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杉山 遙希(横浜高3年)投手 180/78 左/左 
 




「ボールが強くなってきた」 





 6月に行われた日体大下級生とのオープン戦では、健在ぶりを確認できた 杉山 遥希 。下級生の頃からキレの良い真っ直ぐを投げ込むイメージだったが、最後の夏はだいぶ力のある球威の伴った球質に変わっていた。


(投球内容)

 この夏の神奈川大会では、決勝戦で敗れ惜しくも甲子園の土を踏めなかった。成績は、
29回 29安 12四死 27三 防 1.55 といった内容だった。

ストレート 常時140キロ前後~中盤 
☆☆☆ 3.0

 日体大との練習試合では、球速的には135キロぐらいで、むしろ投げミスしないように丁寧な投球を心がけていたように見えました。しかし、この夏は明らかにボールが力強くなった一方で、
真っすぐは結構暴れるなといった印象。それでも、両サイドには散らすことができていた。ただし、このアバウトな印象は、29回を投げて12四死球と、四死球率が 41.3% にもなっており、出力が上がった分、投球の繊細さは損なわれた印象を受ける。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ 
☆☆☆★ 3.5

 スライダーでカウントを整えつつ、チェンジアップでは空振りを誘える、そんな感じの配球です。時々、緩いカーブなどを交えてきます。気になるのは、
スライダーが甘いゾーンに入ってくることが多く、この球を打たれるケースが多いということ。この夏、29イニングを投げて29安打と、投球回数と同等の被安打を浴びて多いです。真っ直ぐを打ち返されたというよりも、カウントを取りにいった甘いスライダーを打たれるケースが多かったのではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.1秒~1.3秒ぐらいと、ランナーの位置や状況で使い分けているように思えます。牽制も鋭いですし、フィールディングの動きも良いです。ランナーにもしっかり目配せができていましたし、ボールもじっくり持つなど、
天性の投手だなといった感じがしました。

(投球のまとめ)

 ボールのボリュームという意味で物足りなさを感じてきたのですが、その点はだいぶ改善されてきたように思います。球速も出るようになってきていますし、
チェンジアップは上のレベルでも空振りが奪える代物かと。ただし、天性の投手といった投球センスやマウンドさばきは健在だったものの、制球という部分ではやや繊細さが損なわれていた最後の夏だった気はします。





(投球フォーム)

 下級生の頃に比べ、フォームに何か変化があったのか? 改めて考えてみたい。ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足一本で立った時に、膝がピンと伸び切ってしまっているのは気になるものの、全体的にはバランス良くは立てていた。このフォーム序盤の導入部のところは、下級生の頃から変わっていませんでした。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばすことができており、お尻を三塁側(左投手の場合には)に、しっかり落とすことができています。したがって、体を捻り出すスペースが確保でき、カーブやフォークを投げるのに無理がありません。

 「着地」までの地面の捉えもそれなりで、適度に体を捻り出す時間も確保。曲がりの大きな、変化球の習得も期待できそうで、現時点でも
チェンジアップの威力にはみるべきものを持っている。昨年に比べるとフォームは変わっていなかったが、チェンジアップの変化が増しているように思えた。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため、軸はブレ難く、両サイドのコントロールは安定しやすい。

 
足の甲での地面の捉えが若干浅く見えるので、浮き上がろうとする力を充分に抑え込めていないのかもしれない。力をセーブすれば、しっかりコントロールできるだけの、指先の感覚の良さは持っている。フォーム自体は、昨年からほとんど変わっていないように見えます。

<故障のリスク> 
☆☆☆☆ 4.0

 お尻が落とせるので、カーブやフォークといった捻り出して投げるのにも無理は感じられません。カーブも滅多に投げませんし、フォーク系の縦の変化も無さそうなので、肘などに負担がかかることは無さそう。

 腕の送り出しを観ても無理は感じられず、肩への負担も少なそう。昨年までは、もっと腕が外旋していてブンと振ってくる感じでしたが、それもだいぶ緩和したように感じます。けして力投派でもないので、疲労も溜め難いのではないのでしょうか。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも適度に作れていて、ボールの出どころもそれなりに隠せています。そういった意味では、見えないところからピュッと出てくる感覚には打者もなっているのではないのでしょうか。

 腕もしっかり投げ終わったあと絡む粘っこさもあるので、打者としては吊られやすいのでは? ボールへの体重の乗せもある程度できていますが、この辺はまだ改善の余地があって、もっとグッと前に体重が乗るようなフォームになって行きそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの四大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点は感じません。ただし、「体重移動」に関しては、幾分ステップの幅や「着地」までの粘りをもっと良くして行ける余地は感じます。制球を司る動作は、足の甲での押しつけが浅く、力を入れて投げると上吊りやすいこと。故障のリスクはさほど高くなく、武器になる変化球の習得など、今後ピッチングの幅をさらに広げて行くことも期待できそうです。高校生としては、かなり
高いレベルのフォームだと言えるのではないのでしょうか。


(最後に)

 フォームとしては、昨年からほとんど変わっていませんでした。その一方で、真っ直ぐの球質が球威型になり、チェンジアップの変化も増しているように感じます。制球が粗くなって繊細さを損なっていた印象はありましたが、これも成長段階がゆえのといった感じで、プロ入り後に修正が可能な範疇だと考えます。凄みこそ感じませんでしたが、
順調にゆけば三年目ぐらいのには、一軍ローテーションに定着、そんな青写真が描けそうな投手でした。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2023年夏 神奈川大会)









杉山 遙希(横浜高3年)投手 180/83 左/左 
 




「身体が立派になってきた」





 日体大下級生との練習試合では、足場が悪かったこともあり、驚くような球は投げていなかった 杉山 遙希 。 しかし、昨秋に比べると明らかに体つきが変わってきた気がした。

(投球内容)

 先輩たち相手にも、試合を作り終盤まで日体大打線を抑え込んでいました。春季大会でも、
29回1/3 23安  2四死 28三 防 1.23 と、安定した投球を魅せています。

ストレート 130キロ台中盤~MAX141キロ ☆☆☆ 3.0

 昨年の秋は、130~130キロ台中盤ぐらいの球が多かったので、球速的には
常時5キロ前後は上がっていることがわかります。それでも、ドラフト候補の左腕としては、球威・球速という意味ではやや物足りません。しかし、この投手の良さは、球速以上にに感じさせるボールのキレにあります。そして両サイドに投げ分けられ、四死球も出さない安定した制球力にあります。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ ☆☆☆ 3.0

 以前はもっとスライダーの割合が多かった気がしますが、この春は緩いカーブを結構使ってきて、チェンジアップの精度・キレも増して
投球の幅が広がってきていました。打者を仕留めるきるほどの絶対的な球があるかと言われると、プロを想定するとそこまでの球はないようには感じます。しかし、変化球の投げもミスも少なく、連打を浴び難いタイプではないのでしょうか。

その他

 牽制は鋭く、左腕らしく投球フォームとの見分けが難しいです。クィックも使ったり使わなかつたりと織り交ぜてきますが、速い時には 1.05秒前後とまずまず。フィールディングの動きも良く、マウンドさばき、投球術など、高校生としては高いものを持っている。

(投球のまとめ)

 昨秋までは、正直大学進学タイプの好投手で終わるかなといった感じもしていました。しかし、最終学年になり球速・身体付きも増してきて、ドラフト候補の匂いがするようになってきました。順調に夏の大会でアピールできれば、高校からのプロ入りも意識できるところまで来ているのではないのでしょうか。


(最後に)

 オフにフォーム分析しているので、あえて今回はしません。高校生左腕では、前田 悠伍(大阪桐蔭)や東松 快征(享栄)などの上位候補はいるものの、彼らに続く名前がほとんど上がってきません。そういったゾーンに入り込む可能性は、充分にありそうな感じです。「コントロールの良い左腕は買い」という私の中の格言もあるだけに、そういったものに合致しうる左腕だと感じます。


蔵の評価:
追跡級!


(2023年 練習試合)










杉山 遙希(横浜高2年)投手 180/82 左/左 





 「伊藤将司みたいだな」





 下級生の時から活躍する 杉山 遙希 を見ていると、同じ横浜高校の先輩である 伊藤 将司 の高校時代を彷彿とさせる。彼の場合は、大学・社会人と経由して、プロ入りを果たすことになる。この杉山も、そんなタイプなのかもしれない。


(投球内容)

 オーソドックスなサウスポーといった感じの投手で、秋はチームを関東大会まで導くも、センバツへの出場を果たせなかった。

ストレート 常時130キロ台~中盤 ☆☆★ 2.5

 球速的には、ドラフト候補としては物足りない。伊藤の場合は、もう少し同じような球速でもボールが切れていたようにも思える。特に立ち上がりに制球を乱すことが多いので、ここをいかに乗り越えらられるかが鍵になる。普段は、両サイドにしっかり投げ分けることができている。ちなみに秋は、33イニングで7四死球と、四死球率は 21.2% と安定していた。

変化球 スライダー・チェンジアップなど ☆☆☆ 3.0

 見ていると、横滑りスライダーでカウントを整えてくる。他にも、チェンジアップ系の球も使ってくるのだが、基本的にあまり三振にできるほどの変化球はないように見える。さらに少しストレートがカット気味にゆくことがあったり、たまに緩いカーブを使ってくることもある。過去甲子園で 21回2/3イニングをほど投げているが、三振は半数以下の10個にとどまっている。

(その他)

 クィックは使わないことも多く、使っても1.25秒前後とやや遅い。ただし、牽制が非常に巧みで、そこで誘い出してアウトを狙っているのではないのだろうか。フィールディングの動きも、けして悪くはなかった。微妙なところを突く、そういった繊細な投球はできている。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてみたい。ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり。軸足一本で立ったときには、やや膝がピンと伸びがちで力みが感じられるものの、バランス自体は適度に保てて立てている。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を高い位置でピンと伸ばされていて、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落とせている。したがって体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種も苦にしない。

 また「着地」までの地面の捉えもそれなりで、体を捻り出す時間も適度に確保。そういった意味では、曲がりの大きな変化球を習得しても不思議ではない。しかし実際は、一通り投げられるものの、空振りを誘えるほどの変化は見られていない

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドへの制球は安定しやすい。足の甲での地面の捉えが少し浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」や指先感覚は悪く無さそうに見えるが、立ち上がりと高低の制球には若干不安定になる。特に原因は、意外に顔が外を向いて腕の軌道が顔から離れており、腕をブンと遠回りに出がちだということ。腕が外旋することで、軸がブレやすいのかもしれない。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻を落とせるフォームなので、カーブやフォークを投げても無理はありません。また、現時点ではそういった球はほとんど見られません。そういった意味では、肘への負担は少ないのではないかと。

 腕の送り出しにも、多少の角度は感じられるものの、負担が大きいというほどでは無さそうです。また、力投派というほどでは無さそうなので、疲労も溜め難いのではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりで、ボールの出どころも隠せている。そのため、見えないところからピュッと出てくる感じで球速以上に速くは感じられるのかもしれない。

 腕はしっかり投げ終わったあとに絡んで来ているので、しっかりボールゾーンに切れ込む変化球をものにできれば、もっと三振が奪えそう。ボールに体重を乗せてからリリースできているように見えるが、その割に打者の手元までの球威や勢いはまだ物足りない

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に大きな欠点は見当たらない実戦的なフォーム。各動作を、さらに粘っこくしたいところ。足の甲の地面の捉えが少し浅かったり、腕と頭の位置が開き過ぎることで、制球を乱す要因にはなっている。故障のリスクは低そうだし、もっと曲がりが大きく空振りを奪えるような変化球を習得しても不思議ではないように思える。


(最後に)

 現状は、先輩の 伊藤 将司 の時のように、アマの王道を突き進んでゆくタイプなのかなといった印象を受けます。そのため、高校からのプロとなると、あまりイメージできないのが現状です。しかし、投手としてのまとまりやセンスは感じさせるので、さらに球威・球速が磨かれて来ると、状況は変わってくるかもしれません。しかし、秋の時点では、大学進学タイプなのかなといった印象でした。


(2022年秋 神奈川大会)