23sp-12
石黒 佑弥(22歳・JR西日本)投手 180/82 右/右 (星城出身) | |
150キロ前後の真っ直ぐを投げ込みながら、外角一杯のコースにボールを集めることができる 石黒 佑弥 。けして、単なるボールの勢いだけでねじ伏せに行くような粗っぽいタイプではなかった。 (投球内容) 非常にオーソドックスなフォームから投げ込む正統派で、それでいて150キロ前後の真っ直ぐを投げ込んでくるという速球派。23年度の直近の 10試合では、55回 35安 11四死 51三 防 1.31 と、そのほとんどが先発で登板している。 ストレート 常時140キロ台中盤~150キロ台前半 ☆☆☆☆ 4.0 真っ直ぐの球速やボールの勢いは、プロの一軍を意識すると、そこまで圧倒的な感じはしない。しかし、上記で記したように、右打者の外角一杯にボールを集めることができており、その精度の高さに優れている。左打者にも外角中心に集めるのだが、若干ボールは抜け気味で決まらないことも多い。 変化球 スライダー・フォークなど ☆☆☆ 3.0 最大の武器は、右打者外角のストライクゾーンからボールゾーンに逃げて行く、横滑りするスライダーにある。一方で左打者には、フォークのような沈む球を使ってくる。まだこの球の精度や割合がさほど多くなく、今後さらに磨かれて来ると、左打者への投球にも余裕が出てきそうだ。 その他 牽制やフィールディングに関してはよくわからなかったが、ランナーがいても落ち着いて投げられており、クィックも1.0秒前後と高速。そういったマウンドさばきは安定しており、ピンチでも自分の力を発揮できる強いマインドの持ち主だった。 (投球のまとめ) この投手は、好投手タイプが素直に球速アップしてきた感じなので、投球自体が荒れ荒れではなくしっかりしている。そのため、投球術や制球力も安定しており、安心して観ていられるタイプ。村上 頌樹(東洋大)の成功もあって、派手さはなくてもオーソドックスな実戦な土台をもった投手を伸ばしてゆこうという意志が感じられる指名だった。 (投球フォーム) それでは、投球フォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。セットポジションから、足をスッと高い位置まで引き上げて来る。軸足一本で立ったときには、膝がピンと伸びがちで力みは感じられる立ち方。それでも、高く引き上げた足でうまくバランスを保ち立つことができている。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻の一塁側への落としは甘め。そういった意味では、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種にはあまり適さない(投げられないことはないと思うが、変化は鈍くなりやすい)。 「着地」までの地面の捉えはそこそこで、体を捻り出す時間という意味では並ぐらいだろうか。そのため曲がりの大きな変化球で空振りをというよりも、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げて行くタイプになるのではないのだろうか。 <ボールの支配> ☆☆☆☆ 4.0 グラブの抱えは体の近くにあり、フォーム全体が縦推進なので、軸はブレ難い。したがって、両サイドへの投げミスは比較的少ないと考えられる。足の甲での地面の捉えもできており、浮き上がろうとする力も抑えられている。力を入れて投げても、ボールは高めに集まり難い。ただし、試合を見ている限り、左打者の外角には高めに、そして抜け球も少なくない。 「球持ち」もまずまずで、指先の感覚も悪く無さそう。そういった意味では、かなり繊細なコントロールを身につけられる可能性は高いのではないのだろうか。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻の落としに甘さは残すものの、今ぐらいの頻度でのカーブやフォークの使い方ならば、それほど気にしなくても良さそう。ただし、今後フォークの割合が増えてきたときには、肘などへの負担はより注意した方が良さそうだ。 腕の送り出しを見ていても、肩への負担は少なそう。けして力投派でもないので、そこまで疲労を溜めて、フォームのバランスを崩すといったことも無さそうには見える。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころはある程度は隠せている。特に打者から嫌がられるほどのフォームではないが、投げミスをしなければ痛打は浴び難いのではないのだろうか。 素晴らしいのは、腕の振りの良さ。投げ終わったあとは、しっかり体に絡むほどに叩けている。したがって打者としては、思わず吊られてしまいがち。さらに、ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできており、打者の手元まで生きた球が投げられている。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」と「体重移動」に優れている。さらに「着地」や「開き」が粘れて来ると、打者としては厄介だろう。制球を司る動作に優れ、故障のリスクも低そうなフォーム。あとは、いかにして武器となる変化球を見出して行けるかが鍵になってきそうだ。 (最後に) それほどスケールで魅了するタイプではないので、プロではリリーフの方が持ち味が出そうといった風にみる向きも多いのでは? ただし、村上もそういったタイプでありながら、技術を磨き総合力を引き上げることで、元来の投手としてのセンスの良さを、プロでも発揮できるようになった。そういった意味では、かなり 村上 の成功例があっても指名だったのではないのだろうか? 育成力のある阪神であれば、彼をローテーション投手に育てて行けるかもしれない。1年目から、それなりに一軍に絡めて行ける、あるいは二軍の中心投手となれる土台はすでにあるように思える。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2023年 都市対抗) |