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 澁谷 純希(帯広農業3年)投手 181/88 左/左 





「能力は全国でも上位」





 2年春に肘を痛めたことで、公式戦の登板は僅か4試合に留まった 澁谷 純希 。3年夏の大会も、北北海道大会の地区予選で敗退。それでも、この夏みた左腕の中では、全国でも上位クラスの素材の持ち主だったと言えよう。


(投球内容)

 この夏は、
2試合に登板。18回 13安 10四死 34三 6失 という内容だった。ただし、夏の初戦では、22奪三振で完封勝利をあげている。

ストレート 135キロ~MAX143キロ 
☆☆☆ 3.0

 初戦を見た時は、常時130キロ台中盤~140キロぐらい見えました。しかし、体つきもガッシリしていて、
厚みのあるボールを投げていました。特に高めの球に勢いがあるので、打者は思わず吊られてしまう勢いがありました。敗れた帯広大谷戦では、さらに力強さを増していて、最速で143キロを記録。ドラフト候補としても、基準クラスのボールは投げられていましたし、将来的にもっと力で押せそうな投手になるのではないかという期待も抱けるものでした。

 それほど細かい制球力があるわけではなく、
高めに全体的には集まりがち。そういった制球力のアバウトさはありましたが、ボールの勢いがそれを上回っていた印象です。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ 
☆☆☆ 3.0

 主な変化球は、スライダー。この球とのコンビネーションで、しっかりカウントを整えられます。他にも緩いカーブやチェンジアップ系の球もあり、一通りの変化球は投げれていました。

その他

 クィックは、1.0秒前後のものと1.15秒前後のものを使い分けていた印象です。そういった
投げるタイミングを、意図的に使い分けられる術と精神的な余裕もありそうです。左腕らしく、牽制も適度に鋭いものを織り交ぜていました。

(投球のまとめ)

 確かに実績的には乏しいのですが、そうは言っても、けして荒れ荒れで力のある球を投げ込んでくるといった素材ではありません。適度な変化球も、冷静な投球術も使うことができ、土台はある程度整っています。そういった意味では、
高いレベルの野球の技術も吸収して行ける素養があるのではないかと感じました。初戦見た時は、育成ならありかなと思ったぐらいでしたが、2戦目の模様をセンターカメラからチェックした時には、本会議での指名も意識できる素材だと感じました。





(投球フォーム)

 セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。意外にリリーフタイプのように魅せて、ゆったりと投げる先発向きな選手なのかもしれません。軸足一本で立った時には、膝から上がピンと伸びがちでしたが、全体的にはバランスを保って立てていました。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足をピンと伸ばしきることなく夏は投げていたのですが、先日のサマーリーグではピン曲げ伸ばす動作も入れて、少しお尻の三塁側への落とし(左投手の場合)は、良くなってきたようにも思えます。それだけ体を捻り出すスペースが確保できるようになり、カーブやフォークといったひねり出して投げるのにも無理はなくなってきています。

 「着地」までの地面の捉えも早すぎることがないので、体を捻り出す時間も適度に確保。今後、曲がりの大きな変化球も習得も、期待できるようになるかもしれません。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで体の近くに抱えられているので、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールもつけやすいのでは?

 足の甲での地面の捉えもできているのですが、その時間がまだ短いように感じます。そのため充分には、まだ浮き上がろうとする力を抑えきれていないのかもしれません。また「球持ち」もそれなりのですが、もう少し押し込めるようになると、もっと低めへの球も増えて来るのかもしれません。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としも適度にできているので、カーブやフォークを投げても窮屈にはなり難いのでは? 実際まだ、そういった球種を投げる機会も少なそうなので、肘への負担などもあまり感じませんでした。

 腕の送り出しを見ていても、肩への負担も大きな感じはしません。少し力投派的には見えるので、疲労を溜めて、そこからフォームを崩したり、思わぬところに負担がかかってこないと好いのかなとは感じます。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも適度に作れていますし、
ボールの出どころも隠せています。そういった意味では、球速以上に打者としてはボールが突然来る感覚に陥るのではないのでしょうか。

 腕も強く振れているのように見えるのですが、まだ体に絡みついて来るような粘っこさはありません。しかし、ボールには適度に体重を乗せてからリリースできているので、打者の手元まで勢いは落ちません。体重移動が上手くできている証として、
地面を最後に力強く蹴り上げられています。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」でも大きな欠点は見当たりません。特に
「開き」と「体重移動」に優れたフォームです。足の甲の押し付けの短さや「球持ち」の粘り的な部分で、まだ繊細なコントロールまではありませんが、コントロールを司る動作も悪くありません。故障のリスクも、そこまで高そうには感じませんでした。そういった意味では、土台となるフォームに優れた投手だと言えるでしょう。


(最後に)

  試合を見たときのイメージは、下位指名ぐらいかなとは正直思いました。しかし、今回フォーム分析をする中で、想像以上に土台も好いのだと改めて関心。肘を痛めていたというマイナス要素は残るものの、個人的にはもうワンランク高い評価もして好いように思いました。プロの世界で、その才能がどのように花開くのか、今から楽しみな投手です。


蔵の評価:
☆☆(中位指名級)


(2024年夏 北北海道大会)