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宮澤 太成(24歳・徳島IS)投手 185/95 右/右 (長野-北海道大在学中)





「リリースが強い」 





 リリース時にグッと力を凝縮して投げる真っすぐは、多くのNPB選出した徳島インディゴソックスの中でも、NO.1ではないかと思われる 宮澤 太成 。 ただし、制球力など不安要素も多く抱えた、まさに素材型といった投手だった。


(投球内容)

 現在も名門・北海道大に在学中のまま、四国アイランドリーグに籍を置いていた。今シーズンのリーグ戦の成績は、
19回1/3 19安 12四死 21三 防 5.12 。数字的には、けして即戦力とは言えなそうだ。

ストレート 常時140キロ台後半~155キロ 
☆☆☆☆ 4.0

 上記にも記したように、インパクト溢れるボールの威力は、今年のドラフト指名選手の中で屈指のものがあった。ただ、その迫力の割には、
投球回数と同じぐらいヒットを打たれているところが気になる。それ以上に、マウンドで力みまくって、ストライクゾーンの枠の中に収まらないボールが多い制球力。19回1/3イニングで12四死球ということで、四死球率は62.1%であり、実際の投球を観ていても許容範囲を越えてくる。

変化球 フォーク 
☆☆☆★ 3.5

 真っ直ぐの勢いがあるので、高速で沈むフォークも有効。ただしまだ、その精度としては発展途上。これが、もう少し自在に操られるレベルになれば、この二つの球種だけでも、抑えられるようになるかもしれない。現状の精度でも、19回1/3イニングで21奪三振と、投球回数を越えている。あとは、フォークが変に指にかかっただけなのか? スライダーのような球も、あるような気がするが定かではない。

その他

 牽制は適度に鋭く、走者に対する目配せ等もできている。クィックも、1.0~1.1秒 ぐらいとまずまず。フィールディングの動きもまずまずで、
ガンガンと力でねじ伏せてくるわかりやすいタイプ。ただし、力んで投げてしまうことが多く、制球がとちらかっている。この部分を、いかに改善できるかではないのだろうか。


(投球のまとめ)

 ボールの勢い・迫力には素晴らしい一方で、制球に大きな難があり、変化球もまだ発展途上のフォークがあるぐらい。また、これだけのボールがありながら、意外に被安打が多いのも気になる材料だ。ある意味、
究極のロマン枠 といった素材であり、何処まで使えるように仕立てられるか注視される。かつて西武に在籍していた、中塚 駿太(白鴎大出身)を彷彿とさせる。





(投球フォーム)

 今後改善可能なレベルなのかどうか? フォームを分析して考えてみたい。ワインドアップから振りかぶり、足を引き上げる勢いは並だが、比較的高い位置まで上げてくる。軸足一本で立った時には、膝が伸びがち。それでも高く引き上げた足も相まって、バランス的にはとれている。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足をピンと伸ばさないで重心を下げて来るので、お尻の一塁側への落としには甘さを残します。そのため、体を捻り出すスペースが充分ではなく、カーブやフォークなどを投げられなくはないものの、曲がりが鈍くなってしまう恐れはあります。

 また、「着地」までの地面の捉えが早いので、体を捻り出す時間が充分ではありません。こうなると、カーブやフォークだけでなく、それ以外の変化球の曲がりにも影響します。球種を増やすとするならば、現状はカットやツーシームなど、球速のある変化が中心になるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで、なんとか体の近くにはあるように見えます。しかし、全身を激しく振って投げるので、
グラブの抱えだけでは軸のブレを抑えることができない感じです。そのためか? ただ、ストライクゾーンの枠の中めがけて、投げ込んでいるだけといった投球になります。

 足の甲での地面を捉えているように見えるものの、
「球持ち」が浅くリリースでボールが押し込めていないので、ボールが上吊ったり抜けてしまうことも少なくありません。高低・左右 でも投げミスが生じやすく、被安打が多い理由になっているのかもしれません。

<故障のリスク> 
☆☆ 2.0

 お尻の落としに甘さがあるものの、カーブやフォークが投げられないほど窮屈さは感じません。この点は、そこまで気にしなくても良さそうです。むしろ、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がる腕の送り出しに、
肩への負担を感じます。また、尋常ではない力の入れようで投げ込んでくるので、疲労も溜めやすいのではないのでしょうか?

<実戦的な術> 
☆☆ 2.0

 「着地」までの粘りが乏しく、打者としては イチ・ニ・サン のタイミングで図りやすい。その上、ボールの出どころも早く見えてきているので、打者としては予測がしやすく、甘くない球まで打ち返しやすい。このへんは、これだけのボールがありながら、被安打が多い理由になっているのではないのだろおうか。

 腕は強く振れているものの、「開き」が早いことで、打者としては吊られ難くなってしまっている。ボールにも体重が乗り切る前にリリースを迎えており、それでもこれだけのボールが投げられているのだから、上手くこの辺ができるようになると、160キロを越えられるようになるのかもしれない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
全ての動作に課題を残します。逆にそれでも、これだけのボールが投げられているのは脅威です。制球を司る動作・故障のリスク・投球の幅を広げて行けるのかといったいずれの部分でも、現状は厳しいと言わざるえないでしょう。フォーム的には極めてリスキーですが、旧帝大在籍の頭脳でどう向き合って行くのか大変興味深いものがあります。


(最後に)

 
リリースの強い真っ直ぐの迫力には、本当に素晴らしいものがあります。これだけの素材型を、あえて本会議で指名した西武の英断にも興味深いものがあります。ある意味、素材的なぶっ飛びかたは、今年の候補の中でも一番ではないかと。ただし、多くの課題を修正する中で、こういった良い意味での持ち味が損なわれないか心配です。ちょっと (支配下級)の評価を付けるのは難しいのですが、彼を育てられたら、また一つ日本の野球界は、ワンランク上のステージに到達した。そう、評して良さそうなぐらいの出来事になりそうです。


(2023年 アイランドリーグ戦)