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井上 剣也(鹿児島実3年)投手 175/77 右/右 | |
春季大会を見た時点では、全国でも最も勢いのある真っ直ぐを投げていた 井上 剣也 。夏は、力まずに制球を重視ピッチングになっていたのではないのだろうか。 (投球内容) 3年夏の大会では、2試合 15回 15安 6四死 14三 防 3.60 と内容となっている。 ストレート 140キロ~149キロ ☆☆☆★ 3.5 もっと真っ直ぐでガンガン押してくるパワーピッチのイメージが強かったのだが、夏は力を落として140キロ台前半の球を投げていた。要所では、元来の140キロ台後半の球も随所には魅せていたが。上背の割には、角度のある球を投げ込んでくる。また、両サイドにボールを散らせて来るが、制球は結構バラついてアバウト。それ以上にボールが見やすいのか? ボールの威力の割に合わされることは多い。 変化球 スライダー・フォーク・カーブ ☆☆☆★ 3.5 右打者外角低めに切れ込むスライダーにはキレがあり、さらに縦の変化も多く使ってくる。けして、真っ直ぐをゴリ押しして来るだけの選手ではない。まして、変化球のキレ・落差にも空振りを誘えるものを持っていた。 その他 牽制は鋭く、クイックも 1.05~1.10秒 ぐらいとまずまず。フィールディングの反応や動きも良かったが、樟南戦では三塁に悪送球してしまい傷口を広げてしまった。夏はリラックスを心がけていたのか? マウンドをパッと外したり、落ち着いて打者と対峙するなど、そういった新たな一面があることを示してくれた。 (投球のまとめ) 春までは、常に全力でガンガン押してくるパワーピッチといった投球に見えた。しかし、最後の夏は、落ち着いて力任せでゆくのはやめようといった意識が感じられた。まだ力と技のバランスが取れていなかったが、その辺も経験を積んでゆけば解決して行けるだろう。現状は、馬力を活かしたリリーフタイプとして面白いと評価する球団が出てくるかもしれない。 (投球フォーム) セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり。軸足一本で立った時には、膝が伸び切ることなく余裕を持ってバランス良く立てていた。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足は地面に向けて伸ばしており、お尻の一塁側への落としは甘め。したがって、体を捻り出すスペースは充分確保できているとはいえない。そのため、ブレーキの効いたカーブや落差のあるフォークなどの修得は厳しそう。 「着地」までの地面の捉えも平均的で、体を捻り出す時間も充分とは言えない。現状は、スライダーやチェンジアップなどに、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができている。ただし、足の甲での地面の捉えは出来ているのだが、その時間が短いので浮き上がろうとする力は充分には抑えられていない。「球持ち」も並ぐらいなので、まだボールの押し込みなども含めて、低めへの制球が課題となる。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻の落としに甘さを残し、カーブやフォークも結構使ってくる。そうなると窮屈になりやすく、肘などへの負担は低いとは言えないだろう。腕の送り出しを見ても極端ではないものの、ボールを持っている肩は上がりグラブを持っている肩は下がりがちで、負担を感じなくはない。全体的に力投派でもあるので、疲労も溜めやすいのではないのだろうか。 <実戦的な術> ☆☆★ 2.5 「着地」までの粘りが並で、ボールの出どころもやや見やすい。そのため打者としては、ボールの勢いほどは苦にならないのかもしれない。 腕はしっかり振れ勢いはあるのだが、ボールが見やすいので吊られ難いのかも。ただし、ボールには適度に体重を乗せて「体重移動」できているので、最後は蹴り上げた足は高く跳ね上がってくる。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」以外にはもう少し粘りが欲しい。制球を司る動作は想像以上に良かった一方で、故障のリスクは高そう。将来的に、いかにして武器になる球を見出してゆけるかではないのだろうか。 (最後に) 体は大きくはないが、エネルギー効率の好いフォームで、馬力のある投球を実現している。スライダーのキレは悪くなく、単なる速球派ではない。それほどスケールで魅了するタイプではなく、伸び代といった意味では微妙。それだけに、指名となると下位~育成あたりになってしまうかもしれない。ただし、爆発力のある素材の割に、変化球も悪くない。将来的には、短いイニングであれば一軍戦力として重宝される存在になれるかもしれない。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2024年夏 鹿児島大会) |