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前田 悠伍(大阪桐蔭3年)投手 180/80 左/左 
 




「健在ぶりをアピール」





 U-18のワールドカップ・アメリカ戦で先発した 前田 悠伍 。この試合で、5回2/3 8三振 無失点で抑えるなど、強敵に相手に見事なピッチングを魅せた。夏の大阪大会では、僅か2試合の登板で敗れ消化不良のまま敗退。選抜以降順調さを欠いてきて心配されたが、この試合で健在ぶりをアピールすることができた。


(投球内容)

 何より驚かされたのが、味方の接触事故や判定を巡り途中大きく空く時間がありながらも、集中力を切らさず自分の投球を貫きことができた点。特に台風接近で雨が叩きつけるなか、自分の投球ができた点は、あらかじめ
この選手の精神力の強さを実感させられた。

ストレート 135~140キロ台中盤 ☆☆☆★ 3.5

 
球威・球速にこそ驚くべきものはなかったが、腕の振りを生かしたキレのある真っすぐは健在。時々高めに浮くこともあるものの、右打者の内角クロスへ厳しく投げ込んだり、微妙な出し入れをしたりと、その投球術の巧みさ、コントロールの高さを実感させられた。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆☆ 4.0

 この投手の良さは、
速球派でありながら、変化球のキレ・精度にも優れている点。特に、右打者外角に沈むチェンジアップは、プロでも充分に通用しそうな変化と精度をしている。他にも左打者の外角に切れ込むスライダー、それに緩いカーブなども織り交ぜてくる。真っすぐは結構投げミスがあったりするが、変化球が低めに集まることが多いのが、この選手の良さではないのだろうか。

その他

 投球動作と見極めの難しい牽制に、クィックも0.9秒台の高速で投げ込める。フィールディングの動きも良く、判断も実に冷静。 微妙な出し入れができる制球力や技術があり、要所で踏ん張れる精神力に、大舞台でも安定したパフォーマンスを示せるという意味では、高校生離れしている。

(投球のまとめ)

 選抜の頃と比べ、目に見えて球威や球速が上がった感じはしません。ただし、投げ込み不足だった夏の大会の頃と比べるとと、復調気味だなといった印象は受けました。夏の大会前の練習試合でもほとんど登板できなかったことを考えると、状態面もかなり上げて国際試合に挑めているのではないのでしょうか。大きな上積みがなくても、能力が損なわれてはいないことが証明されただけでも、この選手の評価にとっては大きな意義を持っているように思えます。






(投球フォーム)

 では、選抜の頃と比べ、技術的に何か変化があったのかみてみたいところです。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さは並ぐらい。軸足の膝には力みはなく、適度なバランスを保って立てています。春はノーワンドアップからのフォームであり、もう少し高い位置まで足を引き上げてきたり、軸足立った時にも膝がピンと伸びがちで、力みが感じられる立ち方でした。先発投手らしい、ゆったりとしたモーションに変わってきました。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を比較的高い位置でピンと伸ばしているので、お尻の三塁側(左投手の場合は)への落としは悪く有りません。したがって体を捻り出すスペースは確保でき、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種は無理なく投げられます。

 また、前に足を適度に前にステップさせ逃がすことができているので、体を捻り出す時間も確保。曲がりの大きな、良い変化球を投げられる下地があります。真っ直ぐだけでなく、変化球に特徴があるのも、これらの動作が大きいのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは内に最後まで抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすいのかと。

 むしろ、
足の甲での地面の捉えが少し浅い傾向にあります。それだけ浮き上がろうとする力を充分には抑えられていないので、ボールは上吊りやすい傾向にあります。それでも大きく制球を乱さないのは、「球持ち」が良く指先の感覚に優れているからだと考えられます。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻を落とせている上に、カーブもあまり使わないですし、現状フォークのようなストンと縦に落ちる球種もみられません。そういった意味では、肘への負担などは少ないのでは?

 腕の送り出しを見ていても、肩への負担もあまり感じられません。けして力投派でもないので、疲労も溜めやすくはないように見えます。ただし、夏の大会の調整が遅れたように、体の何処かの具合が悪いのかもしれません。

<実戦的な術> ☆☆☆☆ 4.0

 「着地」までの粘りも適度に作れており、ボールの出どころも隠せています。したがって打者としては、球速以上にタイミングが図り難いのではないかと。

 振り下ろした腕はしっかり腕に絡むなど勢いがあり、打者としては吊られやすいです。ボールに適度に体重を乗ってからリリースできているように見えますが、まだ股関節の柔軟性と下半身の筋力強化で、もっと体重がグッと乗せて投げられるようになっても不思議ではありません。

(フォームのまとめ)

 フォームの4動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」でも、大きな欠点はありません。しいて言えば、もう少し「体重移動」が良くなる余地が残されているぐらいか? 制球を司る動作に優れ、故障のリスクも低くそして将来的に武器になる変化球の習得という意味でも高いレベルでまとまったフォームです。
左腕でこれだけ、理にかなったフォームで投げられる選手も極めて稀ではないかと感じました。しいて言えば、夏までに充分に投げ込めなかった理由が、今後のパフォーマンスに影響しないのか? といった部分でしょうか。


(最後に)

 球威・球速、フォーム技術に至るまで、微調整はしていても根本的には大きくは変わっていないのかなと感じます。U-18の投球を見ていると、元々このぐらい投げられる能力があった選手。夏の予選がイマイチだったことで、その能力が損なわれていないことが証明されました。問題は、
下級生の頃からの成長、あるいは今後の伸び代がどのぐらい残されているのか?といった部分。しかし、左腕であることを考えると、あまりその点は気にしなくても良いのかなと思います。評価的には春と変わりませんが、悪くても3年目には一軍のローテーションに定着してくる。そういった青写真を、描くことができる貴重な存在ではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆☆☆(1位指名級)


(2023年 U-18ワールドカップ)









前田 悠伍(大阪桐蔭3年)投手 180/77 左/左 





「内面の強さはピカイチ」 





 前田 悠伍 の何が凄いかと訊かれれば、ボールの凄みでも投球の上手さでもなく、ピンチになればなるほど能力が引き出されるハートの強さにあると私は応えるだろう。


(投球内容)

 この選抜は、
21回2/3 19安 3四死 28三 防 1.25
 。被安打率は高いものの、無駄な四死球がなく、三振が取れるので失点は少ない。

ストレート 135~MAX147キロ ☆☆☆★ 3.5

 左投手の球速が出にくい甲子園のガンであることを考えると、選抜であまり球速が出ていなかったことは気にしなくても良いのではないのだろうか。
腕が良く振れるようになり、ボール自体のキレ・勢いは昨夏よりも増したようにに思える。また、両サイドにしっかり投げ分けられる制球力もあり、想像以上に左腕にしてコントロールが良いところも、この投手の魅力ではないのだろうか。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブ・ツーシーム ☆☆☆☆ 4.0

 彼の良さは、
変化球のキレ・精度が高いということ。とかく左腕の候補の場合、真っ直ぐが良い投手は変化球がイマイチな選手が多い。しかし、彼の場合は、スライダーやチェンジアップを低めに決めることができ、実に効果的。特にチェンジアップは大きな武器であり、プロでも通用する球種だと考えられる。

その他

 左腕らしく、投球動作と見極めの難しい牽制を入れてくる。クィックも、0.9秒台で投げられており、昨年よりも鋭くなっていた。フィールディングも卒がなく、投球においては、投げるタイミングを変えるなど工夫がみられた。

(投球のまとめ)

 球速が目にみえて上がってきてはいかなかったので、伸び悩んでいるのではないかとみるむきもある。しかし私は、腕の振りやボールのキレは増しており、その点はあまり気にならなかった。気持ちが勝ってしまい、冷静な投球ができるのかといった課題も、ピンチになればなるほど、力が出せるようになっており、むしろ彼のアピールポイントになりつつある。一冬越えて、さらに良くなっているのではないかと感じられる大会だった。



(投球フォーム)

 ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いは並ぐらいだが、高い位置まで引き上げてくる。軸足の膝はピンと伸びがちだが、足をやや二塁方向に送ることで上手くバランスをとることができている。

<広がる可能性> ☆☆☆☆ 4.0

 引き上げた足を比較的高い位置で伸ばせるようになり、お尻の三塁側(左投手の場合)の落としも、以前より良くなってきている。そのため、体を捻り出すスペースはそれなりに確保できており、カーブやフォークなどの捻り出して投げる球種の修得にも無理がなくなってきている。

 「着地」までも、前に足を逃がすこともでき時間を稼ぐことができている。したがって曲がりの大きな変化も望みやすく、変化球のキレが良いのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで体の近くにあり、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。そのため軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすい。足の甲での地面の捉えがまだ浅いので、力を入れて投げるとボールが高めに浮きやすい。動作自体はあまり変わっていなかったが、ボールが上吊るという感じはしなかった。

 「球持ち」自体も良く、ボールも前で放せていた。指先の感覚も悪く無さそうな投手なので、将来的には、制球力を兼ね備えたサウスポーになれそうだ。

<故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0

 お尻の落としも良くなってきており、カーブやフォークを投げても窮屈にはなり難い。また、そういった球も滅多に投げないだけに、肘への負担は少なそう。

 腕の送り出しを観ていても、肩に負担がかかっているようにも見えない。それほど力投派でもないので、疲労を溜めやすいということもなさそうだ。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りはそれなりで、ボールの出どころもある程度隠せている。特に打者が合わされ難いというフォームではないが、特別合わされやすいというほどでもないように見えた。

 腕はしっかり振れるようになり、打者は吊られやすい。そのため、この春も多くの三振を奪えていた。また、ある程度ボールに体重を乗せて投げられており、「体重移動」も悪くはない。昨年まではステップが狭く、投げ終わったあと三塁側に重心が流れていた。しかし今は、そういった場面は観られなくなり、作り出したエネルギーを素直にリリースまで繋げられるようになってきている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、大きな欠点が無くなってきている。故障のリスクは少なそうで、将来的にも武器になるような変化球の修得も望めそう。また、足の甲での地面の捉えが浅いのは変わっていなかったが、球が高めに集まりやすいということもない。また、フィニッシュまでエネルギー伝達もできるようになってきた。少しずつではあるが、技術的な部分でも改善が見られ良くなってきている。投球同様に、フォーム技術も高い選手だった。



(最後に)

 球速が目にみえて上がってきていないので、成長力に欠けると見るむきもあるのかもしれない。しかし、腕の振りが鋭くなり、そのぶんボールのキレを増してきた。フォーム技術も向上し、制球力や実戦的な部分でも成長しており、個人的にはオフの間に、いろいろ取り組んできたのだなというものを実感させてくれた。そういった手応えがあったので、彼の評価に陰りはないとみる。選抜の時点でも、1位指名級だと評価して良いのではないのだろうか。


蔵の評価:
☆☆☆☆ (1位指名級)


(2023年 選抜大会)









前田 悠伍(大阪桐蔭2年)投手の本当に凄いやつへ