24sp-1
江村 伊吹(25歳・バイタルネット)投手 177/80 左/左 (北越-大東文化大出身) | |
12月に行われていた 台湾ウインターリーグでも、NPBの若手選手たち相手に快投を演じていた 江村 伊吹 。社会人3年目ながら、ドラフトで指名されることなく終わった。しかし、育成指名ができない社会人チーム所属の選手。この選手が、育成枠指名も可能な独立リーガーだったら、ドラフトで指名されていたのではないかと思えてならなかった。 (投球内容) 左のスリークォーターから繰り出すサウスポーで、腕が遅れて出てくる感じで打ち難い。23年度の公式戦の試合では、46回1/3 41安 20四死 47三 防 1.74 といった内容だった。 ストレート 140キロ台後半~150キロ台前半 ☆☆☆☆ 4.0 腕が少し下がったところから出てくるので、高めの速球は吹き上がるような勢いがある。フォームだけでなく球速も150キロ前後出せる能力があり、荒れ球で的が絞り難い。被安打率は、88.5% と、思ったほど低くはないのと、四死球率が 43.2% と、多少アバウトなのは気になる材料か。 変化球 カット・スライダー・ツーシームなど ☆☆☆ 3.0 左スリークォーターらしく、左打者から大きく逃げながら沈むスライダーは有効。右打者には、小さく逃げてゆく、ツーシーム系の球を混ぜてくる。こちらは、空振りを誘うというよりは、引っ掛けさせる役割か。三振は、47個と投球回数を上回っている。また、真っ直ぐと見分けの難しいカットボールを武器にしている。 その他 クィックは、1.05~1.15秒 ぐらいとまずまず。ただ、見た試合では牽制が確認できなかったのと、少しベースカバーに遅れる場面も見られた。そのへんは、もう少しどうなのかチェックしたいポイント。 (投球のまとめ) 初見だと、なかなか対応が難しそうなボールが遅れて出てくるような感じのフォーム。まして150キロ前後の球速を誇り、荒れ球で的も絞り難いのではないのだろうか。少々細かいコントロールがない粗っぽさは残るものの、そこまで荒れ荒れではない。左のリリーフ候補としては、面白いタイプではないのだろうか。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から考えてみた。ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。それほど軸足の膝には力みは感じられず、全体のバランスとしても平均的だろうか。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーラインに残りがち。したって体を捻り出すスペースは確保し難く、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種はあまり向かない。 「着地」までの地面の捉えも平均的、体を捻り出す時間も並ぐらい。こうなると曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。そのため芯をズラすことはできるが、変化球での空振りは奪い難い。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は内に留められている。そのため軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすい。ただし、足の甲での地面の捉えが浅いので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」がいいので、指先のちから加減で、ボールが制御できている。 <故障リスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻の落としは甘いが、カーブやフォークといった球種はほとんど投げないので、窮屈にはなり難いのではないのだろうか? 腕の送り出しにも無理は感じられず、肩への負担は少なそう。そこまで力投派でもないので、疲労を溜めやすいということは無さそうだ。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの地面の捉えに粘りは感じられないものの、ボールの出処は隠せている。「球持ちが」が好いのも相まって、ボールが見えてから中々出てこない感覚に陥るのかもしれない。 腕は投げ終わったあと体に絡んできており、もう少しストライクからボールゾーンに切れ込むがあれば、空振りも多く奪えそう。ボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているわけではないので、そこまで打者の手元までグッとくる感じではない。それでもボールの出処が見難いことで、打者はタイミングがとり難い。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「開き」に優れている。制球を司る動作では、足の甲での地面の捉えが浮いてしまっているものの、「球持ち」の良さで補えている。故障のリスクはさほど高くは感じられないが、将来的に武器になるような変化球を身につけられるかは微妙ではないのだろうか。 (最後に) ボールの出処が見難く、「球持ち」もよくてタイミングが図り難い。それでいて球速もあり、短いイニングだと打者が対応するのは難しいのではないのだろうか。そういった意味では、プロでもリリーフ候補としては面白いように思える。昨年の成績をみると、左打者には.214厘、右打者相手には.318厘と、右打者を苦手にしている。その一方で、左打者に強い左投手ということで、左腕としての有難味があるタイプだと言えそうだ。今季26歳と年齢は行っているが、アピール次第では面白い存在になりうるのではないのだろうか。 (2023年冬 台湾ウィンターリーグ) |