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南 恒誠(大阪桐蔭3年)投手 186/87 右/右
 




「普通にドラフト候補だった」 




 
前田 悠伍 と並ぶ、大坂桐蔭の左右の二枚看板である 南 恒誠 は、普通にドラフト候補として位置づけられても不思議ではない内容だった。特にそれを印象づけたのは、緒戦で話題になった 森岡 大智(能代松陽)と投げあった試合。明らかに投球内容は、この南の方が上回っていたと言っても過言ではなかった。

(投球内容)

 スラッとした投手体型から、140キロ台の球を連発してきます。準決勝まで勝ち上がった大坂桐蔭でしたが、結局登板したのは、エースの前田と、この南だけだった。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 
☆☆☆★ 3.5

 
初回から指にかかった真っ直ぐが、両コーナーにしっかり決まっていました。ボールの質としても悪くないですし、コマンドにも確かなものがあります。高校生というよりは、大学生の投球を見ているような安心感があります。特に、腕の振りの良さがあり、打者の内角へも厳しく突くことができます。少し球筋が高いのと、凄みのあるといった投球ではありませんでしたが。

変化球 カーブ・スライダー・チェンジアップ 
☆☆☆★ 3.5

 真っ直ぐ同様に、カーブ・スライダー・チェンジアップを織り交ぜ、安定したキレと制球力があります。
小さく沈むチェンジアップが、この投手の最大の武器ではないのでしょうか。

(投球のまとめ)

 
体格には恵まれていますが、凄みのある素材というよりも、実戦力に優れた総合力の優れたタイプです。仮にプロではなく大学などに進んでも、下級生から活躍して行けるだけの完成度があります。ただし、すでにある程度のレベルまで来ているので、彼には大学の4年間は長すぎるかもしれません。





(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から、その可能性について考えてみましょう。ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いは並も、比較的高いところまで引き上げてくる。軸足の膝はピンと伸びがちだが、全体的には適度にバランスを保って立てていた。

<広がる可能性> 
☆☆☆★ 3.5

 引き上げた足を地面に向けがちなので、お尻の一塁側への落としには甘さを残す。それでも、カーブやフォークといった、捻り出して投げる球種を投げられないほど窮屈ではない。

 「着地」までの地面の捉えもそれなりなので、体を捻り出す時間もある程度確保できている。武器になるほどの大きな曲がりの変化球を修得できるかは微妙だが、ある程度の質の変化球を修得できる土台は持っている。

<ボールの支配> 
☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで体の近くに抱えられており、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができている。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすい。

 足の甲での地面の捉えが浅いので、浮き上がろうとする力を抑えきれずにボールが高めに集まりやすい。「球持ち」などは悪くなく、
指先の感覚にも優れたタイプではあるだろう。制球を崩して苦労するといったことはなく、ゾーン内の制球がこれからの課題となりそうだ。

<故障のリスク> 
☆☆☆★ 3.5

 お尻の落としに甘さはあるものの、それほどカーブを多く使うわけでも、フォークのような球種も観られない。そういった意味では、この点はあまり気にしなくても良さそう。

 腕の送り出しを観ていても、肩に負担がかかっている感じはしない。腕の振りは良い選手だが、けして力んで投げている感じもしないので、疲労を溜めやすいということも無さそうだった。

<実戦的な術> 
☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りもそれなりで、打者から合わされやすいということも無さそう。ボールの出どころも並ぐらいで、特に見やすいといったほどではない。打者に嫌がられるようなフォームではないが、大きな欠点は見当たらない。

 特にこの投手の素晴らしいのが、腕の振りの良さ。そのため打者からすれば、思わず吊られてしまう勢いが感じられる。ボールへの体重の乗せという意味では、まだまだ良くなる余地は残されている。それでも現時点で、
打者の手元まで生きた球が投げられていた。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である、「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「開き」や「球持ち」などが並で、さらに良くなる余地が残されている。制球を司る動作も悪くなく・故障のリスクもなど少ない。将来的に武器になるほどの変化球を修得できるかは微妙だが、変化球一つ一つのクオリティは悪くないはず。全体的には、
高い次元でまとめられた実戦的なフォームだと言えるのではないのだろうか。


(最後に)

 投球を観ていると、ボールの威力のみならず、制球力・投球術・変化球 とある程度のレベルまで来ており、大人びた投手との印象があります。そういった素材としての凄みみたいなものはないのですが、土台がすでにできているので、
早い段階で次のことに進んで行けそうな選手ではあるように思える。こういった選手は、短期間でグッと伸びてくる可能性があります。本人がプロ志向であるかはわかりませんが、夏までのさらなる成長があるようだと、高校からの本会議でも指名も現実味を帯びてくるのではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2023年 選抜大会)