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粂 直輝(24歳・東芝) 投手 179/75 右/右 (明秀日立-帝京大出身)
 




 「平良みたいだな」





 平良といっても、平良海馬(西武)ではなく、DeNAの平良拳太郎 のように、ボールのキレと微妙なコースの出し入れで勝負するタイプのサイドハンデある 粂 直輝 。 大卒2年目にして、今や東芝のエース格に成長した。


(投球内容)

 
ゲームメイクできる先発型のサイドハンド。昨秋の日本選手権でも、2試合に先発。今春のスポニチ大会でも先発で起用されていたが、意外に早い回で交代することが多い。

ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆ 3.0

 両コーナーを突く高い制球力を武器に、コンスタントに145キロ前後の真っ直ぐを投げ込んできます。適度な伸びと勢いが感じさせ、打者の空振りも誘えます。ただし、さほど球威があるタイプではないので、甘く入ると長打を浴びやすい傾向にはあるようです。

変化球 スライダー・シンカーなど ☆☆☆ 3.0

 右打者外角の微妙なゾーンで出し入れできる、小さく横滑りスライダー。それに左打者には、シンカー系の軽く沈む球とのコンビネーション。打者の空振りを誘うような大きな曲がりではないが、投げミスも少なく投球を支えている。

その他

 クィックは、0.95~1.05秒ぐらいと高速で、マウンドさばき、投球術ともに悪くない。ただし、イニングが進むにつれ慣れられてしまうので、プロを想定すると長いイニングを任されるほど、投球にまだ奥行きは物足りない。

(投球のまとめ)

 プロでも先発が期待できるぐらいの資質はあるものの、そのためには、もう少し投球の幅を広げたい。現状は先発タイプのサイドハンドながら、今のままだとリリーフで使い勝手の良い投手に留まってしまうかもしれない。その辺が、シーズンの後半に向けてチェックしたいポイントにもなる。






(投球フォーム)

 足を曲げ伸ばしをしながら、セットポジションから足を引き上げる勢いや高さはある選手。軸足一本で立ったときには、膝がピンと伸びがちで余裕はないものの、高く引き上げた足によってバランス良く立てている。


<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 前に体を倒して投げるサイドスローなだけに、お尻はある程度一塁側に落とせているものの、結果的にはバッテリーライン上に落ちがちに。そういった意味では、腕の角度も相まって、カーブやフォークといった球種には適さないフォームです。

 それでも「着地」までの粘りは適度に作れており、体を捻り出す時間はそれなり。武器になるほどの大きな曲がりの変化を身につけられるかは微妙でも、キレのある変化球で投球の幅を広げてゆくことは期待できます。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しています。一方、膝小僧が地面に着くほど重心が沈んでしまっており、返って浮き上がろうとする力を充分には抑え込めていないように見えます。そのため、低めに丹念にといった球筋ではないような。「球持ち」も良く指先の感覚も良さそうで、
両サイド中心に微妙なコントロールはつきますが。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 サイドだけに体を捻り出すスペースを充分確保できず窮屈になるのは致し方ないが、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種は投げないので、そこまで肘への負担にナーバスになる必要は無さそう。

 腕の送り出しにも無理は感じられず、肩への負担も少なそう。けして力投派でもないので、疲労もそこまで溜めやすくはないのではないのだろうか。あとは、サイド故に思わぬところに負担がかかってしまうという恐れはありそうだが。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは適度に作れており、特にタイミングが合われやすいということは無さそう。ただし、
ボールの出どころは少し早いので、コースを突いた球が打ち返されたり、ボールになる球が振ってもらえない、そういった危険性は感じられる。

 「球持ち」は良く、投げ終わった後は腕が体に絡んでくる粘っこさは感じられる。重心が深く沈み過ぎていて、
前にしっかり体重が乗って来るといったフォームではない。そのため、腕や上体でキレを生み出すしかなくなり、球威のある球は投げ難い。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「開き」と「体重移動」に課題を残します。制球を司る動作では、足の甲の抑えが使えず、高めに球が浮きやすいこと。故障のリスクは特に高くないものの、サイド特有の負担は考えられます。そして、投球の幅を広げることは期待できますが、武器になるほどの大きな曲がりの変化球は修得し難いフォームであるように思えます。


(最後に)

 サイドの人材が乏しい球団であれば、中位(3位~5位)ゾーンでは面白いかもしれません。ただし、
ストライクのゾーン内で押せるほどのボールの力が、今のNPBの一軍打者相手だとどうなのかと? という不安があります。そうなると、どうしても交わして交わしてという汲々の投球に陥りやすく、そのへんで苦労するかもという心配はあります。完成度は高い投手ですが、プロ入りしても、本当の意味でNPBに順応するには、数年必要なタイプなのかもしれません。投球のベースはできているので、ゾーン内で勝負できる真っ直ぐを身につけられれば、貴重な存在になりうるとみています。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2023年 スポニチ大会)