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高島 泰都(23歳・王子) 投手 180/77 右/右 (滝川二-明治大準硬式)
 




「悪くはない」




 明治大の準硬式出身の選手ながら、社会人2年目にして、名門の 王子 において主戦投手に成長した 高島 泰都 。チームのエースとして、安定した投球を魅せている。ただし、プロ入りを目指すのであれば、何かもう一つ売りが欲しい気もする。


(投球内容)

 右投げのスリークォーターで、今年のここまでの公式戦では 
33回2/3 36安 7四死 25三振 防 2.67 といった成績を残している。


ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆ 3.0

 適度なキレと勢いがある、140キロ台中盤の真っ直ぐを投げ込んできます。スポニチ大会で見た時は、
要所では低めやコースに集めて粘り強く投げる投手との印象がありました。しかし、静岡大会の模様を観ると、全体的に高めに甘く入った球を打たれるケースが目立ちました。スリークォーター系で、左打者を中心に合わされやすいのかもしれません。そのへんが、今シーズン投球回数よりも被安打が多い要因かもしれません。そういった意味では、力で圧倒できる、そういった球威がないのは少し気になります。

変化球 チェンジアップ・カーブ・スライダー・カットなど ☆☆☆★ 3.5

 投球の多くは、
真っ直ぐとチェンジアップ(シンカー)系の球とのコンビネーションで占めます。その他には、緩いカーブ・スライダーやカット系の球、あるいはもっと落差のあるフォーク系の球も投げているかもしれません。こういった球を織り交ぜ、相手の打ち損じを誘うのが持ち味です。球種は多彩ですが、空振りを誘うような絶対的な球種はありません。

その他

 牽制は軽くマウンドを外すようなものしか見られませんでしたが、ボールをじっくり持つなどそういった投球術は持ち合わせています。クィックは、1.0~1.1秒ぐらいとまずまずで、フィールディングの動きも悪くありませんでした。

(投球のまとめ)

 準硬式出身の選手ですが、ボールの力で圧倒するというよりも、粘っこく打たれながらも試合を作るタイプの好投手といった印象を受けます。ただし、絶対的ボールがないので、レベルの上がるプロの打者相手に、同様のピッチングができるのか?といった部分では不安がよぎります。






(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から今後の可能性について考えてみます。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足一本で立ったときには、膝が真っ直ぐ伸び切ることなく力みなく立てています。また、バランスも適度に保って立てていました。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばしているので、お尻の一塁側への落としは甘くなりがち。それでもフォーム後半にかけては、お尻が一塁側に沈んでくるので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種を投げられないことはありません。

 「着地」までの地面の捉えはそれなりで、適度に体を捻り出す時間は確保。武器になるほどの変化の大きな球を修得できるかは微妙ですが、多彩な球種を投げられる器用さはありそうです。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くに抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいかと。ただし、
足の甲での地面への捉えが地面から離れてしまい、浮き上がろうとする力を抑え込めていません。したがって力を入れて投げると、ボールも高めに浮きやすいのかもしれません。

 それでも「球持ち」は悪く無さそうで、指先の感覚もそれなり。ボールをある程度、制御できる能力はあるように感じました。そのへんは、33回2/3イニングで7四死球と、四死球率が、20.8%と少なめなのにも現れています。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 4.0

 お尻の落としに甘さは残しますが、カーブやフォークを投げても、それほど負担は大きくないのでは? まして頻度も今ぐらいであれば、ナーバスになるほどではないように思えます。

 腕の送り出しにも、さほど無理は感じられません。ただし、少し腕が外旋してブンと投げ気味で、その点では負担はかかっている恐れはあります。それでも力投派でもないので、故障のリスクは高くないとみています。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは悪くないものの、
ボールの出どころは早く見やすい印象がある。したがってコースを突いた球でも打ち返されたり、縦の変化などを振ってもらえない恐れがあります。

 腕は適度に体に絡んでくるなど粘っこさはあるものの、足の甲が地面から浮いたりして下半身のエネルギー伝達が最後まで伝わってこない。こうなると腕や上半身の振りでキレを生み出すしかなくなる。したがってウエートの乗った球威のある球は投じ難い。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「開き」と「体重移動」に課題を残している。制球は悪くないものの、高めに甘く浮きやすい。故障のリスクは低めだが、将来的に空振りを誘うような変化球を修得できるかは微妙。チェンジアップなどのシュート系を駆使して、いかに相手の打ち損じを誘う投球を極めるかなのかもしれない。


(最後に)

 試合を壊さないだけの、要所では踏ん張れるマインド・技術を持っています。そういった意味では、プロでも全く使えないということはイメージし難いのですが、大卒社会人という年齢で獲得するほど魅力があるのかは微妙。それだけに指名を決定づけるには、
大舞台でのアピールは欠かせないように思います。私自身もまだ半信半疑なところがあり、都市対抗などをみて最終的な評価を下したいところです。


蔵の評価:
追跡級!


(2023年 静岡大会)