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成田 晴風(弘前工3年)投手 184/87 右/右
 




「ちょっとピリッとしない」 





 今年の東北地区で、随一の球威・球速を誇っていた 成田 晴風 。ただし、その投球を見ていると、イマイチ決まって欲しい時にストライクが入らないなど、ピリッとしない印象を受けた。


(投球内容)

 この夏は、初戦で先発し149キロを記録。続く2回戦では、甲子園に出場した 八戸学院光星 と対決。2回に、ピッチャー返しの球が直撃してしまい、その後も投げ続けるも敗戦してしまった。

ストレート 常時145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5

 
適度な球威と勢いを感じさせる真っすぐで、東北随一と言われる片鱗は魅せてくれました。空振りを誘う球質というよりは、球威で詰まらせるタイプかと。結構球筋はバラついて、初戦は7イニングで1四死球だったのに対し、光星戦では投球回数を上回る四死球を出していました。打球が当たる前から、コントロールは不安定でした。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ? ☆☆★ 2.5

 速球以上に多く投げ込んでくるのが、横滑りするスライダー。この球でカウントを整えてくるのですが、高めに抜けたり甘く入ることも少なくはありません。時々さらに緩いカーブや、何やらチェンジアップだかフォーク系の球もあるように見えます。いずれにしても、信頼できる変化球はスライダー。けして、この球も空振りを誘うといった球ではありません。それでもこの夏は、14回1/3イニングで18奪三振と、投球回数を上回る奪三振は奪えていました。

その他

 牽制やフィールディングは平均的かなといった感じでした。クィックは、0.9秒台~1.2秒ぐらいと幅広く、意識的に投げる感覚を変えて投げているのかもしれません。意外に、ボールを長く持ったりもしていたので、そのへんは「間」を使おうという意識があります。逆にそれが、投球リズムの悪さにも繋がっていて、そのへんの匙加減は難しいところ。

(投球のまとめ)

 まだまだ、発展途上といった素材であるように思います。
制球力・変化球などがイマイチで、意図した投球が思い通りにできずピリッとしなく感じる要因かもしれません。それでも、まだまだ真っすぐは良くなりそうですし、いろいろ考えては投げられているように思えます。将来的には、大化けの可能性も秘めているのではないのでしょうか。





(投球フォーム)

 実際の投球だけでは掴みきれない部分もあるので、フォームを分析して今後の可能性を模索してみます。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはそれなり。軸足一本で立った時に、膝がピンと伸びてしまい力みが感じられます。それでも上げた足を幾分二塁方向に向けることで、適度にバランス良く立てています。

<広がる可能性> 
☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残りがち。そのため体を捻り出すスペースは確保できず、カーブで緩急をつけたり、フォークのような縦に鋭く落ちる球種は適しません。

 それでも、適度に前に足を逃がすことができており、体を捻り出す時間は確保。テイクバックが小さめなことも相まって、大きな曲がりをする変化球よりも、スライダーやチェンジアップ、それに球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げて行くことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> 
☆☆☆☆ 4.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。フォーム全体が縦推進なのもあり、両サイドのコントロールは付けやすいのでは?

 足の甲の地面の捉えもできているので、あとはそれを長くキープできるようになると好いと思います。浮き上がろうとする力も適度に抑えられ、もっと低めへの球も増えそうです。指先の感覚はさほど良さそうには見えないものの、「球持ち」自体は悪くはありませんでした。将来的には、それほどコントロールで苦労するといったタイプにはならないのではないのでしょうか。

<故障のリスク> 
☆☆ 2.0

 気になるのは、お尻が落とせないフォームなので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さないこと。しかし現時点では、そういった球はほとんど観られないので、窮屈になって肘などへの負担は少ないのでは?

 それ以上に気になるのは、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がりがちになって投げ下ろしてくること。それだけ腕の送り出しに無理が生じやすく、肩への負担も大きくなるのでは? それなりに力を入れて投げているフォームでもあるので、疲労も適度に溜まりやすくは見えます。そういった意味で、故障への不安は感じます。

<実戦的な術> 
☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りもそれなりで、ボールの出どころも隠せています。そういった意味では、打者から合わされやすいといったことは無いように見えます。ただし、フォームが縦推進なので、動作の割には合わされやすい恐れはあります。

 腕もしっかり振れていて、打者としては吊られやすいのでは? ボールにも適度に体重を乗せて投げられるので、打者の手元まで
力のあるボールが投げられています。地面の蹴り上げなどをみていると、「体重移動」も思った以上に良さそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」も、共に悪く有りませんでした。制球を司る動作も想像以上で、コントロールに関しては、体ができてくるに従い安定してきそう。 気になるのは、武器になるほどの変化球を習得し難いフォームであることと、故障のリスクが高そうなフォームでしょうか。しかし、投球で見る印象よりも、
遥かに実戦的なフォームで驚きました。


(最後に)

 投球を見る限りは、育成あたりかなと思っていました。しかし、フォーム分析をしていると、思った以上に実戦的であり、体ができた時に大化けするかもなという期待も広がります。また、単なる荒れ荒れの素材型でもなく、考えて投球しようとする意志も感じられます。高い評価はできませんが、将来的に面白いかもという期待も込めて、☆ を付けてみることにします。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2023年夏 青森大会)