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盛田 智矢(報徳学園3年)投手 187/92 右/右 





「旬と見るべきか?」 





 投手としての形が、ある程度ハッキリしてきている 盛田 智矢 。 投球の基礎ができているだけに、次のステップに進みやすく、環境が整えば一気に才能が爆発可能性もある。その一方で、今のままだと、プロの世界では中途半端になりかねないという恐れもある。果たして今が、彼のプロ入りの「旬」と判断するのかには悩む。


(投球内容)

 非常に報徳らしい、正統派の本格派といった気がします。決勝まで進んだ選抜では、
4試合 13回2/3 9安 9四死 11三 防 3.95 といった数字を残している。

ストレート ☆☆☆ 3.0

 球速こそ130キロ台中盤~MAXで140キロぐらいと、ドラフト候補としてはやや物足りない。それでも、指にしっかりかかったボールが投げ込まれており、一冬越えて球威も増してきた印象がある。そういった意味では、球速の部分はあまり気にならない。むしろ、やや高めに抜けたり、左打者相手に対してはアバウトになる傾向が見られる方が気になった。厳しいところを突こうという意識もあるのかもしれないが、13回2/3で9四死球と、四死球率が 65.9% と多かったのは意外でもあった。

変化球 スライダー・カーブ・チェンジアップ・フォーク? ☆☆☆★ 3.5

 多彩な球種を、器用に操れる投手との印象が受けます。ブレーキの効いたカーブも使えますし、縦に沈む球も投げられます。しっかり変化球でカウントを整えられますし、各変化球のキレも悪くはありません。ただし、まだ絶対的に頼れる球種は無く、
コンビネーションで打ち取ってゆく総合力でして行く投手ということになろうかと。

その他

 牽制は適度に鋭く、フィールディングは平均的。クィックは、1.1~1.2秒 ぐらいと基準レベルのものはありそう。
冷静に相手を見て対峙できているところに、投手としてのセンスの良さは感じられます。

(投球のまとめ)

 
現時点では、特に突出したものはありません。投手としてのセンスの良さと土台がしっかりしているので、その上にいろいろ積み上げて行けるのではないかという期待が広がります。ただし、その積み上げてゆく作業を、結果の求められるプロの世界でやるべきなのか? 段階を踏んでアマで行ってゆくべきなのかの判断は難しいところです。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から将来像を考えてみましょう。セットポジションから、足を引き上げる勢いは並ぐらいですが、高いところまで引き上げてエネルギーを作り出します。軸足一本で立った時にも、膝がピンと伸び切ることがないので、力みなくバランスを保って立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 お尻の一塁側への落としには甘さは残すものの、カーブやフォークといった球種が投げられないほどではありません。ただしスペースが充分ではないので、その変化は鈍くなりがちになる可能性があります。

 「着地」までの地面の捉えもそこそこで、体を捻り出す時間もそれなり。多彩な球種は操れるものの、空振りを誘えるほどの曲がりの大きな球を身に付けられるかは微妙なフォームにはなっています。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留められています。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすいのでは? ただし、
足の甲が地面から浮いてしまっているので、浮き上がろうとする力を抑えられず、ボールが上吊りやすい要因になっている。「球持ち」はボールを前で放せていて、指先の感覚も悪くは無さそうに見える。ただし、四死球が多いのは気になる材料。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としに甘さは残すものの、カーブやフォークの頻度なども多くはない。現状の割合ならば、特に肘への負担などにナーバスになることは無さそう。腕の送り出しを見ていると、極端ではないものの、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている肩が下がりがち。そういった意味では、肩への負担は少ないとは言えない。けして力んで投げている感じはないものの、腕を強く上から叩くフォームで、それなりには疲労が溜まるフォームなのかもしれない。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。打者としては、合わせやすいということはなくても、嫌らしさも感じられないのでは? 腕はしっかり振れて叩けているので、打者としては勢いでは吊られそう。前にしっかり体重移動ができているように見えるが、足の甲が地面から浮いてしまい、下半身のエネルギー伝達が充分とは言えない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」以外は平均的で、まだまだ良くなる余地は残されていると考えます。制球を司る動作や投球の幅を広げて行くことは期待できる土台があるので、足の甲の地面捉えなどで
高めに抜けたり、左打者への制球がアバウトになるコマンドの部分が、今後の大きな改善ポイントになるのではないのでしょうか。


(最後に)

 現状は、
投手としての土台もセンスも悪くないけれど、本当の意味で突き抜けた特徴がないよねといったところに尽きると思います。そのため中途半端な形でプロ入りすると、特徴を見出だせず自分を失いかねません。そういった意味では、確かな力を付けてからでもプロ入りは遅くはないのではと考えます。実力的には、今の力でもプロ入りできるぐらいの土台は構築されていると思いますが、「旬」というものを意識するのであれば、有力大学などに進んで、確かな実績と総合力を高めてからの方が、私は良いように感じられました。  一つぐらいは付けても良さそうなパフォーマンスですが、夏までに劇的に変わらない限り、 はあえて付けないつもりです。


(2023年 選抜大会)