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熊谷 太雅(東陵3年) 投手 185/72 左/左 | |
まだまだ線は細いが、けして粗っぽい素材ではない 熊谷 太雅 。投手としてのセンスの良さがあり、制球にも大きな破綻はない投手だった。 (投球内容) この夏の宮城大会では、3試合で 12回 11安 3四死 10三 防 0.75 といった内容で、同点の場面から登板し敗れた、聖和学園戦での1失点のみとなっている。 ストレート 常時135キロ前後~140キロぐらい ☆☆★ 2.5 球速的には常時135キロ前後と、ドラフト指名される選手としては球威・球速ともに少し物足りない。それでも適度に勢いが感じさせ、角度のある球筋も感じさせ、そこまで見劣る感じはしてこない。特に両サイドに投げ分けられるコントロールがあり、少しボールが高めに集まりやすいのと、コースを突いた球でも簡単に打ち返されてしまう合わされやすさが気になるところだろうか。 変化球 スライダー・ツーシーム? ☆☆★ 2.5 横滑りするスライダーと、何やらツーシームのようなシュート系の球を投げ込んでいるように見えました。どちらも球速のある小さな変化なので、やや単調になりやすい恐れはあります。今後は、もう少し緩急や縦の変化なども覚えたいところです。 その他 クィックは、0.9秒~1.0秒 ぐらいと高速で投げ込むことができ、牽制自体も適度に鋭いものを投げ込んできます。フィールディングの動きもまずまずで、けして投げる以外が上手い選手です。走者を背負っても落ち着いており、走者にもしっかり目配せをしながら投げるなど、冷静なマウンドさばきが光りました。 (投球のまとめ) 肉体的な未完成さはありますが、投球の基礎はしっかりしていますし、コントロールも悪くありません。素直に肉付けしながら、投球の引き出しを増やせて行ければ、それなりの投手になって行ける可能性は感じます。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、足を勢い良く高く引き上げてきます。そういった意味では、エネルギー捻出が最初から高いフォームであり、リリーフタイプなのかもしれません。軸足一本で立った時に、膝から上がピンと伸びがちで力みは感じられるのですが、適度にバランスを保って立てています。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 少し前に倒れ込み気味で、特に引き上げた足をピンと伸ばすことなく重心を沈めてきます。そのため、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そうなると、身体を捻り出して投げるカーブやフォークといった球種には適していません。 また、「着地」までの地面の捉えも平均的で、身体を捻り出す時間も並ぐらい。こうなると、曲がりの大きな変化よりも球速のある小さな変化でピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めています。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールは安定しやすいです。その一方で、まだ足の甲での地面の捉えが浅そうで、力を入れようとすると浮き上がろうとする力を抑えられず、ボールが高めに集まりがち。けして「球持ち」が悪いとか、指先の感覚は悪く無さそうなので、将来的に安定した制球力は身につくのではないかとみています。 <故障のリスク> ☆☆ 2.0 お尻が落とせないために、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種だと窮屈になりがち。しかし、現状は、そういった球は観られないので、そこまで悲観することは無さそうです。しかし、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩も下がりがちなことからも、肩への負担はそれなりに感じます。ある程度、全身を使って投げ込んでくるので、疲労もそれなりに溜まりやすいのではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りが平凡なので、打者としてはそれほどタイミングが合わせ難いフォームではないのでは? ボールの出どころは並ぐらいですが、角度のある球筋で打ち損じはある程度誘えるかもしれません。 腕はしっかり振れていて勢いは感じるのですが、ボールの出どころが見やすければ、その効果は限定的に。ボールにはある程度体重を乗せてからリリースできているように見えるのですが、投げ終わったあと三塁側に流れるなど、作り出したエネルギーをロスしてしまっています。そのへんが、打者の手元までの球威などに影響している可能性があります。股関節の柔軟性を養いつつ下半身を強化して、もう少しステップを幅を確保できるようになると変わってくるかもしれません。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、まだ「着地」と「体重移動」に課題を感じます。足の甲の捉えの浅さからくる球筋の高さに、故障のリスクが高いフォームなのは気になる材料。武器になる球の修得にも苦労しそうなので、フォームの観点からするとリスキーな素材ではあります。 (最後に) 投球の土台である制球力・投球センスなどは良く、素直に肉付けしてパワーアップを図って行ければ伸びてきそうな素材ではあります。しかし、その成長のベースである投球フォームに、不安要素が少なくないのがネックです。そういった意味では、将来性は感じられるものの、育成枠 とした判断は妥当だったと思います。ただし、育成13位にしては、スジの好い正統派左腕だけに、ソフトバンクの環境がフィットすれば好い左腕になるのではないかという期待は抱かせてくれる選手でした。 (2024年夏 宮城大会) |