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徳山 一翔(環太平洋大4年)投手 177/87 左/左 (鳴門渦潮出身) | |
春は故障で投げられず、秋も完全復活したとは言い切れなかった 徳山 一翔 。特に、昨年から課題だった制球のアバウトさは、さほど改善されているとは言えない内容だった。 (投球内容) この秋は、7試合 6勝1敗 防 1.67 と、それなりの数字を残せて復調ぶりをアピール。しかし、まだ150キロ前後のボールを投げ込んでいた時のほどの勢いはボールに感じられなかった。 ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0 この秋の投球では、普段は130キロ台で、ランナーを得点圏などに進めると力を入れて140キロ台中盤といった感じの球速だった。その真っ直ぐ自体も、力でねじ伏せるといった球威や勢いは以前よりも薄れていた印象。この辺は、故障明けで100%回復しているとは言えないだろう。 それでいて、元々真っ直ぐが結構暴れる傾向は変わらない。ただし、制球重視で130キロ台のボールを投げている時は、ある程度力みが消えてボールはコントロールできていた。むしろ、ボールの質やコントロールということを考えると、この力の抜き加減を覚えたことが、今後に向けては大きな財産になるかもしれない。ただしこの球の勢いだと、高めに甘く浮くと簡単に打ち返されてしまう。 変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0 かなり緩いカーブを多めに混ぜてきて、この球が投球の大きなアクセントとなっている。その他にも、曲がりながら沈む120キロ台のスライダーは、カーブと似た軌道。他にもチェンジアップ系の球もあるが、それほど投球の中では多くは使って来ない。まだ空振りを誘える変化球はないものの、変化球でカウントを整えることで無駄な四死球を防いだり緩急をつけることには成功している。 その他 クィックは、1.1秒~1.2秒 ぐらいと平均的。牽制も左腕らしく鋭く、フィールディングの動きや判断力にも優れている。そういった投球以外の能力は高い。昨年と比べると、ボールをじっくり持ってとか、走者への目配せはしっかりできるようになり、マウンドでは冷静に投げられるようになってきたことは成長した部分かと。 (投球のまとめ) 真っ直ぐの勢いや球威は、昨年の良い頃に比べると劣る内容だった。しかし、全体的に力の抜き加減や走者を置いてからの投球には落ち着きが見られ、そのへんは成長を感じた部分。元々野球への意識は高そうな選手だけに、新たらしいものを貪欲に習得してゆこうという意識は感じられる。あとは、アバウトな部分をいかに改善するか、あるいはボールの勢いを取り戻し誤魔化せるようになるかのいずれかだろう。 (成績から考える) 僅かなサンプルにはなってしまったが、神宮大会の2試合の成績から、その傾向を考えてみたい。 14回 8安 5四死 15三 防 0.00 と、直近の全国大会でも残せている。 1,被安打は投球回数の80%以下 ◎ サンプルとは少ないが、被安打率は 57.1% 。早稲田戦でも、10回を投げて5安打と被安打自体は少なかった。 2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 △ 四死球率は、35.7% と、若干基準をクリアできず。ただし、この数字が示す通り、ノーコンではないがストライクゾーン内ではアバウトな部分が目立つ。 3,三振は1イニングあたり 0.8個以上 ◎ 投球回数を上回り、1イニングあたり 1.07個 奪えていたので申し分ないだろう。ただし、絶対的な変化球がまだあるわけではないので、プロでは思いどおり三振が取れず苦しむかもしれない。 4,防御率は1点台以内 ◎ 僅か14イニングの成績ではあるが、全国大会で無失点であることは価値があるのではないのだろうか。 (成績からわかること) まだ完全復調とは思えない内容で、これだけの数字を全国大会で残せたのは一定の評価ができそう。しかし、制球のアバウトさは依然として残るだけに、この辺がプロでどう出るかではないのだろうか? 130キロ台の力の抜いた投球が、プロのマウンドで出来るかにも懸かっていそうだ。 (最後に) ハマった時のボールは素晴らしいが、不安定な部分が残るという意味では、1位ではなく2位あたりで獲得できた部分は大きいように思える。即戦力かと言われると心もとない部分が残るものの、力を抜いて130キロ台のボールでカウントを整える加減も身につけつつあり、いろいろ努力して資質を伸ばせそうな素材であることも考えると、可能性を感じさせる選手。 そういった意味では、リリーフならばある程度一年目から戦力になりうるかもしれない。同じようにアバウトな部分が気になっていた 古謝 樹 あたりを一年目からある程度戦力化できたことを考えると、このチームならばそれなりに使えるように持って行ける可能性は高いようにに感じました。個人的には、昨年の古謝選手と評価的には変わらないものがありますので期待しています。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2024年秋 神宮大会) |
徳山 一翔(環太平洋大3年)投手 177/86 左/左 (鳴門渦潮出身) | |
下級生までの 徳山 一翔 は、どちらかというと、スリークォーターの腕の振りから、キレのある球を投げる左腕といった印象を受けていた。しかし、この秋は、明らかにボールが重くなり、球速も増してきた気がする。 (投球内容) この秋のリーグ戦成績は、4試合 1勝0敗 12回1/3 8安 3四死 12三 防 0.00 といった成績に。やや登板数が少なく、順調さを欠いていたのだろうか? ストレート 145キロ前後~後半 ☆☆☆★ 3.5 高めの速球には勢いがあり、球威もあるので容易は捉えられない。全体的に立ち上がりを中心にアバウトな印象で、甘いゾーンに入ってくることも少なくない。それでもイニングが進んで来ると、四死球で自滅する危うさは薄らいでくる。調子が上がって来ると、ポンポンとストライクゾーンに投げ込みテンポを上げて自分のペースに引き込んでゆく。 変化球 カーブ・スライダー・カット・ツーシームなど ☆☆☆ 3.0 左腕らしいブレーキの効いたカーブが、決まりだすと楽になる。その他にも120キロ台のスライダー・カットボール・ツーシームなど、小さな変化が中心になり、それほど空振りを奪える変化球はない感じ。 その他 クィックは、1.10~1.15秒ぐらいと標準的で、牽制も左腕らしく鋭い。フィールディングの動きや判断力には良く、そういった投球以外の能力も高い。ランナーを背負うと、じっくりボールを持ってとか、微妙にコースの出し入れをするとか、そういった投球術は持ち合わせていない。 (投球のまとめ) 立ち上がりの危うさや、時々甘いゾーンに入ってくる球があり、それをプロの一軍レベルの打者が打ち損じてくれるかどうか? という不安は無きにしもあらず。ただし、真っ直ぐの球威も増して、変化球も悪くないだけに、全国的に見ても金丸 夢斗(関西大)に次ぐ左腕であるのは間違い無さそうだ。現状の内容的には、上位(2位)の24名以内に入って行けそうな投球は魅せていた。 (投球フォーム) 今度は、投球フォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。足を引き上げる勢いや高さがある選手で、フォームの観点から言うとリリーフタイプのような入り方。軸足一本で立った時に膝がピンと伸びがちで力みが生じやすいのだが、上手く引き上げた足を後ろ気味に持っていってバランスを保てている。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばせており、お尻の三塁側への落としはできています。したがって体を捻り出すスペースを確保できているので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適した投げ方になっています。 「着地」までの地面への粘りは平均的で、体を捻り出す出す時間は並みぐらい。そのため曲がりの大きな変化球の習得よりも、球速のある小さな変化が中心になっているのは頷けます。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブを最後は後ろに抜けてしまっており、外に逃げようとする力を充分には抑えられていません。したがって軸はブレやすく、両サイドのコントロールも乱れやすいのでは? 足の甲での地面の捉えも浅く、力を入れてしまうとボールが上吊りやすい。「球持ち」が悪くないので、指先である程度ボールを制御できているのかもしれないが ・・・。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 体を捻り出すスペースが確保できているので、カーブやフォークなどを投げても窮屈になり難い。カーブは結構使ってくるものの、現状はフォーク系のボールも見当たらないので、肘への負担は生じ難いのでは? 腕の送り出しを見ていても、それほど無理は感じられません。ただし、テイクバックした時に背中のラインよりも肩が後ろに入り込んでしまうので、その点では心配です。それほど力投派でもないので、疲労を溜めやすいということはないのかもしれませんが。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは平均的なので、打者としてはそれほど苦になるフォームではありません。それでもボールの出どころは隠せているので、投げミスをしなければといった感じです(アバウトなので心配ですが)。 腕は強く振れていて勢いがあるので、打者としては吊られやすい感じ。ボールにもある程度体重を乗せてからリリースはできているようですが、この点はもっと良くなれる感じはします。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に悪いところはありません。しいて言えば、「着地」までの粘りや「体重移動」がまだ平凡なので、この辺がさらに良くなると手がつけられなくなるかもしれません。 故障のリスクはさほど高くないのですが、制球を司る動作にはやや難があります。多彩な球種は操れそうですが、現状のフォームだと空振りを奪えるほどの変化球を習得できるかは微妙です。良い部分と悪い部分が混在しているフォームなので、どっちが全面に出てくるかで変わってきそうです。 (最後に) 下級生の頃と比べても、ボールが力強くなってきました。まだまだ成長途上の段階だと思うので、最終学年にどのレベルまで引き上げて来られるのか気になるところです。現状はまだ即戦力でといった感じはしないものの、ドラフト的には上位指名を意識できるところまで来ているのではないかと思います。期待して、最終学年での成長ぶりを見守りたいところです。 (2023年秋 神宮大会) |