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 黒木 陽琉(神村学園3年)投手 183/78 左/右
 




「手元まで来ない」





 バックネット裏からだとそれほど感じられなかったのだが、センターカメラからの中継で見ていると、思ったほどボールが手元でグッと来る感じがしなかったのが、この 黒木 陽琉 のボール。甲子園前には進学が噂されていた選手だったが、大会後にプロ志望であることを明らかにし一躍注目されることになる。


(投球内容)

 均整の取れた体格から、バランス良く投げ込んで来る正統派。夏の甲子園では、
5試合 22回2/3 12安 9四死 23三 防 1.99 の活躍で、一躍全国にその存在を知らしめました。

ストレート 135キロ前後~142キロ ☆☆★ 2.5

 球速の出にくい甲子園のガンだったので、球速自体が出ていないことはそれほど問題はなかった。しかし気になったのは、まだまだ打者の手元でグッと来る感じの球質ではなく、私には物足りなく感じられた。現地で測っていた人の話では、140キロ台後半も記録していたほどの球速だったというが・・・。コントロールは、大まかに両サイドに散らせて来ることができていた。22回2/3イニングで9四死球と、四死球率は39.7%とやや高いが、
荒れ荒れというよりはアバウトといった感じだろうか。

変化球 スライダー ☆☆☆ 3.0

 投球のほとんどは、
曲がりながら沈むカーブのような軌道のスライダー。ほとんどシュート系の球は見られず、それでいてもっと緩いカーブがあるわけでもない。ひょっとすると、カウントを稼ぐスライダーと、空振りを誘うスライダーを使い分けている可能性はある。奪三振は投球回数を上回っており、三振の多くはこの球で奪っている。

その他

 牽制は、軽く「間」を外すような軽いもの。クィックは、1.15秒前後と平均的。ベースカバーなどへの入りも、並ぐらいだろうか? 特に細かい出し入れや、「間」は使ってボールを長く持つといった感じではないが、
落ち着いて自分の投球に徹しられ投球にムラのあるタイプではなさそうだった。

(投球のまとめ)

 現状は、恵まれた体格、キレいなフォームといった
素材を評価すべき選手で、現時点での実力は本会議での指名はボーダーラインクラスの選手といった印象を受けた。ただし、左腕だということも考えると、本会議の間に指名してくる球団があっても不思議ではないのだが。





(投球フォーム)

 
実際の投球内容だけでは判断がつきかねるので、フォームを分析して将来像を探ってみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足の膝がピンと伸び切るような力みは感じられないが、軸足一本で立った時のバランスは平均的だった。

<広がる可能性> 
☆☆☆☆ 4.0


 引き上げた足は高い位置で伸ばされており、お尻は三塁側(左投手の場合は)に落ちている。したがって、体を捻り出すスペースは確保できており、カーブで緩急を付けたり、フォークのような縦の変化などは、無理なく投げられる。

 また適度に前に足を逃がすこともできているので、体を捻り出す時間もそれなりに確保。そういった意味では、曲がりの鋭い変化球を投げられる下地は整っている。将来的にも、投球の引き出しも増やすことができそうだ。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで体の近くに抱えられており、外に逃げようとする力を内に留めることができている。したがって軸はブレ難く、両コーナーへの投げ分けは安定しやすい。

 
足の甲での地面の捉えが浅いので、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。「球持ち」は並ぐらいで、指先の感覚も平均的か。けして荒れ荒れの投球ではないが、繊細なコントロールを武器にして行くといったタイプではないのかもしれない。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻はしっかり落とせているので、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種で負担は少ないのでは? しかし気になるのは、腕の送り出しの際に、
ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている方の肩が下がる極端な送り送り出しなので、肩への負担は大きいそう。それでもまだ力投派といったフォームではないので、そこまで疲労を溜めやすくは無さそうだ。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは適度にあり、ボールの出どころは隠せている。そういった意味では、打者としては合わせやすいフォームでは無いだろう。

 一方で、振り下ろした腕が体に絡んでくるような、腕の振りの鋭さや「球持ち」の粘り強さは物足りない。またボールへの体重の乗せも不十分といったほどではないものの、投げ終わったあとバランスを崩したりして、まだ作り出したエネルギーを充分には指先まで伝えきれていないように見えた。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「球持ち」と「体重移動」に課題を残している。制球を司る動作は並だが、肩への負担など故障のリスクは心配。それでも将来的に、好い変化球を覚えて投球の引き出しは増やして行けそうなので、現時点で球種が少ないのは気にしなくても良さそうだ。


(最後に)

 本会議か育成かの判断は、正直迷うところである。だから大学進学と訊いたときは、それもありだろうと正直思っていた。仮に志望届を提出した場合には、将来性のある左腕ということで、本会議の終わりの方には指名されるのではないのだろうか。私も、その辺ならば面白ろそうな素材だと評価したい。


蔵の評価:
 (下位指名級)


(2023年夏 甲子園)