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坂口 翔颯(国学院大4年) 投手 180/80 右/右 (報徳学園出身) 





 「思ったほどではなかった」





 即戦力候補として上位指名が期待された 坂口 翔颯 。しかし、この春のリーグ戦では、思ったほどの内容を示せないまま終わってしまった。現状の彼がどのような状況なのか? 考えてみることにする。


(投球内容)

 オーソドックスなフォームから投げ込むので、
凄みよりも総合力で勝負する実戦派。リーグ優勝も期待されたが、5試合 0勝4敗 防 2.63(8位)と、平凡な成績で終わっている

ストレート 常時145キロ前後~150キロ 
☆☆☆★ 3.5

 
球質としてはキレ型のボールで、この春も勢いのある球を投げ込んでいた。両サイドに散らしつつ、変化球とのコンビネーションで投球を組み立ててくる。それほど甘いゾーンに入ってくるという感じではないのだが、全体的に球筋が高い印象。さらにキレ型の球質故に、タイミングが合ってしまうと長打が食らいやすく、その辺が勝ち星につながり難い要因なのかもしれない。

変化球 スライダー・カット・カーブ・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 スライダー・カット系の球でカウントを整えてきたり、時には緩いカーブやチェンジアップ系の縦の変化も魅せて的を絞らせないようにする。ただし、追い込んでから、この球を投げておけばという武器がなく
、決め手に欠けるところが投球を苦しくしているのかもしれない。

その他

 牽制は非常に鋭く、出塁したランナーを誘うという意欲が強い。クィック自体は、1.15秒前後~1.20秒前後と平均的。フィールディングの動きやベースカバーなども上手く、投球以外の部分にも大きな欠点は見当たらない。ランナーを背負っても、ボールをじっくり持って「間」も意識できている。逆に間合いが長すぎて、走者だけでなく味方のリズムも狂わしている可能性もある。

(投球のまとめ)

 水準以上の真っ直ぐの勢いやキレは感じられるものの、高めに集まりがちで、
タイミングが合ってしまうと長打を食らいやすい。変化球も一通りはあるものの、ここぞの時に相手を仕留められるほどの武器がないことが、投球を苦しくしてしまっている要因かもしれない。


(成績から考える)

 この春の坂口投手の成績は、
24回 17安 6四死 14三 防 2.63 といった内容だった。そこで、いつものように、ファクター別の検証してみたい。

1,被安打は投球回数の80%以下 ◯

 被安打率は、70.8% と基準を満たしており、圧倒的ではないものの的を絞らせない投球はできていた。

2,四死球は、投球回数の1/3(33.3%)以下 ◎

 四死球率は、25.0% であり、これまた基準を満たしている。球筋自体は真ん中~高めに集まりやすいものの、四死球で自滅するような危うさはない。

3,奪三振は、1イニングあたり0.8個以上 ✕

 1イニングあたりの奪三振は、0.58個 と少ない。基本的に、空振りを誘うというよりも、
的を絞らせない打たせてとるピッチングスタイルだと言えよう。

4,防御率は1点台以内 ✕

 防御率は、2.63 と、ドラフト候補としては平凡な数字。ただし、1年秋のリーグ戦では、
5勝0敗 防 1.18 という、好成績を残した実績がある。

(成績からわかること)

 実際の投球を観ていても感じられる通り、三振が少ない。また、ドラフト上位ならば1度は0点台という圧倒的なシーズンも欲しいところ。そういった意味では、
数字の上でも絶対的ではないことが伺われる。


(最後に)

 一見完成度が高そうに見えるのだが、一年目から一軍である程度戦力になるかと言われると、現状の内容や成績だと少し心もとない。その辺の物足りなさを、秋に払拭できるかで上位指名になれるかは決まってきそう。現状は、3位前後ぐらいの位置づけなのかなと考えており、この春の内容のままだと、即戦力としては厳しい。その割に、今後の上積みをという意味ではどうなのかなという中途半端な存在になってしまうのではないかと危惧している。それだけに、秋は一皮むけたところを魅せて、上位指名を決定的にして欲しい。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2024年 春季リーグ戦)


 








坂口 翔颯(国学院大3年) 投手 180/80 右/右 (報徳学園出身)





「しっかりピッチングができる投手」





 報徳学園時代から、好投手として知られていた 坂口 翔颯 。改めて大学でのピッチングを魅ていると、投球が組み立てられる投手らしい投手といった感じがしてくる。意外に、そういった投球ができる投手は、アマの選手には少ない。


(投球内容)

 凄みを感じさせる投球ではないものの、3年秋のシーズンでは 
7試合 0勝2敗 ながら、防御率は 1.97 と安定。1年秋には、5勝0敗 で、防御率 1.18(2位)の好成績の残したことがある。過去4度の規定投球回数に達しており、通算で10勝を積み上げてきた。

ストレート 145キロ前後 
☆☆☆ 3.0

 球速・球威的には、ドラフト候補としては平均的。しかし、ボールに角度を感じさせる球筋で、キレのある球を投げ込んでくる。秋は32イニングで32安打を浴びているように、コースに散らせて来る割には、そういった球が苦
もなく合わされてしまう球威とフォームであることは気になる材料。。

 四死球は6個で、四死球率は 18.8% と少なく、コントロールで自滅するような危うさは感じられない。コース一杯で出し入れしたりと
、細かいコントロールや投球術を身につけている

変化球 カット・スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 カットボールでカウントを整えつつ、スライダーやチェンジアップも積極的に使ってくる。右打者には、カット・スライダーを中心に、左打者にはチェンジアップだかツーシームだか沈む球とのコンビネーションとなっている。ときには、緩いカーブなども織り交ぜてくる。三振は29個と、1イニングあたり 0.91個 で、それなりに三振は奪えていた。

その他

 クィックは、1.0秒前後~1.1秒前後とまずまず。
セカンドへの牽制などは、実にターンが鋭く上手い、。フィールディングなどの動きも悪く無さそうだが、ファーストにランナーを背負った時に、意外に走者を見ているようで見ていないことがあり、そういった走者への目配せという意味では、フォーム盗まれやすいので注意したいところ。それでも、投球術・マウンドさばき、野球センスには優れたタイプではないのだろうか。

(投球のまとめ)

 球威・球速という意味では突出したものは感じられないが、ベースとなっている投球の土台はしっかりしており、さらに力強さが増してくると、素直に結果に現れやすいタイプかと。そこを引き上げられる自信がある球団にとっては、青写真を描きやすくリストにも名前を残すことになりそうだ。






(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足一本で立ったときには、膝がピンと伸びがちで、全体のバランスとしても平均的。

<ボールの支配> 
☆☆★ 2.5

 お尻の一塁側への落としには甘さを残し、体を捻り出すスペースとしては並ぐらい。そのため、カーブやフォークなどを投げられるものの、やや変化は鈍くなりやすい。

 それ以上に、着地までの地面の捉えが早く、体を捻り出す時間が充分確保できない。そういった意味では、球速のある曲がりの小さな変化球を中心にピッチングの幅を広げてゆくタイプではないのだろうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすい。足の甲での地面の捉えが浅いように見えるものの、「球持ち」の良さを活かしてか? それほどボールが上吊らない。ただし、高めに浮いた球を苦になく、はじき返されることは少なくない。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としには甘さは残すものの、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種をあまり投げて来ない。したがって、窮屈になる機会は少なく、肘への負担は少なめではないのだろうか。ただし、過去肘痛でシーズンを棒に振ったこともあるので、体のケアには充分注意して欲しい。

 腕の送り出しを見ていると、角度のある投げ方はしているものの無理は感じられない。それほど力投派でもないので、疲労を溜めやすいということも無さそうだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの地面の捉えが淡白で、打者としては
タイミングが合わしやすい。また、ボールの出処も見やすく、コースを突いたような球でも、踏み込まれて打たれやすい。

 腕はしっかり振れて体に絡んでくるが、ボールが見やすいので打者は吊られない。「球持ち」はよくて、ある程度体重を乗せてからリリースできており、地面の蹴り上げは悪くない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「着地」「開き」に課題を抱えている。ただし、「球持ち」には優れている。制球を司る動作はよく、故障のリスクもさほど高くない。あとは、いかに武器となる球を見出して行けるかではないのだろうか。


(最後に)

 簡単にコースを突いた球が打ち返されるのは、ボールの球威の問題だけでなく、合わされやすく見やすいフォームに原因がありそうだ。その部分が改善されてくると、投球はしっかり組み立てられる土台があるので、より実戦的で嫌らしい投手になれるのではないのだろうか。そういった変化を、最終学年には期待してみたい。


(2023年秋 東都リーグ戦)