24kp-20
古川 遼(日本学園3年)投手 190/80 右/両 | |
春に観に行った時には、ほとんどのボールが130キロ前後~中盤までだった 古川 遼 。試合序盤で多くのスカウトが会場をあとにする中、一球団だけ複数人のスカウトで熱心に見守っていたのが、ソフトバンクだった。 (投球内容) まだ細身の体型で、筋力の弱さというのは立ち姿からもわかる感じだった。逆に、これを伸び代とみれば、この投手は、まだまだ良くなれると判断するスカウトもいるのだろう。 ストレート 130キロ~144キロ ☆☆★ 2.5 私も何の変哲もない投手かなと見ていたのだが、ランナーが得点圏に進むと力の入れ具合を変えて89マイル・143キロまで記録したのは印象的だった。そのへんのことを改めて確認したいと思い、夏の早稲田実業戦の模様を見てみた。やはり、要所では中々好い球を投げ込んでくる。この選手は、明らかに力の入れ加減を変えてピッチングをしてくるタイプ。まだまだ細かいコントロールはないが、大まかに両サイドに散らせて来られるコントロールもある。 変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆★ 2.5 横滑りスライダーでカウントを整えられ、むしろ真っ直ぐよりも信頼度は高いのかもしれない。さらに緩いカーブを春よりも積極的に使ってくる感じで、余裕があるとフォークを使ってくる。ただし、この球は精度・落差共に発展途上といった段階だった。 その他 クィックは1.0秒前後と高速で、フィールディングの動きも悪くはない。まだ「間」を使ってとか細かい出し入れができるほどではないにしろ、要所では力を入れたり、内角を突いてきたりと、そういったことはできていた。 (投球のまとめ) 春と比べて、目に見えて大きく変わった印象はなかった。恵まれた体格の投手だが、まだ身が入っていない印象で、体幹含めて筋力が弱そう。けして、ピッチングセンスが悪い投手ではないので、身体ができた時にどんな投球を魅せてくれるのか? そういったところに懸けた指名だったのではないのだろうか。 (成績から考える) この夏は、4試合に登板し、聖パウロ戦以外はリリーフでの登板だった。15回 14安 8四死 16三 防 3.00 といった内容で、サンプルは少ないが傾向を考えてみたい。 1,被安打は投球回数の80%以下 ✕ 15イニングで被安打は14本と、被安打率は 93.3% 。どの試合でも、イニングと同数程度のヒットを打たれている。中に入ってきた甘い球を打たれたというよりも、コースには投げていた球を捉えられている。これは、打者からはそれほど苦になってはいなかったことを表している。 2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕ 四死球率は、53.3% と高く、まだまだ思い通りにボールを制御できていない。下記にある春季大会のフォーム分析では、足の甲でのとらえが浅く、両サイドよりも高低の制御に苦労していたということだろうか? ただし、実際試合を見ていても、そこまで高めに集まるといった印象は受けなかったのだが ・・・ 。 3,三振は1イニングあたり0.9個以上 ◎ 奪三振は投球回数を上回っており、このファクターは合格点。絶対的な決め球があるわけではないが、要所になると力の入れ加減を変えてギアを上げることで三振を多く奪っていたと考えられる。 4,防御率は1点台以内 ✕ ランナーは出すものの、失点はしないというのが、この選手の持ち味であるような気がする。しかし、4回戦の聖パウロ戦、5回戦の早稲田実業戦で失点しているように、強豪校相手にはそれが通用しなかった印象を受けた。 (成績からわかること) サンプルが少ないので、この数字の精度は高くない。しかし、実際投球を見た印象と残している数字は似た感じだというのが率直な感想。まだまだ、総合力という意味では、物足りないのが現状なのだろう。 (最後に) あくまでも現時点の能力よりも、身体ができた時にどんな投球ができるかに懸けた指名であるのだろう。ただし、大型でも投球にメリハリをつけたり、要所では内角を厳しく突ける。あるいは、クィックやフィーディングで見せる動きからも、そういったセンスや運動能力は悪くない。そういった部分から、可能性を見出したのではないのだろうか。 育成を13名獲得した中でも、最初に指名していたことからも、ソフトバンク球団の熱の入れようが伝わってくる。ただし、個人的にはまだ「旬」ではないと判断して、☆ (支配下級)の評価にまでは至らなかった。 (2024年夏 西東京大会) |
古川 遼(日本学園3年)投手 190/80 右/両 | |
春季東京大会で、最速144キロ記録したと話題になっていて確認に行ったのが、この 古川 遼 。 190センチの恵まれた体格の大型右腕であったが、まだまだこれからといった感じの未完成な投手だった。 (投球内容) 手足の長いスラッとした投手体型が目をひきますが、大きな身体を活かしきれず、発展途上の投手だとパッと見て思いました。むしろ投手としての総合力では、対戦相手の 吉田 健汰(日体荏原)という投手の方が、球はビシッとミットに収まっていて上でした。 ストレート 130~MAX143キロ ☆☆★ 2.5 普段は130キロ前後~中盤ぐらいで、ドラフト候補のそれではありませんでした。しかし、走者を背負うと右打者の内角の厳しいゾーンに、135~140キロ強のボールを投げ込んでいたのに驚きました。まだ凄味みたいなものは感じられませんでしたが、そういった投球を意図的にできる点は買えます。ちなみに1球だけでしたが、マイガンで89マイル(143キロ)まで記録していました。 変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆★ 2.5 横滑りするスライダーで、カウントを整えてきます。主な変化球はスライダーですが、他にも緩いカーブやフォークなどもあるようです。現状はまだ、空振りを狙って奪えるほどの球はないので、そういった球を真っすぐ含めて身につけられるかが鍵ではないのでしょうか。 その他 大型ですが、牽制は適度に鋭いです。クィックも1.0秒前後と高速で、見た目のイメージとは裏腹に素早く投げ込みます。まだ細かい駆け引きができる投球術や「間」をとってという意識はないものの、要所で内角を厳しく攻められるように、いろいろなことができる資質があるのかもしれません。 (投球のまとめ) まだ大きな身体から投げ込むという、今後の可能性に期待しての素材だと言えるでしょう。現状は、育成枠での指名があるかないかのレベルだと言えます。ただし、投球以外の部分や要所での投球、恵まれた体格などを加味すると、将来大きく化ける、そういった可能性を秘めているのかもしれません。そのへんを、土台となるフォームから探ってみましょう。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さのあるフォームです。軸足一本で立った時には、バランス良く立てていました。少し元にした映像が見難かったので、わかりずらい部分もあったのですが、ご了承くださいませ。 <広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばしているので、お尻の一塁側へのスペースは確保できています。したがって、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種も、それほど無理なく投げられるフォームです。 「着地」までの地面の捉えも、悪くないように見えます。そういった意味では、将来的に曲がりの大きな変化球の習得も期待できるのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めている。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすい。映像的に見難いのだが、足の甲での地面の捉えは浅いように見える。したがって、浮き上がろうとする力は抑えきれず、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」は並ぐらいに見え、それほど指先も優れているようには見えない。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻の落としはできているので、カーブやフォークといった球種を投げても窮屈にはなり難そう。また、腕の送り出しにも、それほど無理は感じられない。そういった意味では、肩・肘への負担は少ないのでは? また、現状は、力投派でもあないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りも適度に作れており、ボールの出どころもある隠せています。そういった意味では、長身を活かした角度も相まって、打者としては捉えやすい投手ではないように思います。 腕も投げ終わったあと体に絡んでくるなど、打者としては吊られやすいフォームかと。腕の振りがもっと強くなり、ストライクゾーン~ボールゾーンに逃げて行く球を覚えられれば、効果的に使える可能性があります。まだ投げ終わったあと一塁側に重心が流れるなので、作り出したエネルギーをロスしてしまい、指先までしっかり力を伝えきれていないのは残念なところ。股関節の柔軟性を養いつつ下半身の筋力を強化できれば、もう少しステップ幅も確保でき「体重移動」も効率的になりそうです。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に課題があり、全体的にもう少し粘りは欲しいところです。足の甲の捉えが浅いために、高低の制球に課題を残します。しかし、故障のリスクは少なそうですし、将来的に良い変化球を習得して行けそうな下地はあります。そういった意味では、グングン伸びて行ける可能性は秘めています。 (最後に) 実際のパフォーマンス的には、高校からプロは時期尚早かなと思える部分はあります。しかし、運動神経も高そうで、恵まれた体格を活かせる可能性を感じます。土台となるフォームも悪くないので、ひょっとすると育成枠あたりで指名してくる球団があるかもしれません。夏までの成長ぶりを気にしつつ、最終的な評価を判断して行けたらと考えています。 蔵の評価:追跡級! (2024年 春季東京大会) |