23kp-32





小森 勇凛(土浦日大)投手 183/83 右/右 
 




「全く知らなかった」





 木村 優人(霞ヶ浦)を観にいった試合で、相手チームの投手が想像以上に良くて驚いた。その男の名前は、小森 勇凛 。チームは、この試合を勝って関東大会まで駒を進めることになる。


(投球内容)

 オーソドックス右上手投げの投手なのですが、この春は 
20回1/3 15安 12四死 25三 防 1.77 といった内容でした。関東大会では打ち込まれましたが、今年度の茨城を代表する投手の一人になりそうです。

ストレート  130キロ台後半~MAX90マイル・144キロ ☆☆☆ 3.0

 球速の出やすい土浦のガンでは、初回はガンガン140キロ台中盤~後半を連発。しかし、私のガンでは、89マイル・143キロが最高でした。関東大会で計測したときにも、MAX90マイル・144キロほどでした。むしろこの投手は、真っすぐの球威や球速で押すというよりも、
両サイドに散らせて変化球で打ち取るコンビネーションタイプ。真っすぐの質という意味では、ドラフト候補としてのインパクトはそこまでではありませんでした。

変化球 チェンジアップ・カーブ・スライダーなど ☆☆☆★ 3.5

 チェンジアップだかシンカーだか? 
シュート回転して沈む球とのコンビネーションが目立ちます。他にも緩いカーブやスライダーも使ってきますが、多くがチェンジアップ系の球とのコンビネーションです。どの球も打者の空振りを誘うというよりも、打ち損じを誘うタイプの球だとは思いますが、春季大会では投球回数を上回る奪三振が奪えていました。

その他

 クィックは、1.05~1.15秒 とそれなりで、牽制も適度に鋭いものがあり下手ではありません。走者を出しても、ボールを長く持って走者や打者を焦らすなど、投球センスも悪くありません。
要所では踏ん張れる精神力や力の強弱も付けられるますし、制球力含めてまとまりのある好投手といった感じがします。

(投球のまとめ)

 高校からプロといったほどのインパクトは感じませんでしたが、総合力の高い投手であるのは確かです。現状は、有力大学などに進んで、1年時からリーグ戦に登場して来るような、そんなイメージが抱けるタイプです。さらに夏までに上積みが出てくると、プロも放ってはおけない存在になりうる可能性は秘めています。






(投球フォーム)

 
フォームの観点から、今後の可能性について考えてみたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いは並なものの、高い位置まで引き上げてくる。軸足一本で立った時に、軸足の膝から上がピンと伸び切ってしまっているものの、高く引き上げた足によって上手くバランスをとって立てていた。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 少し前に倒れ込み気味重心は下げてくるものの、最終的にはお尻はある程度一塁側に落とせている。甘さは残すものの、カーブやフォーク系の球を投げられないというほどではないように思える。

 前の足を逃がすのが上手く、
「着地」までの時間を適度に稼ぐことができている。そういった意味では、曲がりの大きな変化球の習得期待できるのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブがしっかり抱えられず解けて、最後は遊んでしまっている。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはアバウトになりやすいのでは?足の甲での地面の捉えも、まだ少し浅くその時間も短いように思える。そうなると浮き上がろうとする力も充分抑えられず、ボールが上吊りやすい要因を作るのでは? それでも大きく制球を乱さないのは、
「球持ち」が良く指先の感覚もさほど悪そうではないからではないのだろうか。

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻の落としには甘さは残すものの、そこまで気にすることは無さそう。沈む球がフォークのように挟んでいるような場合は、かなり投げる頻度が高いので肘のケアには気をつけて欲しいところですが。

 ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が若干下がり気味ではあるものの、この辺も肩に負担がかかるといったほどでは無いように見えます。ただし、結構フィニッシュに向けて力投派のフォームになっているので、
疲労は溜まりやすい恐れはあります。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りも適度に作れていますし、ボールの出どころも隠せています。そういった意味では、投げミスをしなければ、それほど合わされやすいフォームではないようです。むしろ投球が、単調にならないことに気をつけたいところです。

 
腕も思った以上に強く振れているので、打者としては勢いで吊られやすいのでは。このへんは、見た目以上の奪三振の多さにも現れています。ボールにも適度に体重を乗せてからリリースできているようには見えるのですが、投げ終わったあと一塁側に流れるなど最後までしっかりエネルギー伝達ができていません。若干ステップ幅を広げられる股関節の柔軟性が作れるようになって安定してくると、ボールの質も変わって来るかもしれません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、非常に実戦的なフォームをしています。しいて言えば、一塁側に流れてエネルギーをロスしてしまう「体重移動」にまだ課題を残します。制球を司る動作が粗い割には、そこまで荒れ荒れではありません。それ以上に、結構な力投派のフォームでもあり、故障のリスクには気をつけたいところ。投球の幅は、今後もっと広げて行けるのではないのでしょうか。


(最後に)

 まだ高校からプロといった訴えて来る感じのボールではないものの、制球力・投球術・投球のメリハリなど総合力に優れた好投手です。大学などで総合力が引き上げられれば、4年後は即戦力候補として評価されてのプロ入りも望めるかもしれません。基本的に進学タイプだとみていますが、夏まで追いかけて、その辺を見極めてみたい一人です。


蔵の評価:
追跡級!


(2023年 春季茨城大会)