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武内 涼太(星稜3年)投手 183/77 右/右 | |
ボール一つ一つには、素晴らしいものを持っている 武内 涼太 。しかし、なかなか思い通りボールが制御できず、制球に苦しむ姿を観てきた。果たして、このコントロールの粗さを解消できるのか? 今回は、検証してみたい。 (投球内容) この夏の石川大会では、13回 9安 13四死 14三 防 6.23 。遊学館高との決勝戦の模様をみたが、甲子園同様に制球に苦しむ内容となっていた。 ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5 真っすぐの球威・球速は、先輩の 奥川 恭伸(ヤクルト)を彷彿とするような素晴らしいボールを投げ込んできます。ただし、その球が中々決まらない。左打者の外角には結構決まるものの、右打者には抜けてしまい制御できない傾向にあります。甘く入って打たれるというよりも、ストライクゾーンの枠の中に決まらないことが多いので、現状深刻な状態です。 変化球 チェンジアップ・スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆ 3.0 決まらない速球に代りに、遊学館戦では、チェンジアップでカウントを整えていました。他にも緩いカーブやスライダー、それにフォークのような縦に沈む球もあります。それでも、投球回数の四死球を記録していました。 その他 牽制自体鋭い選手ですし、クィックも1.05~1.1秒ぐらいとまずまず。ランナーを背負えば、ボールをじっくり持つなど、そういった野球センスがある選手です。むしろ夏の大会では、甲子園でも一発を放ったように、打撃の方が目立っていました。 (投球のまとめ) プロの指導でも、修正が可能なレベルなのか? というのはあります。ただし、投手として持っているポテンシャルには素晴らしいものを持っています。仮に修正が上手くできなくても、野手としての可能性も考慮しての指名ではなかったのでしょうか。 (投球フォーム) セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなりといった感じがします。軸足一本で立った時には、膝がピンと伸びがちなのは気になりますが、全体的にはバランスのとれた立ち方になっています。下級生の時の方が、力み無く立てていたように感じます。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足を地面に向けて、さらにあまりしっかりは伸ばしてきません。したがって、お尻はバッテリーライン上に残りがちで、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適しません。 「着地」までの地面の捉えも平均的で、体を捻り出す時間も並みぐらい。そういった意味では、曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心に投球の幅を広げてゆくタイプかもしれません。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。ただし、顔が一塁方向に向いて、腕をブンと外旋することで、軸がブレやすくなっています。縦推進のフォームにして、コントロールが定まりません。 足の甲での地面の捉えが浅いので、浮き上がろうとする力が抑えられていません。そのため、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい傾向にあります。リリース時でもボールを押し込めていなので、余計にボールが上吊ってしまうのだと思います。指先の感覚は、かなり悪そうです。 <故障のリスク> ☆☆ 2.0 お尻は落とせませんが、現状カーブやフォークの割合は多くないので、そこまでナーバスになる必要はないかもしれません。しかし、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩は下がり気味。さらに、外旋して腕をブンと肩で投げるところもあり、肩への負担は大きいそうです。また、結構力んで投げるタイプなので、疲労も溜めやすいのではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りは平均ですが、ボールの出どころはある程度隠せています。そういった意味では、ストライクゾーンにしっかり決まれば、そこまで簡単には打たれないと思います。 腕は強く振れていて、打者としては吊られやすいのは? ボールにも適度に体重を乗せられているので、打者の手元まで力のある球は投げられています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」というか、リリースの押し込みに課題があるように感じました。故障のリスクが高そうなフォームであり、制球を司る動作にも課題があります。将来的に武器になるような変化球を見出だせるかも微妙ですが、チェンジアップは頼れる変化球ではあります。フォームとしては、昨年からほとんど変えてきてはいないようで、フォーム的にはリスキーな素材だと評価せざるえません。 (最後に) とりあえずスケールの大きそうな投手としての可能性を模索すると思いますが、ダメならば2年ぐらいで野手転向になるかもしれません。長打力溢れるバッティングにもスケールがあり、山口 航輝(明桜)を一軍野手に育て上げたノウハウを考えると、面白い球団には入ったと思います。ちょっと最終学年のパフォーマンスを考えると、化けたら大きそうだけれども、本会議でゆくにはリスクが高すぎる。そういった意味では、育成枠での指名は妥当だったのではないのでしょうか。今後、投手として大成するのか? 野手として才能を開花させるのか、注視して見守りたいところです。野球人として、持っている器はかなり大きいと言えます。 (2023年夏 石川大会) |
武内 涼太(星稜2年)投手 183/77 右/右 | |
夏の甲子園・愛工大名電戦では、145キロを記録していた 武内 涼太 。 先輩である 奥川 恭伸(ヤクルト)のような、球威と球速を兼ね備えたボールを投げ込んでくる。このひと冬の成長次第では、一気に上位候補に浮上してきても不思議ではない才能の持ち主だろう。 (投球内容) 旧チームでの活躍のわりに、この時期にあまり話題になっていないのは、秋の活躍が地味だったからではないのだろうか。秋季大会では、3回戦の小松工業戦で完封。しかし、以後はあまり長いイニングを投げないまま終わってしまった ストレート 140キロ~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5 ズシッと球威と勢いを感じさせる真っすぐの威力は、旧チームから目立っていた。ただし、力んで投げてしまうせいか? ボールが制御できず高めに抜けてしまうことが多い。この真っすぐのコマンドを、いかに改善できるのかが今後の鍵となってきそうだ。ストライクゾーンに決まれば、容易には打ち返されまい。 変化球 カット・チェンジアップ・フォークなど ☆☆☆ 3.0 スライダーというよりも、小さくズレる130キロ台中盤のカットボールでカウントを整えてくる。この球のキレは悪くないのだが、真っ直ぐ同様に精度は高くないので、甘く入って痛打を浴びることが多い。彼の最大の武器でありながら、彼の最大の弱点にもなってしまっている。その一方で、チェンジアップを時々織り交ぜてカウントを整えてくる。時にはフォークのような縦の変化も観られるのだが、まだこの球の精度はそれほど高くなさそうだ。 その他 牽制は非常に鋭いものを混ぜて来るし、クィックも1.0秒前後と高速。むしろランナーを背負ったら、じっくりボールを持つなど、もう少し「間」を使ったり、余裕を持ったピッチングを心がけたい。 (投球のまとめ) 真っ直ぐでもカットボールでも、ボール一つ一つには見るべきものを持っている。その一方で、制球の甘さが仇となっている。この部分を、一冬の間に改善して来られるかが、高校からのプロ入りを実現できるかの鍵を握っているのではないのだろうか。上手くその辺が改善できてくると、上位候補として位置づけられるようになってゆきそうだ。 (投球フォーム) セットポジションから、足を引き上げる勢いは並ぐらいだが、比較的高い位置まで引き上げてくる。軸足一本で立ったときには、膝がピンと伸び切ることなく、適度にバランスを保てて立てている。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足をピンと伸ばさないまま重心を落としてくるので、お尻はバッテリーライン上に落ちがち。したがって体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さないように思える。 前に大きめにステップさせることで、「着地」までの時間はある程度確保。カーブやフォークには適さないが、適度に曲がりの大きな変化球は習得できるように思える。奥川などもそうだったが、腕の振りが強すぎてスライダーなどが曲がり過ぎてしまうのかもしれない。それゆえに、カットボール中心に投球を組み立てているのかもしれない。 <ボールの支配> ☆☆★ 2.5 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできている。ただし、顔が一塁側に向き、腕が外旋してブンと振ってくるので、そのへんで軸がブレやすくなっているのかもしれない。 足の甲での地面の捉えが浮きがちなので、どうしても浮き上がろうとする力を抑え込めていない。したがって力を入れて投げてしまうと、どうしてもボールは上吊りやすい。「球持ちが」が悪いようには見えないが、ボールの押し込みも甘いので高めに抜けやすいのだろう。 <故障のリスク> ☆☆ 2.0 お尻が落とせないフォームなので、カーブやフォークなど捻り出して投げる球種だと窮屈になりがち。ただし、現状カーブやフォークを投げる頻度は少なそうなので、その点はあまり気にしなくても良さそうです。 ただし、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている方は下がりがち。ボールの送り出しに関しては、外旋する腕の軌道含めて肩への負担などは気になります。かなり力んで投げるので、疲労も溜めやすいのではないのでしょうか。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」までの粘りはそれなりで、ボールの出どころも平均的といった感じか。とくにボールが見やすいとか合わされやすいとは思わないが、むしろゾーンの中で甘く入ってくるカットボールを打たれていることが多い。秋は、13回1/3イニングで11安打。被安打率は 80.5% と悪い数字ではない。 腕は強く振れて勢いがあり、投球回数を上回る奪三振が奪える。ボールもある程度体重を乗せてからリリースできているように見えるのだが、足の甲が浮きがちなので前へのエネルギー伝達は必ずしも充分とは言えない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、どれも大きな欠点はないが、大きく優れているところもない。そういった意味では、まだまだ伸び代を残しているとも捉えることができる。その一方で、制球を司る動作や故障のリスクは高いのが気になり、そのへんで伸び悩むリスクも少なくないということ。特に現状は、投球回数を上回る四死球を出している制球力が大きなネックとなっている。 (最後に) 先輩の 奥川 恭伸 を彷彿とさせるような真っ直ぐを投げられているものの、制球力や変化球の精度などの点では大きな開きがまだある。ただし、このひと冬の成長次第では、上位指名の可能性も秘めており、その点では今後も目が離せない存在ではないのだろうか? 期待半分不安半分ではあるが、今後も気にかけて行きたい一人であった。 (2022年夏 甲子園) |