23ky-29
中澤 恒貴(八戸学院光星3年)遊撃 178/80 右/右 | |
まだまだ攻守に粗い部分はあるが、独特の感性を感じさせる 中沢 恒貴 。高校の先輩である 坂本 勇人 のように、桁外れの実績をプロで残すような選手になって行くかもしれない。そんな、予感めいをものを感じさせてくれるプレーヤーなのだ。 走塁面:☆☆☆ 3.0 一塁到達タイムは、右打席から 4.3秒前後。これを左打者に換算すると、4.05秒前後とプロの基準レベルを満たすタイムを記録する。ただし、プレースタイルを見る限りは、積極的に足を絡めて来るタイプでは無さそう。走塁への意識が高まれば変わって来る可能性もあるが、現状は走塁での貢献は高くなさそうだ。 守備面:☆☆☆★ 3.5 甲子園では、プロのショートとしては厳しいかもと感じました。しかし、青森大会などを見ていると、打球への一歩目の反応が鋭く、球際で強いプレーを魅せます。何より驚いたのが、逆シングルの深いところからでの送球でも、ノーバウンドで一塁に投げてアウトにするなど、地肩の強そうは相当なもの。フットワーク、キャッチングなどはそこまで垢ぬけていませんが、そういった地肩の強さが、想像以上に送球の安定感を生むのかもしれません。プロで鍛えれば、ショートとしてもモノになる可能性もあるのではと。またダメでも、二塁・三塁あたりでは勝負して行ける、そういった可能性は感じます。 走塁も守備も、現時点ではそこまでレベルが高いとは言えません。しかし、鍛えようや意識の持ち方次第では、持っている素材自体は悪くないので、まだまだレベルアップが期待できる余力を感じます。 (打撃内容) 夏の甲子園では、3試合で12打数2安打と、さほど自慢の打撃ではアピールできず。しかし、青森大会では、2本 8点 打率.381厘と、「強打の遊撃手」の片鱗を魅せてくれていました。 <構え> ☆☆★ 2.5 前の足を軽く引いて、グリップを高めに、あらじめ捕手側に添えて構えます。腰のすわりは浅く、両目での前の見据え方や全体のバランスとしても、癖が強く良い構えといった感じはしません。それでもいつも言うように、構えは本人が最もしっくりくることが大事なので、本人が良い感じならば、それほど気にする必要は無いと考えます。 <仕掛け> 早め 投手の重心が下がり始める時には動き出す、「早めの仕掛け」を採用。この仕掛けは、対応力を重視したアベレージヒッターに多くみられる始動のタイミングです。彼の場合、独特の「間」を作れており、そこに打撃の感性を感じさせます。こういったものは、なかなか教えてどうこうできるものではありません。 <足の運び> ☆☆☆ 3.0 足を引き上げて回し込み、真っ直ぐ踏み出してきます。始動~着地までの「間」は取れており、速球でも変化球でもスピードの変化には幅広く対応。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたタイプといった感じでしょうか。 踏み込んだ前の足が、地面から離れるのが早いタイプ。そのため引っ張って巻き込めた時は良いのですが、逃げて行く球や低めの球にはどうなのか? といった疑問は残ります。それでもセンターから右方向への打球も多く、恐らく高めの球ならば、上手く払うようにさばくことができているのではないのでしょうか。 <リストワーク> ☆☆☆★ 3.5 打撃準備である「トップ」は、あらかじめグリップを引いている割に、そこからさらに引いて来るので自然体といった感じです。リストワークが固くなることはなく良いのですが、速い球に立ち遅れないように注意したいところ。 バットの振り出しは、けしてインサイドアウトに出てくるタイプではないものの、ヘッドが下がらないので、そこまで大回りにはなっていません。スイングの孤も大きく、フォロースルーを活かして打球が伸びてゆくのも特徴ではないのでしょうか。このスイングにこそ、彼のスケールの大きさを実感させるものがあります。 <軸> ☆☆☆ 3.0 足の上げ下げはあるものの、目線の上下動はそれなり。体の開きが充分我慢できていませんが、軸足の形は安定しており、あまり突っ込まないところは良いところでしょう。ただし、バットが内から出てこないので、内角のさばきは窮屈に見えます。 (打撃のまとめ) いろいろと粗さを感じますが、教えてどうこうできない「間」を持っており、それをスイングの後ろの大きさとフォロースルーの効いたスイングが、大きく後押ししている。そういった部分に、高い将来性を感じさせる打者です。技術云々では語れない、独特のものを持っています。良い部分と悪い部分が同居しているので、どっちの面が前面に出てくるかで、その将来も大きく変わってきそうです。 (最後に) 打撃でも守備でも走塁でも、技術的には発展途上。しかし、今後の導き方と本人の意識次第では、どれも大きく伸びて行ける可能性を感じます。先輩の 坂本勇人 からも同じようなものを高校時代に感じましたが、あまりにまだ未完成すぎて、私はまだ「旬」ではないと当時は判断しました。しかし、彼は早くから才能を示し、あっという間にプロのトップクラスへと昇って行きました。 そういった意味では、この中澤選手にも、似た匂いを感じます。本人は比較されるのは嫌かもしれませんが、偉大な先輩の高校時代と比べても、遜色のないものを感じます。当時は掴みきれなかった先輩の才能を、後輩の彼からは感じます。果たして彼は、どのような選手に育って行くことでしょう。恐らくドラフトでは5位前後ぐらいの評価になるとは思いますが、プロで大化けしても不思議ではないとみています。個人的には、今年みた高校生ショートの中でも、最も心惹かれるものを持っています。必ずモノになるというよりも、モノになったときにはスケールの大きなリターンが見込める、そういった振れ幅の大きな素材だとみています。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2023年夏 青森大会) |