24kp-13





山口 瑛太(創志学園3年)投手 172/69 左/左 





 「進学かもしれないけれど」





 左腕から繰り出すキレのある球と、実戦的な投球が魅力の 山口 瑛太 。進学が前提なのかもしれないが、意外に面白いのではないかと個人的には気になっているサウスポーなのだ。


(投球内容)

 センバツ初戦の別海戦では、
9回を投げて4安打・4四球14三振 の投球で完封勝利。リリーフで登場した山梨学院戦でも、1回2/3イニングを無失点で切り抜けて見せた。

ストレート 130~135キロ 
☆☆★ 2.5

 確かに、球速表示的には左腕とは言え物足りなかったとは否めない。しかし、左腕の球速が5キロぐらいは出にくい甲子園のガンであったのに加え、キレ型の球質でそのへんはあまり気にならなかった。むしろ、結構ポンポンとストライクを先行させるイメージが強かったが、
意外に真っ直ぐが暴れる精度のほうが不安が残った。秋の中国地区大会では140キロまで記録しており、MAXも142キロに到達しているという。さらにスリークォーター気味でアウトステップすることからも、左打者にとっては背中から来る独特の球筋なのもあり、球速の無さはあまり気にしなくても良いのではないかと思える。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5

 
大きく横滑りするスライダーが武器にであり、他にも緩いカーブやチェンジアップ系の球も織り交ぜる。真っ直ぐのキレだけでなく、こういった変化球の精度やキレも悪くなので、投球回数を遥かに上回る奪三振が奪えていた。

その他

 クィックは1.15秒前後と平均的だが、動き自体は悪くない選手。元々マウンドさばきの良さもよく、野球センスに優れたタイプなのだろう。特に、テンポ良く投げ込み
自分のリズムに相手を引き込むのが上手い

(投球のまとめ)

 昨秋は、そこまで三振が取れなかったものの、制球はそこまで悪くなかった。しかし、センバツでは三振が多く奪えていた一方で、制球に粗さが出てしまった印象。夏に向けてさらに
球威・球速を増すことが求められるが、そんな中、何処まで制球の粗さを抑えられるかが鍵になるのではないのだろうか。





(投球フォーム)

 
ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり。先発タイプと思いきや、意外に最初から出力を上げるリリーフタイプの入り方となっている。軸足一本で立ったときにも、膝から上がピンと伸び切り力みは感じられるものの、全体のバランスとしては悪くない立ち方になっている。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 
引き上げた足を地面に向けて伸ばしているものの、徐々にお尻は三塁側に深く沈んでくる。そのため、適度に体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げるのには無理は感じられない。

 「着地」までも適度に前にステップさせることで、体を捻り出す時間も確保。そういった意味では、曲がりの大きな変化球を習得しやすいフォームとなっている。


<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 
グラブは最後まで内に抱えられ
ており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすい。ただし、足の甲での地面の捉えが浅いので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」や指先の感覚がけして悪そうには見えないものの、現状はまだ本当のコントロールがないようにも見える。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 
お尻もある程度落とせているので、カーブなどを投げても窮屈にはなり難い。そういった意味では、肘への負担は少ないのではないのだろうか? 腕の送り出しを観ていても、肩への負担も少ないので? けして力投派でもないので、そこまで疲労を溜めやすいということも無さそうだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 
「着地」までの粘りは適度に作れている上、ボールの出どころもある程度隠せている。さらにスリークォーターの腕の振りにアウトステップするなど、左打者には背中越しから来る厄介な球筋でもある。

 腕は適度に振れており、打者としては吊られやすいことが奪三振に繋げている。ただし、
前への体重移動という意味では充分ではないので、現状は腕や上体を強く振ることで、キレを生み出している感じ。そのためキレは生み出せても、打者の手元まで球威のある球は投げ込めていない。

(フォームのまとめ)

 
フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に物足りなさを残す。足の甲の押し付けの浅さから、ボールが上吊りやすい制球力。故障のリスクは低そうで、将来的にも武器になるほどの変化球を投げられる下地は整っている。そういった意味では、実戦的なサウスポーへの成長は期待できる素材ではないのだろうか。


(最後に)

 
確かに、高校からプロというよりも大学・社会人でワンクッション置いてからという判断になっても不思議ではない。ただし、育成枠あたりであれば、かなり面白い素材ではないかとみている。この辺は考え方次第だが、本人がどのような未来像を描いているかで変わってきそうだ。夏まで追いかけて、私も最終的な判断をしてみたい。


蔵の評価:
追跡級!


(2024年 センバツ大会)