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 河野 伸一朗(宮崎学園2年)投手 189/68 左/左





「球速は増すのか?」 





 夏の甲子園では、1イニングのみの登板ということで、MAX138キロを記録した 河野 伸一朗 。しかし、先発だと130キロ前後の球速で、果たして今の球威・球速で、高校からのプロ入りを実現できるのだろうか? そして、最終学年において、さらなる球速の上積みは期待できるのだろうか?


(投球内容)

 甲子園ではリリーフ登板だったが、宮崎大会では5試合中4試合で先発。特に決勝戦の聖心ウルスラ学園戦では、10回まで投げて無失点で甲子園行きに大きく貢献した。夏の内容は、
42回 28安 28四死 37三 防 1.29 と安定した成績を残している。

ストレート 130キロ前後~MAX138キロ 
☆☆★ 2.5

 球速ほどは遅くは感じられないのだけれども、やはり
ドラフト候補としてはやや物足りない球速ではあります。むしろ、変化球を多く投げる中で、時々真っ直ぐを交えるので有効なのかと。また、結構真っすぐは高めに抜けたりバラついていて、コマンドとしては高いとは言えません。そのため、42イニングを投げて、四死球は被安打と同じ28。打たれ難いものの、四死球率 66.7% と、ほぼ投球回数に対し2/3 のペースで四死球を出していることは覚えておきたいポイントです。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ 
☆☆☆★ 3.5

 カーブのような曲がりながら沈む軌道のスライダーが武器で、さらに緩いカーブも交えているように見えます。また甲子園では、チェンジアップが有効で、そういった
変化球一つひとつの精度・キレは悪く有りません。三振も42回で37三振と、1イニングあたり 0.88個 と、先発投手としては基準を上回るペースで三振が奪えていました。

その他

 クィックは、1.0秒前後から~1.3秒台とかなりバラツキがあり、一球一球投げるタイミングを変えているというよりは、走者の居場所によって使い分けているように感じます。牽制は適度に鋭く、フィールディングは打球を弾いたりしていて、大型でどうなのかな?という印象も受けました。このへんは、最終学年でもう少し見極めたいポイントです。

(投球のまとめ)

 凄い球を投げるというよりも、
大型で打ち難く、粘っこい投球をする左腕といった感じがします。その辺が、最終学年でどう変わってくるのか気になるところです。今のところは候補の1人だとはあると思いますが、大型故に高校の間にプロ入りを実現できるのかどうか? 見極めて行きたいところです。





(投球フォーム)

 今度は、今後の可能性も含めてフォームの観点から考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。膝がピンと伸びがちで力みが感じられるのは気になるが、全体のバランスとしては平均的だろうか。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 前に倒れ込むように重心を沈めて来るので、お尻の三塁側(左投手の場合)への落としはバッテリーライン上に落ちがち。したがって体を捻り出すスペースは確保しずらく、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適しません。

 前に大きくステップすることで、適度に体を捻り出す時間は確保。そのためか、スライダーやチェンジアップなどの球種のキレは良く、今後は球速のある小さな変化球を中心に、ピッチングの幅を広げてゆくことになりそうです。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで体の近くに抱えられており、外に逃げようとする遠心力は抑え込めています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいのでは?

 しかし、足の甲での地面の捉えが浅いので、浮き上がろうとする力を抑え込めていません。また
「球持ち」も浅いので、指先まで力が伝えられず、コントロールがつけ難い部分があるように感じます。特に制球は、横よりも縦の制球に課題があると考えられますし、実際高めに抜ける球は多いです。

<故障のリスク> 
☆☆ 2.0

 お尻が落とせないので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種だと窮屈になりやすいです。しかし、そういった球の割合は少なそうなので、現状はそこまで気にしなくても良さそう。

 むしろ、
ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている方の肩が極端に下る腕の送り出しの方が気になります。こうなると、肩への負担などはどうなのか? という疑問は残ります。ただし、けして力投派ではないので、現状は、そこまで疲労を溜め難いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは悪くなく、
ボールの出処も隠せていて、打者としてはタイミングがとり難いのかもしれません。それ以上に、球筋にも角度があるので、芯で捉え難いというのもあるのかもしれません。

 腕の振りにはまだ強さがさほどではないので、この長い腕が体に絡むような粘っこさが出てくると、さらに打者としては吊られやすいかも。ただしまだ、ステップが狭すぎるのか? ボールに
しっかり体重を乗せてからリリースできず、打者の手元までの勢いや球威に欠ける部分があります。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「球持ち」と「体重移動」に課題を感じます。足の甲の浅さと球持ちの短さでボールが上吊りやすく、故障のリスクも高いフォーム。将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかは微妙ですが、現時点でスライダーやチェンジアップなどの変化球は悪く有りません。しかし、かなりリスキーなフォームをしている印象は否めませんでした。


(最後に)

 大型ですが、球威・球速で押すようなスケール型よりも、恵まれた体格を活かした打ち難さを売りにする技巧派に育って行きそうな気がします。そういった部分を、今後何処まで追求できるのか? 少し長い目で見守ってみたいタイプでした。


(2023年夏 宮崎大会)