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 藤田 琉生(東海大相模3年) 投手 198/96 左/左





 「かつてない素材」





 198センチの上背でありながら、これだけの球速・制球力・変化球を投げられる、そういった左腕を私は今まで観たことがない。そういった意味では、藤田 琉生 は日本アマチュア史上にとって歴史的な素材だったように思える。


(投球内容)

 3年春までは、球速も140キロ前後ぐらいでピリッしない感じだった。そのためプロ志望でも、本会議で指名があるかないかぐらいの素材だと観ていた。しかし、6月に
二段モーションを取り入れ、大幅に球速アップし一変することに。夏の甲子園では、3試合に登板して 21回1/3 11安 8四死 18三 防 0.84 と、その実力が全国レベルであることを証明した。

ストレート 145キロ前後~MAX150キロ 
☆☆☆★ 3.5

 まだ、驚くほどの球威や球速はない。それでも大まかに両サイドに散らしながら、淡々と投げ込んでくる。21回1/3イニングで11安打と、被安打率は 51.6% と低く、けし
て合わされやすいわけではない。この巨体から投げ下ろす威圧感と、ボールの角度が打者にとっては厄介な存在だと言えよう。

 その一方で、四死球率は 37.5% と、繊細な制球力があるわけではない。現在は、ストライクゾーンの枠の中には安定して集められる、そういった制球力に留まっている。

変化球 ナックルカーブ・スライダー・チェンジアップ 
☆☆☆★ 3.5

 独特の
ナックルカーブが、投球の大きなアクセントになっている。またスライダーやチェンジアップも織り交ぜてきて、絶対的ではないものの、上手く投球のコンビネーションにして使えている。21回1/3イニングで奪三振は18個と、1イニングあたり 0.84個と、先発投手としてはまずまず。プロを意識するのであれば、もうワンランク・スライダーやチェンジアップのキレや精度を高めたい。

その他

 クィックは、1.15~1.20秒 ぐらいと平均的。それほど鋭い牽制は入れて来ないが、大型でもフィールディングの動きは悪くない。時々
投げるタイミングを変えてきたりと、いろいろ細かいこともできる投球術も持っている。


(投球のまとめ)

 
まだ圧倒的なボールの威力や、絶対的な変化球があるわけではない。破格の体格ながら、適度に威力のある球を投げ込み、それなりの制球力と変化球があるといった総合力で評価されるタイプ。ただしこのスペックでも、将来的に150キロ台中盤ぐらいで圧倒する、そういったスケールアップしてゆく姿はあまり見えてこない。むしろ、フォームや変化球や制球力など、より実戦力を高めることで、成長を遂げてゆくタイプではないかとみている。





(投球フォーム)

 
足を一度地面に降ろすようなところから下げ、そこからまた引き上げる、大きな二段モーションを使って投げ込んできます。セットポジションから足を引き上げる勢いは並ですが、比較的高いところまで上げてきます。軸足一本で立った時に、膝から上がピンと伸びがちで力みは感じられるものの、全体的にはバランス良く立てています。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に伸ばしがちなので、お尻の三塁側(左投手の場合は)の落としには甘さが残ります。そのため、カーブやフォークといった球は投げられないことはありませんが、その変化は鈍くなりがち。

 「着地」までの地面の捉えもまだあっさりとしていて、身体を捻り出す時間としては物足りません。そのため、曲がりの大きな変化よりも、球速のある小さな変化球を中心に、ピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 
グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいです。その一方で、まだ足の甲での地面の捉えが浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいこと。また「球持ち」も平均的で、それほど指先の感覚が繊細といった感じはしません。あくまでも大まかに、コースを投げ分けたりストライクゾーンに入れて来る感じです。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さは残すものの、それほど窮屈になるといったほどではありません。ただし、ナックルカーブといった球が、どの程度窮屈になるのかはよくわからないので、その点ではわからない部分も少なくありません。この球の頻度が結構多いので、肘へのケアには注意したいところではあります。

 また、ボールを持っている肩は上がり、グラブを持っている肩は下がりがちですが、これも極端ではないので、そこまでナーバスになるほどかは微妙です。そういった意味では、肩への負担も大きいとは言えません。それほどまだ身体を活かしきってというフォームでもないので、疲労を溜めやすいことも無さそうです。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは並でタイミングが測り難いわけではないのですが、天性の角度のある球筋で芯で捉え難かったり、ボールの出どころはある程度隠せています。そのため、けして打ちやすいフォームではなく、そのへんは被安打率の低さからも伺えます。

 振り下ろした
腕は身体に絡むなどの粘りもあるので、もっと腕の振りがシャープになってくれば、勢いで空振りを誘えるようになるかも。ただし、ボールにしっかり体重を乗せてからリリースできていないので、打者の手元までの勢いは発展途上といった感じはします。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「着地」や「体重移動」に課題を残します。制球を司る動作や故障のリスクは平均的で、将来的に武器になるほどの球を見出だせるかは微妙です。投球同様にフォームに関しても、発展途上であり、これからの創意工夫と努力次第といった感じがします。


(最後に)

 まだ恵まれた身体を、最低限に活かすことができているといった感じで、まだまだよくなれる資質は残されているとみています。またそれができるだけの、
努力と現状を変えてゆこうという意志は感じられる選手なので、そこに期待してさらなる進化を期待してやみません。現時点では、そこまで圧倒的ではないことを考えると、あくまでも期待込みでの評価といった感じになります。この恵まれた器に、何処まで水を注げるのか、少し長い目で見守りたいところです。


蔵の評価:
☆☆☆(上位指名級)


(2024年夏 甲子園)