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佐藤 爽 (星槎道都大4年)投手 176/77 左/左 (札幌山の手出身)





 「投球の基礎はできている」





 左スリークォーターから繰り出す実戦派で、適度なまとまりと洗練されたマウンドさばきを見せる 佐藤 爽 。ただし、育成での指名であった通り、まだまだ物足りない部分も残している。その物足りない部分とは何なのか? 考えてみたい。


(投球内容)

 この秋のリーグ戦では、
8試合に登板し、4勝2敗 44回 35安 19四死 45三 防 1.02(2位) と、春に続いて好成績を残した。

ストレート 135キロ前後~141キロ 
☆☆★ 2.5

 球威や球速という意味では、ドラフト指名された選手たちの中だと物足りません。この
打者の手元までのボールの強さ・球威という部分こそ、彼の投球においけて最も物足りなく感じさせる要因ではないのだろうか。

 そのため、甘く入ると長打を食らいやすい。マウンドさばきは洗練されている割に、
ゾーン内の制球に関しては時々甘い球が見られる。それでも、結構打者の内角を強気に攻めてゆく、そういった攻めピッチングが彼の持ち味ではないのだろうか。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 スリークォーターの腕の振りを活かした、
横滑りするスライダーのキレが身上。他にもチェンジアップもまずまずで、余裕があるとカーブなども織り交ぜてくる。そういった変化球一つ一つは悪くない。そのため、奪三振も投球回数を上回っている。

その他

 クィックはあまり鋭いものは見られないものの、左腕らしい
牽制の上手さを持っている。走者にしっかり目配せしているので、なかなかスタートは切り難いのではないのだろうか。内角を厳しく突いたり、外角の微妙なところを出し入れしたりと、そういった投球術や間みたいなものには上手いものがある。

(投球のまとめ)

 時々甘い球見られるので、球威や球速に欠け長打を食らいやすいのは気になる。そのため、もう少し真っ直ぐの出力アップなどをしてゆかないと厳しいのではないのだろうか。その一方で、投球はしっかりできる選手だし、変化球も悪くない。
真っ直ぐが、プロ入り後変われるかに懸かっている。





(投球フォーム)

 セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは感じます。フォーム序盤から高いエネルギー捻出をしていることからも、
リリーフ向きなのかもしれません。ただし、軸足にしっかり体重を乗せる前に重心を下げてしまうので、その辺がその後のエネルギー伝達という意味ではどうなのかな?といった部分は感じます。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばすので、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落とせています。したがって身体を捻り出すスペースは確保できているので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種にも適します。

 「着地」までの地面の捉えも適度で、身体を捻り出す時間を確保できています。そのため、曲がりの大きな変化球の修得も期待できる投げ方となっています。実際現在でも、一つ一つの変化球のキレ・精度は悪くありませんでした。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは内にしっかり抱えられているわけではないのですが、最後まで身体の近くに添えられています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいと考えられます。ただし、
足の甲での地面の捉えが浅いので、浮き上がろうとする力を充分には抑え込めていません。この辺が、高めに浮きやすい要因ではないのでしょうか。「球持ち」自体は悪くはないので、指先の感覚には優れていそうです。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻は落とせているので、カーブやフォークを投げても無理は感じません。ましてそういった球種も、滅多に投げないので窮屈になる機会は少なそうです。送り出しを見ていても、肩への負担にも無理は感じませんでした。それほど力投派といったほどでもないので、疲労を溜めやすいということも特別無さそうです。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りも適度に作れていますし、ボールの出どころもある程度隠せているように見えます。そういった意味では、投げミスをしなければ痛打は浴び難いかもしれません。

 
腕は振れていて投げ終わったあと身体に絡んできていますし、打者としては吊られやすいかも。ボールにも適度に体重を乗せてから投げられているので、もう少しウェートが付けば、打者の手元までの球威や勢いも増してきそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、どれも大きな欠点は見当たりません。さらに、もっと粘りを追求して行ければ、より嫌らしいフォームになって行けそうです。
高めに浮きやすいのは気になりますが、故障のリスクも少なそう。将来的に武器になるほどの変化球の修得も期待きで、かなり実戦的なフォームだと評価できます。


(最後に)

 現状の投球は、育成指名相応の内容だったと思います。しかし、フォーム分析をしてみると、なかなか興味深いメカニズムの選手。これに、ストレートに磨きがかかってくると、制球力や変化球、元々の投球センスもある選手だけに面白いのではないかと感じます。本当は、社会人あたりに進んでそこを引き上げてからでもプロ入りは遅くなかったようにも思えますが、プロの育成力と本人の努力に期待して、数年後の才能開花を待ちたいところです。そういった意味では今後に期待を持たしますが、現時点では「旬」ではないと判断して 
(支配下級)の評価はしません。しかし、2~3年後にどうなっているのか密かに期待して見守りたい選手でした。


(2024年 大学選手権)