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佐藤 柳之介(富士大4年)投手  179/88 左/左 (東陵出身) 
 




 「意外にアバウト」





 まとまりのあるサウスポーとして、即戦力が期待される 佐藤 柳之介 。しかし、その投球を良く見てみると、結構真っ直ぐが高めに抜けたり、甘く入ったりしてアバウトであることに気がつく。


(投球内容)

 この秋の佐藤は、
5試合 5勝0敗 防 0.52(1位) と、キャリアハイともいうべき成績だった。神宮大会代表決定戦の仙台大戦と、神宮大会の創価大戦での登板を確認したが、その印象はあまり変わらなかった。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 
☆☆☆ 3.0

 ボールの出どころを隠したフォームから、
ピュッとキレある真っ直ぐを投げ込んで、打者を差し込むようなキレのある球を投げ込むのが持ち味。しかし、全体的に真っ直ぐのコマンドはアバウトで、球筋も高めに浮くことが多い。この二試合を見て感じたのは、右打者の外角高めの球を打ち返されるケースが多いということ。リーグ戦ならば、この高めのゾーンの球で空振りを奪えるところだが、返って全国レベルの打線だと痛打されてしまうのだ。

変化球 カーブ・スライダー・カット・フォークなど 
☆☆☆ 3.0

 結構緩いカーブを投げて、投球のアクセントとして来る。スライダー・カット系の球でカウントを整えつつ、右打者を中心にフォークなどを交えてくる。左投手にしては、あまりチェンジアップ系の球を得意としているわけではない。高めの真っ直ぐで空振りを奪うケースが目立つが、変化球で仕留めきるといったほどの絶対的な球は無いように思える。もう少し、フォークの精度・キレが増してくればといった感じだろうか。

その他

 クィックは、1.15~1.20秒ぐらいと平均的で、牽制は滅多に見られない。ボールを長く持ったりするので、走者としてはスタート切り難そうに見える。しかし、創価大などは目配せをした直後にスタートを切って来るなど、何かクセを見抜いていたのかもしれない。

(投球のまとめ)

 武器である高めの真っ直ぐが、返ってレベルの高い相手だと打ち頃のゾーンになってしまう危険性がある。そのため、よほどボールがキレている時じゃないと、ゾーン内でのアバウトさも相まって痛打を浴びやすい。元々キレで勝負するタイプなので、しっかり捉えられてしまうと長打を食らいやすいので。そういった意味で、打力が圧倒的に高まる、プロの打者を抑えられるかは微妙な印象は受けた。



(成績から考える)

 この秋は、
34回1/3 16安 8四死 39三 防 0.52(1位) と、リーグ戦においては素晴らしい成績を残してきた。しかし、私が確認した2試合では、ピリッとしない内容だった。

1,被安打は投球回数の70%以内 ◎

 
地方リーグの選手なので、ファクターを厳しめに70%以内とした。それでも被安打率は 46.6% と圧倒的で、申し分ない内容だった。

2,四死球は投球回数の1/3以下 ◎

 
四死球率は、23.3% と、これも申し分ない数字。そういった意味では、無駄な四死球を出さないコントロールはある。しかし、課題はゾーン内でのアバウトさであり、その辺プロ入り後どうでるかは心配ではある。

3,奪三振は、1イニングあたり 0.9個以上 ◎

 
奪三振は投球回数を上回っており、1.13個 と合格ライン。リーグ戦では、高めの真っ直ぐで空振りを誘うことが多い。この辺も上記に記したように、レベルの高い打線だとファールにされたり、痛打されるケースが多いので、この数字を鵜呑みにして良いかは微妙。

4,防御率は1点台以内 ◎

 
防御率は、0.52 と圧倒的な安定感を誇っており申し分ない。この安定感こそ、この選手の大いなる魅力ではないのだろうか。

(成績からわかること)

 
リーグ戦で残した実績は申し分なく、このピッチングをプロでも出来るのであれば、間違いなく即戦力になりうるだろう。しかし、ゾーン内での甘い部分や、高めの球で仕留めきれない となると、投球は全然変わってきそうだ。そのため、この投球をプロで続けるためには、よほどボールのキレを年間通して持続できないと厳しいように思える。


(最後に)

 
確かに、全国の左腕で指折りの完成度と実績の持ち主である。それだけに一年目からある程度、一軍でも先発をという期待はしたくなる。その一方で、状態の維持やレベルの高い打線相手に、何処まで自分の投球が貫けるのか? といった部分では、この秋の2試合を見た感じでは不安が残った。先発争いには加わわることはできると思うが、そこを勝ち抜いてローテーションに定着というのを一年目から可能かは、少し懐疑的な見方している。むしろプロの環境に慣れた、2~3年目ぐらいに、どうなっているのか? そういったタイプなのかもしれません。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2024年 神宮大会)









佐藤 柳之介(富士大3年)投手  179/85 左/左 (東陵出身)





「派手さはないが」





 ビックリするような球を投げ込むわけではないが、確かな実力があるといったタイプの 佐藤 柳之介 。今年の大学球界を、代表するサウスポーの1人ではないのだろうか。


(投球内容)

 この秋の成績は、
4試合 2勝0敗 21回1/3 12安 7四死 14三 防 1.27(1位) で、最優秀防御率に輝いた。


ストレート 140キロ前後~後半 
☆☆☆ 3.0

 球速的には、それほど驚くような球威・球速はない。むしろ、ボールの出処を隠したフォームからピュッと来るので、
想像以上に打者が空振りをしたりタイミングが合わない。それを示すのが、21回1/3イニングで12安打という、56.2% という被安打率の低さ。安定したフォームとマウンドさばきで、コントロールが良さそうに見える。しかし、意外に細かい制球力はなく、ストライクゾーンの枠に投げ込んでくるといった感じで、高めに抜けてしまう球も少なくない。その辺は、四死球率が 32.8% と、投球回数の1/3(33.3%)以下には抑えられているものの、繊細さがないのを裏付ける数字となっている。

変化球 スライダー・カット・カーブ・チェンジアップなど 
☆☆☆ 3.0

 変化球は、スライダー・カットボールとのコンビネーションで、たまに緩いカーブやチェンジアップ系のボールを投げ込むといった感じ。
カウントを整えるのには苦労しないが、この球を投げれば仕留められるとか、そういった絶対的な球は見当たらない。特に、右打者に対して逃げてゆくチェンジアップ系の球が滅多にみられず、シュート系の球が弱いのが気になるところ。そのへんは、1イニングあたりの奪三振が、0.65個と平凡なところからも伺われる。

その他


 走者を出すと、
一球一球投げるタイミングを変えてくるタイプ。そのため、クィックタイムも、、1.1秒前後~1.5秒ぐらいと幅が広い。ボールをじっくり持ったり、走者への目配せもしっかりしてくるので、走者としてはスタートが切りにくい。牽制は滅多に入れて来ないのと、フィールディングの動き自体は好いが悪送球したりと、もう少しその辺を見極めて行きたいポイントだ。

(投球のまとめ)

 丹念にコースを突いて来るタイプかと思いきや、意外に制球はアバウトで決め手にも欠ける部分を残している。むしろ、タイミングのとり難いフォームに特徴があるタイプかもしれない。最終学年で、本当の意味でプロで実戦力を売りにして行けるのか、見極めて行きたい部分ではないのだろうか。






(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり、特に、軸足一本で立ったときに、膝に力みなく立てていて、
バランスが好い立ち方ができている。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻の三塁側への落とし(左投手の場合)に甘さを残す。カーブやフォークといった捻り出して投げるボールを投げられないことはないが、変化は鈍くなりがち。

 「着地」までの地面の捉えも平均的で、体を捻り出す時間は並ぐらい。そうなると変化球の曲がりが平凡で、
武器になる球の習得には苦労するかもしれない。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸もブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすい。しかし実際は、右打者にはある程度散らせているものの、
左打者へ対してはアバウトになっている。実際左右の成績を比較してみると、右打者の方が抑えられている。

 足の甲での地面の捉えがやや浅く、浮き上がろうとする力をまだ充分には抑えて込めていない。それでも「球持ち」は好いので、ある程度指先でコントロールできているのかもしれない。しかしそれでも、
高めに抜ける球は少なくない

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さは残すものの、それほどカーブやフォークといった球種を投げてくるわけではない。そういった意味では、窮屈になる機会も少なく、肘などへの負担はあまり気にしなくても良さそう。

 腕の送り出しも、そこまで違和感は感じられず肩への負担も少なそうで、力投派でもないので疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的も、
ボールの出処を隠せていることと、球持ちが好いことで、打者としてはタイミングが計り難いのかもしれない。

 腕はしっかり振れているので、もっとストライクゾーンからボールゾーンに逃げてゆく球を身につけられれば、空振りも誘えそうなもの。しかし、体重を乗せてからリリースするという部分では物足りなく、打者の手元までのボールの勢い・球威といった部分では物足りない。フォーム的にはボールは見難いので、これで球速や手元での勢いが出てくると、全然内容は変わってきそうだ。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「着地」と「体重移動」に改善の余地が残されていそう。制球を司る動作や故障のリスクという意味ではまずまずだが、将来的にいかに武器になるような球を見出して行けるのかが課題ではないのだろうか。多少の打ち難さは感じられるものの、現状そこまで嫌らしいといったほどではなく、実戦派になりきれていない印象は残る。


(最後に)

 フォーム的には、伊藤 将司(JR東日本-阪神)左腕に似たタイプかなといった印象を受ける。ただ、細かい制球力など、実戦的という部分では、社会人を経て入った 伊藤将司 ほど
実戦派になりきれていない印象を受ける。その辺を、最終学年でいかに払拭して行けるのか、見届けてみたいところ。現状は、有力な指名候補の1人ではあるが、その成長を待ちたい。


(2023年秋 神宮大会)