打率は、93.7 と、一軍基準である80%以下にはまだ開きがある。四死球は34個で、四死球率も 35.8% と、基準である投球回数の1/3(33.3%)以下を僅かに満たせず。実際要所では内角を突けるが、普段はボールが暴れていてアバウトな印象を受けた。

変化球 スライダー・シンカーなど 
☆☆☆ 3.0

 小さく変化するカットボールやスライダーに、シンカー系の沈む球を織り交ぜてくる。変化自体は小さいので、それほど空振りを誘えるほどではない。それでも、打者の手元で微妙に変化しており、効果としては悪くない。95イニングで、三振は73個。1イニングあたりの奪三振は、0.77個 と僅かに基準に届かず。先発投手の場合、1イニングあたり 0.8個以上の三振が奪えると、決め手があるといったことになる。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒ぐらいとそれなり。適度に鋭い牽制も織り交ぜて来るが、まだ微妙な「間」を意識してとか、そういったピッチングではない。勝負どころで開き直り、
厳しいところを突けるマインドの高さは評価したいところだが。

(投球のまとめ)

 
残した成績的には、まだ一軍定着するほど絶対的なものではなかった。シーズン序盤は先発を任されていたが、後半戦ではリリーフでマウンドに上がることが多かった。特に、シーズン後半戦には安定してきており、実戦の中で成長し続けたのかもしれない。





(投球フォーム)

 全体に
丸まった感じのフォームなのですが、セットポジションから足をスッと高い位置まで引き上げます。軸足一本で立った時には、膝が上がピンと伸び切らないので力みは感じられず、全体的にもバランスを保って立てています。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足をピンと伸ばすことなく抱えたまま重心を下げるので、お尻の一塁側への落としには甘さは残ります。そのため、カーブやフォークなどの捻り出して投げる球種が投げられないことはありませんが、その変化は鈍くなりがち。また彼の場合、腕の振りがスリークォーターなので、余計にそういった球には適さない感じがします。

 「着地」までの地面の捉えまではそこそこで、身体を捻り出す時間もそれなり。曲がりの大きな変化球よりも、手元で小さく変化するスライダーやシンカー系の球を現在も投げており、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げてゆくのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできています。そのため軸はブレ難く両サイドへのコントロールはつけやすいのでは? 

 足の甲での地面の捉えもできているように見えるのですが、その時間が短いように思えます。それほど高め集まるということはないのですが、ボールは結構バラついています。「球持ち」も平均的で、そこまで
繊細なコントロールがある感じではありません

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残しますが、カーブやフォークといった捻り出して投げる球もほとんど観られませんし、窮屈になる機会は少なそう。腕の送り出しを観ても、肩への負担などは少なく見えます。それほど力投派でもないので、疲労を溜め込むといった感じでもありません。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも
少し見やすい部分はありそうです。そのため、コースを突いたはずの球が意外に打ち返されたりする可能性は否定できます。

 
腕はしっかり振れていて悪くないのですが、ボールの出どころがそれほど隠れていないので、打者はそこまで吊られないように思います。しかし、ボールには適度に体重を乗せてからリリースできている感じで、打者の手元までのボールの強さ・勢いには好いものがあります。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に悪過ぎる部分はないものの「体重移動」以外にも良くなる余地が残されているように思います。制球を司る動作や故障のリスクに対しては悪くないフォームなので、あとはどうやって
武器になる球を見出して行けるかが鍵になってきそうです。


(最後に)

 球速以上に、打者の手元まで強い球が投げられています。また、その球を内角の厳しいところに投げ込めたりと、実戦的な部分も悪くありません。打者の空振りを誘うほどの変化球はないものの、真っ直ぐと見極めの難しい、スライダーやシンカー系の球は実戦的で効果的。短いイニングであれば、面白い素材ではないかと思います。

 ただし、ハイレベルな阪神投手陣の中に、一年目から割って入るのは容易ではありません。やはり、1~2年は、ファームで細部の技量を上げるのに時間が必要ではないのでしょうか。しかし、順調にそういったことがクリアできれば、支配下登録~一軍での活躍も、中継ぎあたりならば期待できるのではないかと観ています。個人的には育成指名の選手ですが、
 (支配下級) の評価をしてみたい選手でした。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2024年 ウエスタン・リーグ公式戦)