23ky-22





藤田 悠太郎(福岡大大濠3年) 捕手 170/72 右/右





「一番好み」 





 今年見た高校生捕手の中では、個人的には一番ピンと来たのが、この 藤田 悠太郎 だった。捕手らしい繊細なタイプといった感じではなかったが、テンポの好いボール回しにはセンスを感じさせ、やるべきことはしっかりできている捕手だった。


(ディフェンス面)

 投手の気持ちを汲み取ってとか、相手打者の微妙な変化に気がつくとか、そういったものは感じません。それでも、しっかりミットを投手に示し、
キャッチングのときにもブレずに捕球できます。そのため審判からも信頼を得やすくストライクのコールを導きやすいタイプかと。フットワークも機敏で、ワンバウンド処理には素早くミットを下から出して、体で止めに行けていました。

 何より素晴らしいのが、
捕ってからの素早さが素晴らしい送球の速さ。セカンドベース前でも、グ~ンとひと伸びする勢いもあります。まだ送球が逸れたり上吊ることもあるのですが、それても、走者の滑り込んでくる二塁手方向への球筋なので、タッチしやすいとも言えます。イニング間練習よりも、実戦の時に時折見せる凄みのある送球が光ります。それでも好い時には、1.85秒前後で投げ込める高い送球能力があります。そのためディフェンス面に関しては、充分に指名レベルにあると言えるのではないのでしょうか。





(打撃面)

 打っても、福岡大大濠の4番打者として君臨。右に左へと、鋭い打球を連発します。時にはスタンドインのパンチ力もありますが、長距離砲といった感じではありません。それでも最終学年での春季大会・福岡大会では、いずれも打率5割のハイアベレージを残し、攻守の重責を果たしました。

<構え> ☆☆☆☆ 4.0

 前の足を引いて、グリップは高めに添えます。背筋を伸ばしつつ、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスのとれた好い構えではないのでしょうか。

<仕掛け> 平均的

 投手の重心が下がりきったあたりで動き出す、「平均的な仕掛け」を採用。この仕掛けは、ある程度の確実性と長打力を兼ね備えた、中距離ヒッターや勝負強さを売りにするポイントゲッターに多くみられる始動のタイミングです。

<足の運び> ☆☆☆★ 3.5

 足をほとんど引き上げずに地面をなぞるようにして、ベースから離れた方向に踏み出すアウトステップを採用。始動~着地までの「間」はそこそこで、速球でも変化球でもスピードの変化にはそれなりに対応。アウトステップするように、内角への意識が強そうです。

 踏み込んだ前の足は、インパクトの際にも
しっかり爪先が閉じられていて動きません。そのためアウトステップでも、甘めの外角球や高めの球ならば、充分に対応できるのではないのでしょうか。

<リストワーク> ☆☆☆ 3.0

 
バットを引くのが少し遅れがちで、打撃の準備である「トップ」の形を作るのに立ち遅れないように注意したい。バットの振り出しも少し遠回りに出てくる感じでロスはあるものの、バットの先端であるヘッドまでは下がっていないので、そこまでドアスイングにはなっていない。

 
スイングの孤は大きく、フォロースルーも使えているので、想像以上に打球は遠くに運べるタイプかもしれない。右方向への打球でも、スタンドインさせるパンチ力があります。

<軸> ☆☆☆☆ 4.0

 足の上げ下げが静かなので、目線の上下動が少ない。体の開きも我慢できており、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定。それでいて、軸足は実に力強い。調子のムラが少なく、強烈な打球を放つことも期待できそうだ。

(打撃のまとめ)

 「トップ」を作るのが遅れがちだったり、スイング軌道に多少ロスは感じられる。そういった意味では、まだまだ
プロレベルの投手へのの順応には時間かかるかもしれないが、軸の安定感は素晴らしい。プロの捕手として求められるレベルには、すでに到達しているのではないのだろうか。


(最後に)

 攻守に圧倒的なポテンシャルがあるというよりは、動きの良さ・センスの良さなど、
実戦で良さが出るタイプではないのだろうか? 小柄な体格も相まって、それほどプロに混ぜるとスケールで圧倒するタイプでは無さそうだ。それでも攻守のバランスに優れており、志望届を出せば何かしらの形で指名されるとみている。個人的には、今年の高校生捕手の中では一番のイチオシの選手ではあるが、こと指名順位となると、下位~育成 あたりとなるのではないかとみている。それ以上に、お得感のある素材になるのではと期待している。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2023年夏 福岡大会)