24kp-31
山口 廉王(仙台育英3年)投手 193/95 右/右 | |
佐々木朗希(ロッテ)を彷彿とさせるような、足を高く引き上げたフォームから投げ込む 山口 廉王 。敗れた宮城大会決勝戦の、聖和学園戦でも150キロ近いボールを連発していた。しかし、実戦力・肉体の完成度といった部分では、まだ志半ばといった未完成さを露呈した。 (投球内容) この夏の宮城大会では、3試合で 12回 15安 4四死 7三 防 2.25 と内容に。特に満を持したはずの聖和学園戦で、2回2/3イニングで4失点されたのが痛かった。 ストレート 常時130キロ台後半~MAX151キロ ☆☆☆★ 3.5 聖和学園では、初回140キロ台後半の球を投げていたが失点。むしろ2回からは、130キロ台で落ち着いて投げていた球の方が、球筋が安定したように思える。まだそういった、力の入れ加減・抜き加減みたいな部分はこれからといった感じ。それでも、四死球で自滅するような危うさは見られない。むしろ、ゾーン内での制球力がこれから課題となりそうだ。 変化球 スライダー・カーブ・フォーク ☆☆☆ 3.0 投球の多くは、スライダーとのコンビネーションでカウントを整えてくる。他にもさらに緩いカーブやフォークなどもあるようだが、まだそこまで頼れる球種ではない。そのため、ここぞの時に頼れる球が真っ直ぐしかなく、その球をレベルの高い相手だと狙い打たれるといった感じに。 その他 牽制はそれほど鋭いものは見られなかったが、クィックは1.0秒を切るような高速クィックで投げ込んでくる。そういった意味では、大きな身体でも、持て余すことなく動かせる身体能力はありそう。走者への目配せや意識も、けして低くはないように見えた。「間」を意識したりとか、細かい出し入れなどの投球術はないものの、将来的にそういったものを身につけて行ける素養は持っているのではないのだろうか。 (投球のまとめ) 肉体のスペックにも恵まれ、すでにある程度の球速の球も投げられている。ただし、まだ高いレベルの相手になると、真っ直ぐで押し切るほど圧倒的ではない上に、他に頼れるといったほどの変化球もない。今後は、この長身を活かした縦の変化などに磨きがかかってくると、打者も真っ直ぐ一本とはゆかなくなるだろう。そういった球に磨きをかけつつ、真っ直ぐもさらに良くなれば、数年後にはかなり期待できそうな素材であるのは間違いない。 (投球フォーム) セットポジションから、勢いよく反動を付けて足を非常に高い位置まで引き上げてくる。フォーム序盤から高いエネルギー捻出を期待できる一方で、上下動が激しいことでのの制球のブレや体への負担が大きいそうなフォームではある。また軸足一本で立った時には、さほど膝には余裕が感じられない。また大きく足を引き上げ過ぎていて Yの字 で立つという形もいびつになっており、これがどう影響しているのか注視する必要はありそうだ。 <広がる可能性> ☆☆ 2.0 引き上げた足を地面に向けて伸ばすため、お尻はバッテリーライン上に残りがち。したがって体を捻り出すスペースは充分には確保できず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦の変化にはあまり適さない形ではある。 また「着地」までの地面の捉えがあっさりしており、体を捻り出す時間も不十分。そういった意味では、曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで体の近くにあるので、外に逃げようとする力は抑えられている。それ故軸はブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすい。しかし、足の甲が地面から浮いてしまっているので、浮き上がろうとする力を抑えられていない。そのため、ボールは高めに集まりやすい。それでも「球持ち」が結構良いので、そこでボールを押し込むことでボールが上吊るのを抑えることができている。 <故障のリスク> ☆☆★ 2.5 お尻の落としが不十分で窮屈になりやすいので、今後カーブやフォークなどの使う頻度が増えてきた時には窮屈になって肘への負担などが心配にはなる。腕の送り出しなどを見ていると、肩などへの負担はそこまで大きくは無さそう。ただし、かなりの力投派なので、思わぬところに負担がかかって、故障につながるかもしれないという恐れは感じる。 <実戦的な術> ☆☆★ 2.5 「着地」までの粘りが淡白で、打者としてはタイミングが図りやすいのでは? またボールの出どころも早くなりがちなので、打者や球速ほどは苦にならないように思われる。それでも角度のある球筋ではあると思うので、イメージよりは芯で捉えられないことは期待できそう。 腕は強く振れているので、打者としては吊られそうな勢いはある。しかしながら、ボールの出どころが早いことで、その効果は薄そう。投げ終わったあと一塁側に流れるなど、まだ作り出したエネルギーをリリースまで上手く伝えられずロスしてしまっている。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」以外には課題を抱えている。制球を司る動作はそこまで悪くないものの、体への負担などから故障のリスクが高そうなのと、将来的に武器になるような変化球を習得できるかが鍵になるのではないのだろうか。 (最後に) 肉体的にも技術的にも成長途上なので、ものになるのには同世代の候補よりも時間がかかりそうな印象は受ける。その点をどう考えるかで評価は別れそうではあるが、プロ志望届を提出すれば本会議中では指名されるのではないかと評価している。しかしながら、プロ志望届を提出しないのではないかという話もあり、それはそれで彼の才能を育む上で、プラスに運ぶ可能性もあり尊重したい。ハイスペックな素材だけに、次の指名解禁になる時には上位指名を狙える、そういった実戦力をぜひ身につけておいて頂きたいと願っている。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2024年夏 宮城大会) |