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 日当 直喜(東海大菅生3年)投手 190/98 右/右





 「プレゼンが上手い」





 緒戦の徳島城東戦では、リリーフ出てきて全て真っすぐで押して力強さをアピール。続く沖縄尚学戦では、先発して変化球を交えて9回を完封して魅せた 日當 直喜 。 けして力だけでなく、技術もあるのだということを、周りに強く印象づけることに成功した。


(投球内容)

 高校生離れした巨体から繰り出す
重い球が武器で、この選抜では 3試合 17回 12安 5四死 15三振 防 1.06 。一冬越えて、大きく成長したことを魅せつける大会となった。

ストレート 130キロ台後半~MAX148キロ ☆☆☆☆ 4.0

 その球速以上に、ボールの重さが印象的。
結構真っ直ぐ自体は暴れるものの、大まかに両サイドに散って来る感じ。球質は、完空振りを誘うというよりも詰まらせるタイプ。この球威は、高校球界でも指折りのものを誇っているのではないのだろうか。

変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆★ 3.5

 小さく横滑りするスライダーでカウントを整えたり、緩いカーブも使ってきてアクセントにできている。まだストンと落ちることは少ないものの、かなり確率で沈む
フォークボールが大きな武器。真っ直ぐが暴れても、四死球を多く出さないで済んでいるのは、変化球でカウントを整えられるから。また、けして力で押すだけでなく、上手く投球に変化球を織り交ぜることができていた。

その他

 クィックは、1.15~1.25秒 ぐらいで、さほど上手くはない。フィールディングは、思ったよりは動けていて平均レベルはありそう。牽制はよくわからなかったり、それほどコーナーに集めるとか、間を使ってといった投球ではないように見えた。あくまでも、
ボールの威力・スピードや球種による変化で抑えるタイプではないのだろうか。

(投球のまとめ)

 秋までは、もっさりしていてダルい感じの投球でした。特に体にキレが出てきたわけではないのですが、真っすぐの強さ・球速が増して見栄えがするようになってきたのと、変化球とのコンビネーションが上手くマッチするようになってきたように思えます。ただ、選抜では好いところばかりを魅せつけた印象で、このへんはもう少し慎重に見極めて行く必要はあるのかなといった印象は残った。それでも、
力と技のバランスの取れている稀な素材であり、この選抜では最も評価を高めた投手だったのは間違いないのではないのだろうか。





(投球フォーム)

 今度は、投球フォームを分析して、今後の可能性について考えて行きたい。セットポジションから足をゆっくり引き上げるも、高いところまで引き上げてエネルギーを捻出してくる。軸足一本で立ったときにも、適度に膝に余裕を持って力みなく立つことができバランス良く立てていた。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっています。そのため体を捻り出すスペースは確保できず、カーブやフォークを投げるのには無理のあるフォームであるように思えます。したがって、そういった球の変化は、どうしても鈍くなりやすいのではないのでしょうか。

 前に足を逃がす意識はあるので、体を捻り出す時間は並ぐらい。ゆえに、現時点では変化球の好い投手に見えるものの、
上のレベルの打者には、何処まで変化球が通用するのかには不安が残ります。

<ボールの支配> ☆☆★ 2.5

 グラブは最後まで内に抱えられているため、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドへの制球はつきやすいのでは?

 ただし、
足の甲での地面の捉えが浮いてしまっているので、浮き上がろうとする力を抑え込めていない。「球持ち」が悪い投手ではないように見えるが、ボールが抜けたり高めに行きやすい印象を受ける。真っすぐの暴れ方をみると、けして指先の感覚も良くは見えない

<故障のリスク> ☆☆★ 2.5

 お尻の落としができない割に、カーブやフォークを多めに使うので窮屈になりやすい。したがって、
肘などへの負担が気になるフォームではある。腕の送り出しに関しては、角度はあるものの違和感はあまり感じられない。そういった意味では、肩への負担はそこまでではないのでは。 リリーフでは力投派になるものの、先発では力み無く投球できていた。このへんは、使われる役割によっても、疲労の溜まり具合は大きく変わってきそう。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で、ボールの出どころも並ぐらい。特に打者にとって合わせ難いことはないと思うが、巨体から投げ込まれる圧力と、高校生離れした球威に圧倒されてしまう恐れはある。

 
腕は強く叩けており、そういった意味では打者は思わず吊られてしまう勢いがある。足の甲が地面から浮いて下半身のエネルギー伝達が上手くできていないのと、投げ終わったあと一塁側に重心が流れてしまうことで、指先までまだ力は伝えきれていない。このへんのアンバランスさが、まだ空振りを取れるような球を投げられない要因なのかもしれない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「体重移動」にまだ課題を抱えている。高めに抜けやすい制球力、窮屈になりやすく故障のリスクがあること。上のレベルの打者相手に、武器になるほどの変化球を修得して行けるかの不安など、伸び悩む要素も少なくない。テクニカル的には、実際のパフォーマンスよりもリスクを抱えている素材なのかもしれない。


(最後に)

 確かに、
秋~選抜での成長には目を見張るものがあり、それなりに高い評価をしないと行けないと思わせるだけのものがあった。その反面、ちょっと選抜では上手く行き過ぎているのでは?という不安と、技術的には伸び悩む要素が少なくないことも抑えておきたいポイント。それでも選抜でのパフォーマンスだけで言えば、3位前後の評価はできる選手ではないのだろうか? 夏に向けてさらに評価を高めて行けるのか? それとも少し評価を下げて行くのが妥当なのか? もう少し慎重に、見極めて行きたい。


蔵の評価:☆☆ (中位指名級)


(2023年 選抜大会)