坂井　遼　（関東一３年）投手　１７８／７８　右／右

「指名圏内に入ってきた」

　春から観てきた投手だが、少しずつ内容を良化させてきた　坂井　遼　。この夏のパフォーマンスは、高校からのプロ入りを意識できるところまで来ているのではないのだろうか。

（投球内容）

　この夏の甲子園では、５試合　１８回2/3　１２安　４四死　１６三　防　０．００　。チームの準優勝に大きく貢献し、高校日本代表にも選抜され、リリーフを中心に３試合（自責点１）ほど世界の舞台を経験した。

ストレート　１４５キロ前後～MAX１５１キロ　☆☆☆★　3.5

　春から１４０キロ台をコンスタントに越えて来るスピード能力はあったものの、中背で少し合わされやすいところもあり、それほどインパクトは感じなかった。それでも、両サイドに散らすことができ、制球を乱す不安というものはなかった。夏にはさらに勢いを増すようになり、力を入れて投げれば安定して１４０キロ台後半を記録。特に、準々決勝の東海大相模戦では、自己最速となる１５１キロを記録するなど、凄みが出てきたところは評価できるのではないのだろうか。

変化球　スライダー・チェンジアップ・カーブ　☆☆☆　3.0

　スライダーとチェンジアップを多く織り交ぜてきて、たまに緩いカーブを使ってきます。特に、球速があって小さく沈むチェンジアップは効果的。空振りを誘うような変化球はないが、カウントを整えたり、微妙にタイミングを外すといった部分には長けている。

その他

　クィックは、１．０秒前後と素早い。牽制やフィールディングは確認できなかったが、動作には動きの良さが感じさせる選手なので、けして下手ではないように思える。走者へはしっかり目配せしながら投げられるし、マウンドさばきにセンスを感じる。

　投げるタイミングが一定な部分もあり、単調にならないように注意したい。そういった細かいことをものにして行けそうな選手だけに、その点はあまり気にならなかった。

（投球のまとめ）

　春までは、高校からプロといった感じは正直しませんでした。しかし、この夏の充実ぶりや成長力。投手としてのセンスや気持ちの強さなども加味すると、指名もアリなのではないかと思うようになってきました。このことは、各球団も同様に感じられた夏だったのではないのでしょうか。

（投球フォーム）

　セットポジションから、勢い良く高い位置まで足を引き上げてきます。フォーム最初から高いエネルギー捻出が観られるように、本質的にはリリーフタイプなのかもしれません。軸足一本で立ったときにも膝がピンと伸び切ることなく、適度に余裕を持ってバランスを保って立てていました。

＜広がる可能性＞　☆☆☆　3.0

　引き上げた足を地面に向けて下ろすので、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっています。したがって体をひねり出すスペースは確保できず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球には適しません。

　「着地」までの粘りは、前にステップさせることで、適度に体をひねり出す時間を確保。そういった意味では、カーブやフォークなどの捻り出して投げるような球で無ければ、キレの好い変化球の修得も期待できそうです。ただし、どちらかというと、球速のある小さな変化を中心に、ピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。

＜ボールの支配＞　☆☆☆☆　4.0

　グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすいかと。足の甲でもベタっと地面を捉えており、浮き上がろうとする力を抑えられている。力を入れて投げても、ボールは上吊り難いのではないのだろうか。　「球持ち」自体もまずまずで、指先の感覚も、けして悪く無さそうだ。

＜故障のリスク＞　☆☆☆　3.0

　お尻を落とせていないものの、現状はカーブの頻度も少なくフォーク系の球も見当たらない。そういった意味では、窮屈になる機会も少なそうなので、悲観する必要は無さそうだ。

　腕の送り出しを観ていても、肩への負担も少なそう。力投派の側面はあるので、多少体の何処かに出る可能性はあるが、力をある程度抜いても投げられるので、そこまで気にしなくても好いのではないのだろうか。

＜実戦的な術＞　☆☆☆　3.0

　「着地」までの粘りはそれなりだが、まだボールの出どころは並ぐらい。そういった意味では、中背で球筋にさほど角度もなく、球速ほど打者は苦にならない恐れはある。

　腕は強く振れており、もう少しボールを隠せるようになると打者も吊られそう。膝小僧が地面に着いてしまうほど重心が沈んでしまっているので、前へグッと体重が乗ってきてないので、若干沈み込みを緩和した方がいいのかもしれない。

（フォームのまとめ）

　フォームの４大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点はないものの、もう少し粘りというものを意識した方が好さそう。制球を司る動作に優れ、故障のリスクもそこまで高くない。今後は、いかに武器になる変化球を見出して行けるかではないのだろうか。

（最後に）

　ちょっと嫌らしさが足りないところは気になるものの、スピード能力・投球としてのセンス・資質を伸ばして行ける才能・ハートの強さなどには見るべきものがあります。夏の充実ぶりから観ても、下位指名～育成まで含めれば、何かしらの形で指名されるのではないかとみています。

蔵の評価：☆　（下位指名級）

（２０２４年夏　甲子園）