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洗平 比呂(八戸学院光星3年)投手 177/76 左/左
 




 「エンジンのかかりが遅かった」





 左投手の球速が出難い甲子園とはいえ、全体的に物足りないボールが多かった 洗平 比呂 。彼らしい真っすぐが決まるようになったのは、2戦目の星稜高校戦での3回以降だった。こういった球が安定してゆくようであれば、高校から本会議での指名も意識できる素材だろう。


(投球内容)

 上背こそ177センチと中背ではあるものの、
手足が長い投手体型で、マウンドではもっと大きく見せる選手。センバツでは2試合に登板し、17回 16安 5四死 14三 防 2.12 といった内容だった。

ストレート 130キロ台中盤~MAX143キロ 
☆☆☆★ 3.5

 球威・球速としては、高校生左腕としても平凡でした。それでも、
要所で魅せる時の真っ直ぐには力強さを感じます。また、四死球で自滅するような危うさがないところも良いところではないのでしょうか。腕が遅れて出てくる感じなので、球速表示以上に打者は立ち遅れる感じがした。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ
 ☆☆☆ 3.0

 カーブや、曲がりながら沈むスライダーを中心にカウントを整えてきます。また、ツーシームような小さく逃げるようなチェンジアップもあり、そういった球で、しっかりカウントは整えることができます。絶対的な決め球はなく、時々
甘く浮いた変化球を打たれるケースが目立ちます。

その他

 牽制は平均的で、それほど鋭いものは観られません。クィックは、1.05~1.20秒前後と幅広く、ひょっとすると投げるタイミングを変えて投げているのかもしれません。フィールディングの動きも悪くなく、大きな欠点は見当たりません。それほど細かい投球術は感じられないものの、要所で力を入れて投球にメリハリをつけることはできていました。

(投球のまとめ)

 現状は、支配下で指名されるかボーダーラインぐらいかなといった印象は受けました。しかしながら、夏までの成長次第では、下位~中位ゾーンへの期待も膨らむ素材ではないかと考えます。そのためにも夏までに、もうワンランク真っ直ぐの勢い・球威に上積みが欲しいところです。



(投球フォーム)

 今度は、フォームについて考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり。軸足一本で立った時には、それほど膝に余裕は感じられない。それでも全体的には、バランスの取れた立ち方となっていた。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残りがち。したがって体をひねり出すスペースが充分確保できないので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球には適さないように見えるが、実際にはブレーキのあるカーブを結構投げ込んでくる。

 「着地」までの地面の捉えは早く、体をひねり出す時間は充分とは言えない。そういった意味では、打者からは合わされやすそうに見えるのだが、これまた腕が遅れて出てくる感じなので、そういったフォームを補えている。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 
グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めている。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすい。

 
足の甲での地面の捉えが浅いので、浮き上がろうとする力を充分抑え込めているとは言えない。それでも「球持ち」の良さもあって、指先でボールをある程度制御できている。そのためか? 足の甲の抑えが浅い割には、そこまで抜け球は多くはない。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としが甘い割に、カーブ系の球を結構使ってくるので、肘への負担が少なくは無さそう。腕の送り出しを見ていると、角度を保ちつつも無理は感じられない。そういった意味では、肩への負担はそこまで大きくはないのでは? それほど力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りが物足りないので、打者としてはタイミングは合わせやすいように見える。しかし、ボールの出どころは隠せており、
腕も遅れて出てくる感じで、打者は思ったほど捉えやすくは無さそうだ。

 
腕はしっかり振れているので、打者としては吊られやすい勢いがある。「球持ち」は良いものの、「着地」までの粘りの無さから、まだ充分に体重を乗せきれてはいないように思える。この辺が変わってくると、打者の手元までもっと生きた球がゆくようになるのではないのだろうか。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「着地」と「体重移動」などのエネルギー伝達に課題を残しているように思える。足の甲の抑えが甘い割にはボールが上吊らなかったり、故障のリスクもそこまで高いとは言えなそう。将来的に武器になる球を見出だせるかと言われると微妙だが、カーブや曲がりながら沈むスライダーのキレはすでに悪くない。欠点がありながらも、それを他の動作で補えている印象を受けるフォームだった。


(最後に)

 まだ成長途上とはいえ、
要所で良い球がゆくなど、良い投手に共通する要素を持っている。けして素材型というほど制球に粗さがあるわけでもないので、夏までの成長次第では、中位(3位~5位)ゾーンあたりまで入ってきても不思議ではない。夏までの、さらなる成長を期待したい1人で、すでに本会議クラスの評価をしても良いのではないのだろうか。


蔵の評価:
(下位指名級)


(2024年 選抜大会)