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東恩納 蒼(沖縄尚学3年)投手 172/70 右/左 





「ドラフト候補として考えていなかった」





 高校球界を代表する好投手として知られていた 東恩納 蒼 。誰もが良い投手とは認めるであろう実績・実力の持ち主だが、体格も小柄な右腕で、驚くような球威・球速があるわけではない。安定した制球力、ピッチングの上手さなど勝負する、典型的な大学進学タイプだとみていた。そんな彼が、まさかのプロ志望届を提出してきたのである。

(投球内容)

 非常に、オーソドックスなフォームから投げ込む好投手です。春・夏の甲子園での実績は、
45回1/3 40安 7四死 36三 防 1.39 。また優勝したU-18のワールドカップでは、11イニングを投げて被安打は1本、無失点と完璧なピッチングを見せた。


ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆★ 2.5

 冒頭でも述べたように、驚くような球威や球速があるわけではない。ただ、
要所で外角一杯コースに決める爽快感は見事。ただし、高低でみると、高めに抜けたり甘く浮いたりすることも少なくない。そのため、45回1/3イニングで40安打と、88.2% と、被安打率はけして低いとは言えないだろう。その一方で7四死球と、四死球率は15.4% とコントロールで苦しむタイプでもない。課題は、枠の中での細かい制球力と、球威UPではないのだろうか。この辺が、プロ入り後ワンランク・ツーランク上がってくれば面白いと考える。

変化球 スライダー・カーブ・ツーシームなど 
☆☆☆ 3.0

 特に右打者外角にスライダーを集めてカウントを整えてくる。左打者にも外角にスライダーを決めてくる。余裕があると緩いカーブを織り交ぜたり、ツーシーム系の沈む球も使ってくる。ただし現状は、速球とスライダーのコンビネーション中に構成されている。特に変化球が甘く入るとかいうことは少なく、むしろ
絶対的に武器になる球がないようにも見えます。45回1/3イニングで36三振ということで、1イニングあたり0.79個と、けして多いというほどでもない。

その他

 クィックは、1.15秒~1..20秒ぐらいと平均的。ランナーを出しても鋭い牽制を入れてくる投手ではないが、走者への目配せはできている。特に走者を背負ってもバタつくことはなく、
ここぞという時に一番良いところに決めたり、最高のボールをを投げ込めるところは素晴らしい


(投球のまとめ)

 現状プロ目線で見た時には、何か凄い球があるわけではない。しかし、持って生まれた投手とのしてのセンスがあり、
ストライクを先行させ有利な状況を作るのがうまかったり、最後の最後でベストボールが投げ込める、天性の資質を持っている。この辺は、なかなか教えてどうこうできるものではないので、評価する人は評価するポイントではないのだろうか。





(投球フォーム)

 セットポジションから、足を静かにあまり高い位置まで引き上げません。軸足一本で立った時には膝が伸びがちですが、そこまで力は感じられませんし、バランスは適度に保ち立てています。早いが静かな、典型的な先発タイプのフォームです。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足は地面に向けて伸ばすので、お尻の一塁側への落としは甘くなります。そういった意味では、カーブで緩急を付けたり、フォークのように縦に鋭く落ちる球種には向かない傾向も。

 それでも足を大きめにステップすることで「着地」までの粘りは作れ、体を捻り出す時間は確保できています。そういった意味では、カーブやフォーク系の球以外であれば、曲がりの大きな変化球を身につけても不思議ではありません。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めています。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールは安定しやすいです。ただし、
足の甲での地面への押しつけが浅く、どうしても浮き上がろうとする力を抑えられずボールが上吊りやすいと考えられます。

 「球持ち」はそれなりであり、指先の感覚は良い方に見えます。これにより、四死球で制球を乱すといったことは無さそうです。

<故障のリスク> 
☆☆☆ 3.0

 お尻の落としは甘いのですが、カーブやフォーク系の球はそれほど多くは見られません。持ち球が、カーブであったりツーシームなので、今後こういったボールへの依存度が高まるようだと、窮屈になって肘への負担が増すことになるかもしれません。

 腕の送り出しを見ても、かなり上から振り下ろそうという意識はあるものの、そこまで送り出しに無理は感じませんでした。現時点ではそれほど力投派でもないので、疲労を溜めやすいということも無さそうです。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りはそれなりに作れ、ボールの出どころも平均的。腕はしっかり振れて身体に絡んでくるので、あとは
ボールにしっかり体重を乗せて投げられるようになると、真っ直ぐが自己主張できるような存在感が出てきそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「体重移動」に課題を残します。制球を司る動作は、高めに集まりやすいこと。故障のリスクは平均的で、投球の幅はある程度広げて行けることは期待できそうですし、そういった器用さもありそうです。


(最後に)

 彼のような投手としての天性のセンスを評価する球団であれば、下位指名ぐらいで指名してくるかもしれません。しかし、体格的にも見劣り、現時点での球威や細かい制球力などをみると、まだ
高校生レベルの良い投手 といった気がします。そこからプロで通用するだけの、伸び代なりが本当に残っているのかと言われると、実際のところ混ぜてみないとわからないというのが率直なところ。個人的には、育成枠であればアリなのかな? といった気もしますが、支配下で指名するのにはリスキーさもあり、 を付けるまでの魅力は感じませんでした。


(2023年 U-18ワールドカップ)