23kp-2
平野 大地(専大松戸3年)投手 182/86 右/右 | |
一冬越えて、どんなに成長しているのかと期待された 平野 大地 。しかし、選抜での登板は、こちらの期待ほどではなかったというのが率直な印象だった。秋は故障がちだった上に、この冬も思い通りの投げ込みができないまま選抜を迎えたのだという。彼の現在地について考えてみたい。 (投球内容) この春の選抜では、3試合 19回1/3 20安 5四死 16三 防 2.33 。連戦を意識してか、変化球を多めに投げてくる印象だった。 ストレート 140~146キロ ☆☆☆★ 3.5 圧倒的ではないが、時々投げ込まれる真っすぐの球威・勢いには光るものがあった。その球からも、好調時には150キロ台を記録するという、能力の片鱗は感じられる。ただし、真っすぐは高めに集まりやすく、開きも早いせいか? 合わされやすい傾向も見られる。 変化球 スライダー・カーブ・フォークなど ☆☆☆★ 3.5 大きく切れ込むスライダーが武器の選手だが、カーブで緩急を利かしたり、オフシーズンの間に修得したというフォークでも適度に空振りを誘えていた。今後は、曲がりの小さなカットボール系の球を修得したり、フォークの精度が高まるにつれ、そういった球をさらに混ぜたピッチングになってゆくのではないのだろうか。 その他 牽制は適度に鋭いが、クィックは1.2秒前後とやや遅め。それでも走者を出せば、ボールを長く持つなど、そういった細かい意識や器用さは持ち合わせている。 (投球のまとめ) もっと真っすぐでガンガン押してきても良いだろうという物足りなさは残したものの、この選手は力で押すというよりは変化球とのコンビネーションで勝負するタイプなのだろう。夏までに、この速球に上積みが持てるようだと、上位候補として有力視されるのではないのだろうか。 (投球フォーム) ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いは並ぐらいだが、高いところまで引き上げてエネルギーを捻出している。軸足の膝はピンと伸びがちだが、全体的にはバランスよく立てていた。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 引き上げた足は地面に向けて伸ばしているので、お尻の一塁側への落としは甘さを残します。したがって体を捻り出すスペースが充分ではないので、カーブやフォークといった球種の変化は鈍くなりやすい可能性があります。 ただし、前に足を大きくステップさせることで、体を捻り出す時間は確保。こういった球種以外ならば、曲がりの大きな変化球を身につけられても不思議ではありません。逆にスライダーが変化しすぎているので、もう少し制御するという意味では、カットボールのような小さな変化も必要になってくるのではないのでしょうか。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで体の近くに抱えられているので、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両コーナーへの制球は安定しやすいのでは? 足の甲での地面の捉えが若干浅い気がするので、今後もう少しステップの幅を広げられると、浮き上がろうとする力を抑えられるようになりそう。「球持ち」自体は悪く無さそうで、指先の感覚も水準以上ではないのでしょうか? それほど制球を乱してといったことは、無さそうに見えました。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻の落としに甘さは残すものの、そこまでは大きな負担には見えない。今後、カーブやフォークを使う頻度が増えてきた時などは、肘のケアにも充分気をつけて欲しい。秋から故障がちだったことも考えると、その点は多少気がかりに感じる。 腕の送り出しを見ていても、肩への負担はそこまで大きくは無さそう。けして力投派でもないので、疲労もそこまでは大きくないのでは? ただし、選抜では投げ込み不足のまま甲子園に来たとのこと。それだけに、立て直した夏に何処までの投球ができるのか注目される。 <実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5 「着地」粘りは適度に作れているものの、「開き」が早くボールが見えやすいのは気になる材料。コースを突いたはずの球が打ち返されたりとか、縦の変化を振ってもらえないという弊害は出てくるかもしれない。選抜でも投球回数を上回る被安打を浴びているのは、この辺のフォームにも原因があるのかもしれない。 腕は強く振れており打者も吊られやすそうなのだが、上記に書いたようにボールが見やすいので、その効果は限定的。適度に体重を乗せてからリリースできているが、まだ投げ終わった一塁側に重心が流れるなど、途中で力をロスしてしまって指先まで力を伝えきれていないのは惜しい。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」に改善の余地がありそう。制球を司る動作や、今後投球の幅を広げてゆくという意味でも悪く無い。それほど負担が大きいとは思えないものの、故障への不安は拭えないだけに、体のケアには充分注意してもらいたい。まだまだ技術的には、良くなれる余地を残している。 (最後に) 選抜では、こちらの期待値までには到達していなかったものの、やはりこの投手の持つ可能性・素材という部分では改めて良さを認識させられた大会となった。気になるのは、秋から続く故障の陰であり、この辺が今後も付きまとわないかという部分。その不安を払拭するほどのパフォーマンスを夏にしてくれれば、上位指名の有力な候補となるのではないのだろうか。現状は、2・3位クラスの評価といったところが妥当なラインではないのだろうか。 蔵の評価:☆☆☆ (上位指名級) (2023年 選抜大会) |