23ky-1
佐々木 麟太郎(花巻東3年)一塁 183/117 右/左 | |
23年度のドラフト戦線は、なかなかこの時期まで誰が目玉なのか見えて来なかった。しかし、オフシーズンが最も目玉に近い男だと評してきた 佐々木 麟太郎。その彼が、先日行われた愛知県の招待試合で、2試合で4本のホームランを放ち、改めてこの男が今年の目玉であることを認識させられることとなった。 (守備・走塁面) 一塁までの到達タイムは、左打席から4.8秒ぐらいと極めて遅い。まぁ長打力が売りの選手なので、走力は眼をつむってもとは思わなくはないが、これは外野などをさすた時の守備範囲の広さも影響はしかねない。 一塁手としてのグラブさばきや判断力は、昨年に比べるとかなり上がってきたように思います。ただし、けして守備範囲の広い一塁手ではないように思えます。上記の理由から、将来的に外野手としては厳しいのではないかと。一塁以外の選択肢としてあるとすれば、レンジは狭そうなものの、グラブさばきから三塁手としての可能性は残ります。ファーストの送球を受け取ると、素早く二塁などに投げていたところをみると、現状送球への不安は抱えていないように見えた。ただし、最も長い距離を投げる、サードからの安定した送球ができるのかには、未知数の部分も多い。 (打撃内容) 愛知での4試合では、引っ張ってのホームランだけでなく、レフトやセンターへも破格の場外弾を放って魅せた。特に今までは、流しての長打というのが少なかっただけに、非常に内容のある一発だったと言えるであろう。それも、速球だけでなく変化球。内角だけでなく、外角の球も捉えて魅せたのだ。それも相手は、強豪・愛知県の上位校の投手からだったのだから。 <構え> ☆☆☆★ 3.5 前の足を少しだけ引き、グリップは平均的な高さで、あらかじめ捕手側に引いて構えています。腰はあまり深く据わらず、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしては並ぐらい。昨年からの違いは、グリップの高さを少し下げたぐらいか? アゴをグッと引いて、打席での高い集中力が感じられます。 <仕掛け> 遅すぎ 投手の重心が下る時にベース側につま先立ちし、本格的に動き出すのはリリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用。日本人のヘッドスピードやパワーを考えると、このタイミングでの始動は遅すぎるのだが、彼クラスのパワー・ヘッドスピードならば、このタイミングでもありな気はする。この始動のタイミングは、以前と変わっていなかった。 <足の運び> ☆☆☆★ 3.5 小さくステップして、ほぼ真っ直ぐ踏み出します。始動~着地までの「間」がないので、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さない高い集中力が求められます。真っ直ぐ踏み出すように、内角でも外角でもさばきたいタイプかと。 踏み込んだ前の足も、左方向への打撃の時にはブレずに止まっています。そのため、逃げて行く球や低めの球にも食らいつくことは可能かと。ただし元来は、地面から早めに足が離れるタイプなので、引っ張る打撃を好むタイプなのではないかとは思います。 <リストワーク> ☆☆☆☆ 4.0 あらかじめグリップを捕手方向に引いて、「トップ」に近い位置で添えられています。それだけ始動の遅さを、ここで補っている感じです。こうすると速い球に立ち遅れ難い反面、前の肩が後ろに引っ張られた状態で、リストワークの柔軟性が損なわれるといった弊害もある打ち方です。 内角の球をさばく時は、肘をしっかり畳んで開くことなく見事にさばきます。外角の球に対しては、けしてインサイドアウトの軌道ではないものの、大きなロスはなくインパクトへ。そういった、バットのしなりを活かすスイングもできるようになっていますし、バットの先端であるヘッドも、大きくは下がってはいません。それでも、フォロースルーを使って打球を運ぶように、広い面でボールを捉えるというよりは、ボールに下にバットを潜らせ打球に角度を付けて飛ばす天性の長距離打者なのではないかと考えられます。 <軸> ☆☆☆★ 3.5 昨年よりも足の上げ下げがあるフォームになっているので、目線の上下動はそれなり。体の「開き」も我慢できていますし、軸足の実に太く力強い。人並み外れ飛距離を出せるのも、この軸足の強さが大きいと考えられます。ステップの幅は、昨年より若干狭くなったような感じがしているのは、気のせいでしょうか? 軸足の安定感という意味では、昨年の方が地面から真っ直ぐ伸びていたようには感じます。 (打撃のまとめ) 打撃フォームは、大きくは変わっていませんでした。始動の遅さやスイング軌道の関係からも、打てる球とそうでない球というのはあるように感じます。それでもどの方向にも長打が出るようになり、いよいよ手がつけられない領域に入ってきました。技術云々は、今後も改善可能なポイントであり、高校生でもありポテンシャルの方を高く評価したいところです。 (最後に) 細かい理屈は抜きにして、スイングの迫力・ヘッドスピードの速さ・その飛距離は、近年の高校生の中では図抜けています。歴代の目玉選手達とも肩を並べる領域に近づいてきています。これで、甲子園にでも出場して一発でも放てば、誰もが知るようなドラフトの目玉となって行くのではないのでしょうか。春の時点で、すでに 最高評価 を付けても良いと思います。いずれプロでやりたいという意志があるならば、遠回りすることなく直にプロ入りして頂きたい選手です。 蔵の評価:☆☆☆☆☆(目玉級) (2023年 愛知県招待試合) |