24ky-1





モイセエフ・ニキータ(豊川3年)中堅 181/85 左/左 





 「吉岡に翻弄されていたけれど」





 注目されたセンバツ大会では、阿南光の好投手・吉岡 暖 の縦の変化球や緩いカーブに翻弄される形となった モイセエフ・ニキータ 。しかし、第四打席には、甘く高めに浮いた球を見事ライトポール際に運び一矢を報いることに成功した。


守備面:
☆☆★ 2.5

 打球への反応や落下点までの入りは、可も不可もなしといった感じ。しかし、転がって来るボールへの対応などには、危なっかしく見える部分も。地肩自体は 中の上~上の下 ぐらいはありそうだが、けして上手い外野手とは現時点では言えないように思える。

走塁面:
☆☆★ 2.5

 2年秋の愛知大会では、6試合で4盗塁を記録するなど、走塁への意欲が低い選手ではない。昨秋計測した時には、左打席から 4.3秒前後を記録していた。このタイムは、けしてドラフト候補としては速くはないが、もう少し速いラップを刻めそうには見える。

 現状、肩や走力自体は低くくはなさそうだが、守備力・走塁技術は高いとは言えないだろう。そういったものに意識を傾けたときに、どの程度潜在能力を秘めているのだろうか?


(打撃内容)

 秋の東海大会では、打率.625厘。神宮大会では、5打数3安打を記録し、それぞれの大会で本塁打を放っていた。秋みた印象では、体の力は強いものの、けしてスラッガーというよりもポイントゲッタータイプに見えて、むしろ脆さは感じられなかった。

<構え> 
☆☆☆ 3.0

 前の足を軽く引いて、グリップを高い位置に添えている。腰はほとんど屈めず、全体のバランスとしてはあまりどっしり感はない。それでも両眼で前を見据えるということに関しては、けして悪くはなかった。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下がり始めるとき動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視したアベレージヒッターに多くみられる始動のタイミングです。

<足の運び> 
☆☆☆☆ 4.0

 大きく足を引き上げて、ベース側に踏み込むインステップを採用。始動~着地までの「間」は充分取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応しやすい。ベース側に踏み込むように、外角への意識が強いように感じます。

 踏み込んだ前の足は、
インパクトの際にもブレずに止まっています。そのため、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつくことができます。それでいて阿南光戦では、高めの球を逃さずスタンドインさせていました。

<リストワーク> 
☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を早めに作れているので、速い球には立ち遅れないのではないのでしょうか。ボールを呼び込むときに
肩が内に入り込んでしまっているので、内角寄りのバットは出にくいのではないかと心配になります。

 バットのスイング軌道は、けしてインサイドアウトではありません。しかしながら、外角の球に対してはヘッドが下がっておらず、広い面でボールを捉えることができそうです。したがって、フェアゾーンにボールが飛びやすいのではないかと考えられます。

 インパクト後もスイングの弧は大きく、フォローも使ってボールに角度を付けて飛ばそうという感じがします。両親がロシア人ということもあり、上体の強さも日本人とは違うように思います。

<軸> 
☆☆☆ 3.0

 足の上げ下げが大きいのですが、目線の上下動は平均的。体の開きは我慢できていますし、軸足にも強さが感じられます。ただし、足元が窮屈なのか? 
軸足の安定感という意味ではもう一つ。そういった意味では、調子の波は激しいタイプかもしれません。秋は、もう少し軸を起点にスイングできていたように見えました。

(打撃のまとめ)

 昨秋から、大きくスイングをいじってきた感じはしません。グリップが内に入り込む欠点などは、まだ改善はされてはいませんでした。吉岡投手の縦の変化や緩急に翻弄された形となった試合でしたが、この経験を夏に活かせるのか注目したいところです。


(最後に)

 守備練習を終えて戻って来るときでも、
全力でベンチまで戻ってきます。そういった野球への姿勢は、買いたいところ。センバツでは脆さも見せましたが、秋みた感じではそこまで荒れ荒れの素材型といった感じでもなかったです。また体の強さからスタンドインさせますが、本質的には中距離・ポイントゲッタータイプなのかなといった気がしています。その辺夏に向けて、何か変化が見られるのか気になるところです。現状は、中位指名 ぐらいに位置づけておくことが妥当な印象を受けました。夏までの、さらなる成長を期待して上位指名を実現して欲しい選手でした。


蔵の評価:
☆☆(中位指名級)


(2024年 センバツ大会)


 








モイセエフ・ニキータ(豊川2年)中堅 180/82 左/左 
 




 「思ったほど荒れ荒れの素材じゃなかった」





 漠然とだが、もっと荒々しい豪快な選手かと思ってきた モイセエフ・ニキータ 。実際見てみると、センターからレフト方向に打ち返すことも多く、肉体のポテンシャルで圧倒する、そういったタイプの選手ではなかったのである。


(守備・走塁面)

 一塁までの塁間は、左打席から 4.3秒 ぐらいと、タイム的にけして速くはない。全く動けない選手ではないが、足を売りにするほどかと言われると、そういった感じはしてこない。もう少し他の試合での走塁なども見てみたのだが、本気で走り抜けた時に、どの程度のタイムがでるのか? 最終学年では見極めてみたいポイントだ。

 中堅手としても、落下点までの追い方、打球への入りなどを見ていると、平均的な守備力はあるのかなといった感じ。センターからの返球も、地面スレスレで伸びて来るといったことはないものの、長く遠くへは投げられ、中の上~上の下 ぐらいの地肩はありそうだ。プロで鍛えれば、センターあたりを担える素材なのか? もう少し他の試合も見て見極めて行きたい。

 神宮大会のノックなどを見ていても、正直あまり良くわからなかった。もう少し、走力でも守備でも、ギリギリの打球で能力を出し切っている場面をみてみたい。そのへんは、選抜大会以後に楽しみにとっておこう。






(打撃内容)

 神宮大会の星稜戦では、強引に引っ張っての本塁打を魅せた。しかし、他の試合の模様などを見ていると、流して打ち返す場面も多く、
広角に打ち返す中距離ヒッター といった印象を受ける。どの試合でも、安定して高い打率を残しているように、そういった対応力の高さと精神面の安定感を評価すべき選手なのかもしれない。

<構え> 
☆☆☆★ 3.5

 前の足を軽く引いて、グリップを高めに添えます。腰は据わらず、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしては並みぐらい。ただし、アゴをグッと引いて、
打席での集中力の高さを感じます。

<仕掛け> 早め

 投手の重心が下る時に動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視したアベレージヒッターに多くみられる仕掛けです。この選手は、天性のスラッガーとか長距離系の打者ではないのだなというは観ていて感じました。

<足の運び> 
☆☆☆★ 3.5

 足を大きく引き上げて、ベース側に
強烈に踏み込んで来るインステップを採用。始動~着地までの「間」が取れていて、速球でも変化球でも幅広く対応できます。強烈なインステップをして来ることからも、外角への意識が強そうです。

 また、
踏み込んだ足のつま先が閉じられブレません。踏み込んだ前の足を壁にしながら、ボールをさばくことができます。それでいて動かないので、逃げてゆく球や低めの球にも食らいつける打ち方です。

<リストワーク> 
☆☆☆ 3.0

 打撃の準備である「トップ」の形をつくるのは自然体で、力みなくボールを呼び込めているところは良いところ。ただし「トップ」を作る時に、
後ろの肩が奥に入り込み過ぎているので、その点は気になります。

 また投手側に大きくヘッドを向けてバットを寝せて振り出してくるので、バットの出がどうなのかな? といった感じはします。それでも神宮大会では、インハイよりの球を上手く引っ張り込んでスタンドインさせていたように、甘めのインコース・あるいは高めの球にもしっかり振り抜ける技術があるのには驚きました。
スイングの弧も大きめですし、バットの先端であるヘッドも下がらないので、広い面でボールを捉えられます。そのため打球に角度を付けてといった感じではないのですが、フェアゾーンに飛びやすいのではないのでしょうか。

<軸> 
☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが大きい割には、目線の上下動は激しくはありません。体の開きはしっかり我慢できていますし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて形が崩れていません。それほど軸足の内モモの筋肉はまだ強さは感じられませんが、それでもあれだけの打球を飛ばせるというのは、資質が高いのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 癖のある構えで、内角などに大きな穴がありそうなタイプに見えます。しかし実際は、そんなことなくインハイの球をさばきますし、全体的に高めの球は好きそうな印象を受けました。

 
長打は引っ張って巻き込めた時が中心なのかなといった印象ですが、レフト方向への流し打ちも上手く隙がありません。この時期の高校生としては、高いレベルにあるように感じれました。


(最後に)

 ホームランバッターとして期待するのは違う気がしますが、対応力の高い中距離・ポイントゲッター。それもある程度、守備・走力もある程度兼ね備えているという
総合力でみるべき選手であるように思います。そのへんは、本人も 柳田悠岐(ソフトバンク)を目標としているところからも感じます。

 どの大会でも高いアベレージや結果を残していることからも、想像以上に技術や精神面も充実しているように感じました。守備練習が終わって戻ってくるときも、全力で走ってくるあたりに、この選手の
意識の高さは、かなり高い選手だなと思わせてくれるものがありました。むしろそういった部分の方が、私には肉体的な資質の部分よりも印象に残った選手です。


(2023年秋 神宮大会)