23ky-3


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堀  柊那(報徳学園3年)捕手 179/76 右/右 
 




「スケールより実戦派」





 スケールで魅了するというよりは、実戦的なプレーが光る 堀  柊那 。しかし、この春は、まだまだ未完成の部分も露呈した。そんな、秋には気が付かなかった彼の現状について考えてみた。


(ディフェンス面)

 投手や周りに指示しながら、試合を作って行ける捕手。フットワークも身軽で、ワンバウンド処理などにも機敏に反応。キャッチングにも大きな欠点はなく、以前ほどミットの出し方にも違和感が無くなってきた。

 結構内角を突いてきたりとか、相手が打てないと判断すると、その球を続けてゆくような割り切ったリードができる選手でもあります。ただし、投手の気持ちを察するとか、ちょっとした変化に気がつくとか、そういった
キメの細かさがあるのかと言われると、その点は微妙な印象は受けました。

 ハマったときには、
塁間1.7秒台で到達するような、抜群のスローイングを魅せます。ただし、そういった地肩の強さはプロに混ぜても一級品なのですが、結構捕ってから投げ急いで制球を乱す場面も少なくありませんでした。しっかり型を作って投げるというよりも、捕ってからの素早さと地肩の強さに頼っており、精度という意味では改善の余地が残されているように感じます。

 それでも、高校生でこれだけのディフェンス力を誇る捕手は稀なので、全国でも屈指のものがあるのは間違いありません。守りに関しては、A級の素材だと評価できます。





(打撃内容)

 チームの3番を担う選手ですが、
長打で魅了するタイプではありません。それでも決勝まで進んだ選抜では、打率.400厘のハイアベレージを残しました。そういったレベルの高い相手でも、きっちり自分の役割を果たせるだけの打力は持っています。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 普段から右方向を強く意識しているのか? クローズドスタンスで、足のカカトを浮かせて構えます。グリップの高さは平均的で、適度に腰を沈めつつも、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしては癖のある形にはなっています。

<仕掛け> 遅め

 投手の重心が沈みきって、前に移動する段階で動き出す「遅めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、極力ボールを手元まで引き付けて長く見るタイプで、生粋のスラッガーか二番打者に多くみられる始動のタイミングです。彼の場合、本質的には二番タイプの打者といった感じがします。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を少しだけ浮かせて、ベース側に踏み込んできます。始動~着地までの「間」は短いので、それだけ狙い球を絞って、その球を逃さないで叩く「鋭さ」が求められます。ベース側に踏み出すことからも、外角への意識が強いタイプだと考えられます。

 踏み込んだ前の足は、しっかり止まって動きません。そのため、逃げてゆく球や低めの球に対しては、食らいついたり右方向へきっちり打ち返すことができます。
右方向への打撃こそ、この選手の真骨頂といえるのではないのでしょうか。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」の形を作るまでは自然体で、力みなくボールを呼び込めています。バットの振り出しは、けしてインサイドアウトに出てくるわけではありません。しかし、外角の球を捉えるときには、それほどロスも感じられませんし、バットの先端であるヘッドが下がらないので、広い面でボールを捉えていてます。したがって、フェアゾーンにボールが飛びやすいのではないのでしょうか。

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さいものの、頭の動きは並ぐらいか。それでも体の開きは我慢できていますし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定していました。調子の波は、少ないタイプなのではないのでしょうか。

(打撃のまとめ)

 けして長打で魅了するタイプではないのですが、自分の役割をきっちりこなすだけの技術と能力は持っています。また打球は強く、打球こそ上がりませんが、
ひ弱なタイプではありません。打てるポイントが限られているため、それを広げて行けるればといった感じはします。それでも、捕手というポジションであることを考えれば、プロへの基準は満たしていると考えられます。


(最後に)

 打撃はA級の素材ではありませんが、捕手というポジションであることを考えれば合格レベル打力はあると考えます。ただし、世代屈指の打力を誇る捕手だった 松川 虎生(ロッテ)や 松尾 汐恩(DeNA)などに比べると、打撃が大きなアドバンテージになるといった感じではありません。そのため、1位の12名に入るのか? と言われると、ややパンチ不足の印象は否めません。そういった意味では、どうしても捕手が欲しいといった球団が現れるかで、その順位も変わってくるのではないのでしょうか。春の時点では、1位の12名に入るといったインパクトまでは受けませんでした。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2023年 選抜大会)









 堀 柊那(報徳学園2年)捕手 179/77 右/右





 「捕手らしい捕手」





 23年度を代表する捕手と言われる 堀 柊那 。最近は、他のポジションからコンバートされたポテンシャルの高さが自慢のキャッチャーが多いなか、久々に捕手らしい捕手の上位候補だと感じさせる選手に出会った気がする。


(ディフェンス面)

 体を使ってジェスチャーを交えながら、投手と対話してゲーム作ってゆくタイプ。ミットを示しそこから下げませんし、ワンバウンド処理にも機敏に対応できるフットワークの素軽さもあります。キャッチング自体も丁寧ですが、時々ミットの出し方が違って反応が遅れることはあるものの、合格点の動きではないかと感じられます。

 リードに関しては、相手が打てないと思うと同じ球を続けられる勇気を持っています。どうしてもバッテリーという生き物は、同じボールを続けると打たれるのではないかと散らしたがるものですが、そういった意味では肝が据わった選手だなと感じます。最大の売りは、捕ってから流れの良い 1.8秒台前後の送球にあります。ベースの前で勢いが衰えることもありませんし、コントロールもまずまず安定しています。全国的に観ても、彼を上回るような送球の選手は今年出て来ないかもしれません。肉体の資質に奢ることなく、しっかり考えて動ける選手という意味では、非常に稀少価値が高い。それでいて雑なところもなく、投手と一緒に試合を作ってゆこうという姿勢にも好感が持てます。ディフェンスに関しては、A級の素材ではないのでしょうか。


(打撃内容)

 2年生の大会では、全ての大会で安定した成績を残しました。長打で魅了するというタイプではなく、対応力の高さが自慢の好打者タイプではないかと感じます。

<構え> ☆☆☆ 3.0

 両足を揃えたスクエアスタンスで、前の足のカカトを浮かせて構えます。グリップの高さは平均的で、腰の据わり・両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスと並ぐらいでしょうか。

<仕掛け> 平均

 投手の重心が沈みきった底のあたりから動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離打者や勝負強さを売りにするポイントゲッターに多くみられる始動のタイミングです。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足を少しだけ浮かし、地面をなぞるようにしながら真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたタイプかと。

 真っ直ぐ踏み出した足元は、インパクトの際にもブレません。そのため逃げてゆく球や低めの球に食らいつくことができ、引っ張りだけでなく右方向にもキッチリ打ち返すことができています。

<リストワーク> ☆☆☆★ 3.5

 打撃の準備である「トップ」を作るのは早めにできており、速い球に立ち遅れません。むしろリストワークに遊びがない分、柔軟性に欠ける印象を受けます。「トップ」も浅いせいなのか? 当てることはできるものの、強く鋭いスイングという意味では、ちょっと物足りません。

 バットの振り出しも、上から振り下ろすインサイドアウトのスイング軌道。引っ張る時は全然それでも良いのですが、木製バットでプロレベルの球威・球速のある球を打ち返すには、もう少し遠心力を生かしたスイングじゃないとはじき返せないかもしれません。そういった意味では、ミート力は感じますがプロ仕様のスイングといった感じはしてきません

<軸> ☆☆☆★ 3.5

 足の上げ下げが小さい割には、目線はそれなりに動いている感じがします。体の開きは我慢でき、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定しています。好不調の波は、少ないタイプなのかもしれません。まだ軸足の内モモの筋肉に強さが感じられないので、スイング自体にはまだひ弱さが感じられます。

(打撃のまとめ)

 当て勘を含めて、ミートに徹したスイングで対応力は悪くありません。その一方で、木製バットでプロの球の強い外角球を打ち返すという意味では、どうなのかな? という不安は感じます。その辺を、プロで一から見直さないと行けない恐れもあります。ただし、捕手というポジションだけに、最低限の打力が伴っていればという気もしなくはありませんが。


(最後に)

 対応力に関しては、ハイレベルな近畿の中でも上位の内容を示しています。しかし、昨年の 松尾 汐恩(大阪桐蔭-DeNA)のような、長打を含めた打撃のスケール感は感じられません。その一方で、捕手らしさは適正という意味では同時期の松尾とは比較にならないぐらい堀の方が適性が高いとも言えます。

 プロで「打てる捕手」としてアピールできるかは別にして、最低限打てて、しっかり守れるということに重きを置く球団であれば、魅力が感じられる素材ではないのでしょうか。ただし、打撃でのスケール感を考えると、上位指名候補かと言われると微妙な印象は持っています。今のところ、3位前後ぐらいの素材ではないかという感じで観ていますが、最終学年でのプレーぶりが注目されます。


(2022年 秋季近畿大会)