23sp-15
藤田 淳平(23歳・徳島IS)投手 182/80 左/左 (川島-東亜大出身) | |
四国アイランドリーグと、数多くの交流戦を行っているソフトバンク。その球団が指名したのは、藤田 淳平 という、実戦派のサウスポーだった。とかく球速が話題になりがちな徳島のチームの中でも、左腕とはいえ地味な存在ではなかったのだろうか。 (投球内容) 東亜大から入団した1年目の成績は、19試合 5勝3敗 65回2/3 48安 21四死 75三 防 1.51 の好成績で、最優秀防御率に輝いている。派手さはないが、ゲームメイクできるまとまった左腕といった印象が強い。 ストレート 常時140キロ前後~140キロ台中盤 ☆☆☆ 3.0 ボール自体の球威・球速は、ドラフト指名される左腕としてはやや劣るぐらい。ストレートは力を入れて投げると多少暴れる傾向はあるものの、ポンポンとストライクを先行させ、自分の有利な状況を作るのが上手い印象がある。そのことは、65回2/3イニングで、四死球21個。四死球率は、32.0% と、基準である投球回数の1/3以下に抑えていることからも伺われる。また被安打率も、73.1% ということで、投げミスも比較的少ないことが伺われる。 変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆ 3.0 変化球は、スライダーとのコンビネーション中心で、余裕が出てくるとカーブを織り交ぜたり、フォークのような縦の変化も見られる。逆に、チェンジアップ系のような球はほとんど観られない。絶対的な威力はないものの、変化球も投げミスが少ない。ちなみに奪三振は、投球回数を上回っており、見た目の印象よりも要所では三振が奪えているようだ。 その他 牽制左腕らしく鋭いものがあり、クィックも1.10秒~1.15秒とそれなり。フィールディングのなどの動きや反応も悪くなく、特にテンポを早くして、相手に考えさせない投球を心がけているようだ。 (投球のまとめ) 特に絶対的なボールがあるわけではないのだが、安定した制球力やマウンドさばきの良さで、試合を作れるまとまりが持ち味。ストライク先行で有利な状況を作り、テンポの良さで相手に考え時間を与えない。ボール自体はNPBレベルではやや劣るものの、総合力で勝負するタイプなのだろう。今後上積みに期待するというよりも、かなり完成度が高いだけに、早めに結果を残して欲しいタイプではないのだろうか。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から、今後の可能性について考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さがあります。先発タイプに見えますが、フォームの入りはリリーフタイプに感じます。軸足一本で立った時に膝がピンと伸びがちですが、全体にはバランスを保って立てていました。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 お尻は比較的三塁側(左投手の場合は)に落ちているので、カーブやフォークといった球を投げるのに無理は感じられません。ただし、「着地」までの地面の捉えが早いので、体を捻りだす時間は短めです。したがって曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げて行くことになるかもしれません。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブの抱えは最後は体から離れがちで、外に逃げようとする遠心力を充分に抑え込めているかは微妙です。それでも、実際の投球では両サイドに散っているので、そこまで気にすることは無さそうです。 しかし、足の甲での地面の捉えが浮いてしまっていて、浮き上がろうとする力を抑え込めていません。そのため、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい傾向にあります。その辺を「球持ち」の良さを活かして、指先で修正できているところが、制球が破綻しない理由なのかもしれません。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻の落としも悪くはないので、カーブやフォークを投げても窮屈になることは無さそう。普段の投球もスライダーが中心なので、肘への負担などは気にしなくても良さそうです。 腕の送り出しを観ていても、肩に負担がかかっている感じはしません。けして力投派でもないので、疲労を溜めやすいことも無さそうです。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りがないので、イチ・ニ・サンでタイミングが合いやすいはずですが、ボールの出どころは隠せているので、タイミングをとりはじめることが難しい可能性があります。 腕は強く振れていて、ボールの出どころも隠せているので、打者としては勢いで吊られやすいのかと。その辺が、奪三振の多さに繋がっている理由かもしれません。その一方で、投げ終わったあと三塁側に重心が流れてしまうので、リリースまで力を伝えきれずロスしてしまっている恐れがあります。この辺が改善されてくると、打者の手元までもっと活きた球が投げられるのではないのでしょうか。 (フォームのまとめ) フォームの4動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」と「体重移動」に課題を残します。この辺が改善されると、武器になる変化球の習得や、真っ直ぐの勢いも変わってくるのではないかと。故障のリスクが少ないことが優れた点ですが、足の甲の押し付けが浮いてしまっているので、ボールが上吊りやすいこと。現状は、武器になるような球を見出し難いフォームなので、そのへんが伸び悩む不安要素としてあげられます。良い部分と悪い部分が混在するので、どちらの部分が全面に出てくるかでも変わってきそうです。 (最後に) 一見完成度の高そうな投手に見えますが、「着地」までの粘りや「体重移動」の部分は改善できる余地が残されています。この辺がを変えることができると、元々持っている制球力やマウンドさばきの良さに、力が強さが加わってくる可能性があります。そういったことができるかどうかが鍵になるのではないのでしょうか。残念ながら現時点では、そこまで垢抜けたものは感じないので、☆(支配下級)の評価は下すことができませんでした。プロ入り後の、さらなる進化を期待してやみません。 (2023年 アイランドリーグ戦) |