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坂井 陽翔(滝川第二3年)投手 186/84 右/右 | |
指先の感覚に優れていて、投手らしい投手といった印象があった 坂井 陽翔 。ただし、ボール1つ1つを観ていると、意外にコントロールはアバウトではないかと思える部分が。実際に最後の夏は、26イニングで10四死球と、それほど繊細な制球力ではない数字が残っている。 (投球内容) ノーワインドアップから、投げ込むんでくる正統派。この夏は、26回 18安 10四死 23三 防 2.08 。準決勝の明石商業に敗れて、最後の夏を終えた。 ストレート 常時140キロ前後~中盤 ☆☆☆ 3.0 明石商戦の模様を観ていると、135キロ~140キロ前半ぐらいに見えてしまった。ちなみに、この日の最速は146キロを記録していたというが、そこまでボールが来ているようには見えなかった。特に真っ直ぐに関しては、ポンポンとストライクを先行できるものの、ストライクゾーンの枠の中に投げ込むだけといった感じで、それほどコースを投げ分けて来るといった感じはない。ただし、被安打率は69%ということで、球威が感じられる球ではないが、簡単に打ち返されやすいというわけでも無さそうだ。 変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆★ 3.5 小さく横滑りするスライダーを多く使ってくるのですが、それほど空振りを誘うといった球ではありません。それでもこの球を、打者の内角に食い込ましたり、外角のボールゾーンから入れてくるなど、様々な使い分けができています。そして、縦に落ちるフォークなどもあるのですが、この球はまだ空振りを誘える感じではなく、低めへの意識づけをさせるという意味で有効。また、たまに緩いカーブも使ってきます。真っ直ぐも含めて、この攻めのバリエーションの豊富さが、打者の的を絞らせない要因ではないかと。奪三振率自体は、1イニングあたり 0.88個と、そこまで多く三振を奪っているわけではありませんが。 その他 牽制は適度に鋭く、クィックも 0.95~1.05秒ぐらいと素早いです。特に「間」を使ってとか、微妙な出し入れをするような技術は感じられないが、テンポ良く相手を追い込み自分の有利な状況を作ったり、同じ球種でもいろいろなコースから変化させたりと、そういったセンスの良さは、高校生としてもトップクラスのものを持っているのではないのだろうか。 (投球のまとめ) キレ型で球威に欠けながらも、それほど被安打が多くない。それは、多彩な球種で様々なボールの活かし方ができ、ボールの力に頼らなくても相手を打ち取ることができているということなのだろう。繊細なコントロールでもボールの威力でもなく、ボールの活かし方に突出した才能を持っているということ。このことで、プロのレベルでは壁に当たるのか? さらにそれが生きてゆくのか注視して見守りたい。なかなかアマチュアにはいない、面白いタイプだと言えよう。 (投球フォーム) 今後の可能性について、昨年のフォームと比較しながら考えてみよう。ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いは並ぐらいで、それほど高い位置まで引き上げては来ない。昨年よりも、軸足の膝には余裕がある感じになったが、全体のバランスとしてはどうだろうか? <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばされているので、お尻は甘さは残されているものの一塁側には落ちている。そういった意味では、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種も無理は感じない。昨年は、もっと遅いタイミングでお尻が落ちてきた感じなので、若干良くなっているようには見えます。 「着地」までの地面の捉えもそれなりで、体を捻り出す時間もそこそこ。大きな曲がりの変化球を習得できるかは微妙だが、それでも切れのある変化球を身につけたり、多彩な球種を操られる下地は整っている。昨年は、「着地」までの粘りが平凡だったので、この点も幾分時間が稼げるようになってきていた。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで内に抱えられているので、外に逃げようとする遠心力を内に留めている。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいのでは? 足の甲での地面の捉えは浮きがちなので、力を入れて投げるとボールは上吊りやすかったり、高めに集まりがち。ある程度安定してストライクゾーンに集められるのは、「球持ち」が特に良い感じではないものの、指先の感覚に優れているからではないのだろうか。 この辺の動作は、昨年からあまり変わっていません。 <故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5 お尻はある程度落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても負担は少ないように感じられます。腕の送り出しも、多少ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩は下がり気味ですが、気にするほど極端ではありません。また、あまり力投するようなフォームではないので、疲労は溜まり難いのではないのでしょうか。昨年に比べると、肩への負担は緩和しているように感じられました。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りはそれなりで、ボールの出どころも並ぐらい。特に打者が苦になるほどではないにしろ、特別合わされやすい・ボールが見やすいといったほどではない。 腕の振りもそれなりで、今後さらに鋭くなって行ければ、打者の空振りを誘いやすくなりそう。まだ、体重が乗ってからリリースを迎えているという感じではないので、どうしても打者の手元までのボールの強さ・勢いなどは物足りない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「体重移動」に物足りなさを残します。他の部分も悪くはないのですが、けして良いわけではありません。このへんは、伸び代を残しているとも捉えることはできますが。足の甲の押し付けができていないので、制球がアバウト。それほど故障のリスクが高く無さそうなのと、将来的にピッチングの幅を広げて行ける下地は感じられます。昨年に比べても、大幅な変化は観られないものの、少しずつ良くなっている印象はあります。環境次第では、まだまだ良くなれるのではないのでしょうか。 (最後に) ボールの威力がA級のわけでも、コントロールの精度が高いわけでもありません。しかし、持っている野球センスに優れ、今ある球種を様々な活かし方ができるといった意味で興味深いものがあります。また、肉体的にも技術的にも伸び代を残しており、まだまだ伸びて行っても不思議ではありません。ちょっとこの独特の感覚は、山本由伸(オリックス)を彷彿させるものがあり、いそうでいない特殊な個性を将来輝かせるかもしれません。予想順位・評価的には3位前後ぐらいかなと観ていたので、2位という順位もありなのかなと思っています。今度どうなって行くのか、非常に気になる選手です。 蔵の評価:☆☆☆(上位指名級) (2023年夏 兵庫大会) |
坂井 陽翔(滝川第二2年)投手 186/81 右/右 | |
昨夏、兵庫大会をみていて、この選手はイイなと思っていたのが、この 坂井 陽翔 。順調に育ってゆけば、23年度の有力なドラフト指名候補になって行けそうだ。 (投球内容) まだ凄みがあるというよりも、ポンポンとテンポ良く投げ込んでくるセンスが勝ったタイプかと。それでも、最速で148キロを記録しているというので、イメージ的には 小園健 太(市立和歌山~DeNA1位)投手に、割合似た系統の投手のような気がします。 ストレート 常時135~140キロ強ぐらいか ☆☆☆ 3.0 まだ昨夏の時点では、驚くほどの球は投げていませんでした。ポンポンとストライクゾーンに集められる制球力がありますが、球威という意味では、一冬超えた成長を期待したいところで、ドラフト指名クラスに比べると見劣りします。ただ、ランナーを背負ったりすると多少ギアを上げてくるので、そういったときのボールは140キロ台を記録してくる。こういったボールが、平時から投げられるぐらいの馬力を身につけられればといった感じでしょうか。 変化球 スライダー・カーブ・フォーク? ☆☆☆★ 3.5 現状は、スライダーが目立つ投手といった感じがします。この球でいつでもカウントを取れるだけでなく、両サイドに投げ分けることができ、決め球としても使えます。他にも曲がりながら沈む球もあり、これも縦変化の大きなスライダーなのかなといった気がします。他にも、シュート系で沈む球も結構使ってくるのですが、ツーシームなのかフォークなのかよくわかりません。まだ、この球の精度・落差は発展途上な感じがします。 その他 クィックは、0.9~1.0秒ぐらいと高速。特に間を変えてくるとか、そういった感じはしません。ただし、スライダーをフロントドアとかバックドアとか、結構いろいろなバリエーションで使える技術があること。そして、リズムの良いテンポで投げ込めている選手です。 (投球のまとめ) まだ速球の球威という意味では物足りないので、このひと冬間にこの辺がいかに変わってくるかではないのでしょうか。ボールに強さが出てくれば、一気に上位候補へと名乗りをあげられそう。逆にこの部分があまり変わって来ないようだと、センスが勝ったタイプだけに有力な大学に進学することになるかもしれません。そのへんは、春の成長ぶりをみて見極めたいポイントです。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から今後を考えてみましょう。ノーワインドアップから、足の引き上げる勢いは静かで、あまりその高さは低め。軸足一本で立った時に膝から上がピンと伸びてしまっていて、トの字 の形になってしまっています。こうなると、軸足一本で立った時に、バランスを保とうと余計な力みが生じたり、いち早く地面を捉えようと「着地」までの粘りが作り難くなりがちです。 <広がる可能性> ☆☆☆ 3.0 引き上げた足を地面に向けがちなので、お尻の一塁側への落としは甘めです。それでも、フォーム後半からグッと沈むんで来るので、そこまで窮屈にならないでは済んでいます。そういった意味では、カーブやフォークが投げられないことは無さそうです。 「着地」までの地面の捉えが淡泊なので、体を捻り出す時間としては平凡。それゆえ、将来的に武器になるほどの曲がりの大きな変化球を習得できるかは微妙です。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブはしっかり抱えられているわけではないのですが、結果的に体の近くにはあります。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつきやすいのではと。足の甲での地面の捉えは浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすいのかもしれません。「球持ち」もまだボールを押し込めている感じではないのですが、指先の感覚が良いのか? 制球自体は安定しています。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークといった球種が投げられないほどではありません。ただ、こういった球種も結構使っているようなので、肘への負担には注意を払って欲しいものです。 また、角度を出すために、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩は下がりがち。そういった意味では、腕のお繰り出しに負担がありそうで、肩への故障には特に気を遣って欲しいかなと。けして力投派ではないので、疲労を溜めやすいというほどでは無さそうですが。 <実戦的な術> ☆☆★ 「着地」までの粘りが平凡なだけに、打者としては イチ・ニ・サン でタイミングが計りやすそう。またボールの出どころも平均的なので、けして苦になるフォームでは無さそうです。 腕は適度に振れていますが、まだボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているわけではありません。ゆえに、まだ打者の手元まで、グッと体重が乗った球が投げられていません。また、投げ終わったあと一塁側に流れることもあり、作り出したエネルギーをロスしてしまっています。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」や「球持ち」「体重移動」などに課題を残し、「開き」も平均レベルです。制球司る動作や故障のリスクは平均的で、将来的に武器になるほどの変化球を習得できるかも微妙でしょう。投手としてのセンスの良さは感じられますが、フォームは実戦的とは言えません。そういった意味では、意外に伸び悩む危険性があるのかなと感じました。 (最後に) 投手としての筋の良さは感じつつも、いかにこのひと冬の間に真っ直ぐに強さが出てくるかが鍵だと感じました。またフォームも実戦的とは言えないので、上のレベルでは伸び悩む危険性も感じなくはありません。現状は、そこまで入れ込まず、その成長を見守って行ければと感じます。まずは、春にドラフト候補として追いかけられそうなのか? 大学進学タイプなのか? 見極めて行けたらと考えています。 (2022年夏 兵庫大会) |