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高尾 響(広陵3年)投手 172/73 右/右 | |
センバツ大会に出場した投手の中でも、現時点での総合力NO.1は、この 高尾 響 ではないかと改めて実感した。一体彼の何処が優れているのか? 改めて検証してみたい。 (投球内容) 上背こそさほどなく、オーソドックスなフォームから投げ込んでくる好投手。3年春のセンバツでは、2試合 18回1/3 11安 8四死 23三 防 2.45 という成績を残している。 ストレート 140キロ前後~MAX148キロ ☆☆☆★ 3.5 多少ボールにバラツキはあるものの、ビシッと球威と球速を兼ね備えたボールの質は大人の球といった感じがする。両サイドにボール散らせつつも、やや高めに抜ける球も少なくない。もちろん、捕手のリードでも意図的に高めを使ってもいたのだが。18回2/3イニングで四死球は8個と、完成度の高いピッチングで見える一方で、意外にアバウトな部分を残していることも忘れては行けない。それでも要所でズバッと好いところに決められるところは、好い投手に共通する部分だ。 変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆ 3.0 縦割れのスライダーの他に、カットボールなどもあってカウントを整えて来る。さらに緩いカーブを交えたり、少し落差の小さなスプリット気味に縦の変化球も持っている。まだ絶対的な変化球はないように見えるが、それでも18回1/3イニングで23個と、遥かに投球回数を上回る奪三振が奪えている。 その他 牽制は非常に鋭く、クィックも0.8秒台と極めて高速。むしろ、多少スピードを緩めてでも、制球を乱さないことに注意したい。フィールディングやマウンドさばき含めて、投手としてのセンスに優れている。 (投球のまとめ) 意外に真っ直ぐのコントロールがアバウトな点と、絶対的な変化球がまだ無いように思えます。マウンドさばきや野球センスの高さは感じますが、けして完成された選手ではないように思います。問題は、肉体的に今後どのぐらいの上積みが期待できるのか? この辺の見極めも、スカウトには求められそうです。 (投球フォーム) セットポジションから、静かに足を引き上げてくる先発タイプ。軸足の膝はピンと伸び切ることなく、力みなく立てている。ただし、全体のバランスとしては並ぐらいか。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻はバッテリーライン上に残りがち。したがって体を捻り出すスペースが確保できず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種の曲がりは鈍くなりがち。「着地」までの粘りも平凡で、武器になる曲がりの大きな変化球を習得できるかは微妙ではないのだろうか。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドの制球はつけやすい。ただし、足の甲での地面の捉えが浅めなので、力を入れるとボールが上吊りやすい。 それでも「球持ち」は良く、指先の感覚も悪く無さそう。細かいコントロールはないが、試合を壊すような制球の粗さは感じない。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻が落とせないので、カーブやフォークをなどを投げる窮屈になりがち。そういった意味では、もう少しこういった球を使う頻度が増えるようだと、肘への負担なども注意した方が良さそうだ。それでも腕の送り出しを見る限り、肩への負担は少なそう。それほど力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。 <実戦的な術> ☆☆★ 2.5 「着地」までの粘りはそれほどなく、それでいてボールの出どころもさほど隠せているわけではない。そういった意味では、打者としては比較的合わせやすいのでは?まして上背もなく角度に欠ける部分もあるので、打者のレベルが上がるとどうだろうか? 腕は適度に振れているので、打者としては吊られやすい部分も。しかし、前への体重の乗り具合はイマイチで、地面を蹴り上げるような躍動感は感じられない。この辺がもっと良くならないと、打者の手元までの勢いは出てこないかもしれない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」や「開き」は平凡で「体重移動」に課題を残す。足の甲の抑えの浅さから、ボールが高めに集まりやすい。故障のリスクはさほど感じないが、将来的に武器になる変化球を習得できるかは微妙な印象。投球の完成度は高そうに見えるものの、フォームの技術としては課題も少なくない。 (最後に) 細かい制球力やフォーム技術の粗さからも、完成度が高そうに見えて、まだまだ改善して行かないと行けないポイントも少なくない。けしてポテンシャルで魅了するタイプではないだけに、ここは高校からプロというよりも、大学や社会人などでワンクッション置いてからの方が妥当と見る向きも多いだろう。あえてリスクを犯してまで高校から指名する、あるいは本人もプロ入りすべきかと言われれば、個人的にはまだ「旬」ではないのかなといった印象を受けた。実際の投球以上に、フォームを分析することで、それを強く実感した次第です。 (2024年 センバツ大会) |