上田　希由翔（明治大４年）三塁　１８２／９０　右／左　（愛産大三河出身）

「稲葉篤紀だと思えば」

　非凡な対応力を魅せる　上田　希由翔　。彼をどのようにイメージすれば好いのか考えると、ヤクルトや日ハムで活躍した　稲葉　篤紀　をイメージすれば良いのではないのだろうか？　毎年　１５本～２５本　ぐらいで、３割前後の打率を残す中距離・ポイントゲッター　といった感じだろうか。

走塁面：☆☆☆★　3.5

　一塁到達タイムは、左打席から速い時で　４．０秒前後で到達する。このタイムは、プロの左打者としては、中の上　クラス。ただし、4.2～4.3秒　ぐらいと平凡タイムであることも多い。盗塁数も、３年春のリーグ戦で残した５盗塁が最高で、あとはそれ以下の数字に留まっている。現状は動けない選手ではないが、足を売りにして行くというプレースタイルになって行くかには疑問が残る。

守備面：☆☆☆　3.0

　三塁手としては、打球の反応もよく守備範囲が広い。地肩も強く動きの良さが目立つのだが、意外にミスが多い印象を受ける。平塚合宿などを観ていてそれを強く実感したのと、レフトなどでも打球勘が悪く危なしかった。意外に守備が上手いと観られがちだが、現状は三塁の守備も含めて守備には不安が残る。

　確かに、適度に動ける走力と地肩の強さはあるものの、安定感という意味ではどうだろうか？　将来的に上手くなって行ける資質もありそうだが、意外に守備がネックになって使い所に困る。そういった、リスキーな一面も持っていることは、頭の片隅に入れておくべきではないのだろうか。

（打撃内容）

　今春のリーグ戦では、１２試合　３本　１２点　２盗　打率．３７２厘（３位）　の好成績を残した。特に大学選手権で魅せた、インハイの真っ直ぐを低い弾道でライトスタンドに叩き込んだ打撃は圧巻でした。また、外角の球を逆らわずにレフト前にはじき返す、上手さも兼ね備えています。

＜構え＞　☆☆☆★　3.5

　前の足を引いて、グリップを下げ気味に添えます。背筋を伸ばしつつ、両眼で前を見据える姿勢や全体のバランスとしてはまずまず。打席でも、リラックスして構えられているところは良いところ。

＜仕掛け＞　遅すぎ

　投手の重心が下る時に動き出しますが、本格的に動き出すのはリリース直前という「遅すぎる仕掛け」を採用。そのため、プロレベルのスピードやキレのある球に対し、苦労する危険性を秘めているようにも思えます。ただし、昨年から「早めの仕掛け」で打つこともあり、どうやって使い分けているのかは不明です。

＜足の運び＞　☆☆☆　3.0

　小さくステップして、ベースから離れた方向に踏み出します。始動～着地までの「間」は短くに、あらかじめ狙い球を絞り、その球を逃さないことが求められます。ただし、この選手の場合は、上げた足を地面に一度着いてからすぐに動き出すのは、そこでタイミングを図っており、意外にその弊害が少ないとも考えられます。

　踏み込んだ前の足は、インパクトの際にもブレません。アウトステップで内角への意識が強いように見えますが、甘めの外角球や高めの球なら充分対応できます。

＜リストワーク＞　☆☆☆☆　4.0

　打撃の準備である「トップ」の形は自然体で、力みなくボールを呼び込めているところは良いところ。けしてインサイドアウトのスイング軌道ではないものの、外の球を捉える時にはロスは少なく、ヘッドも立ってフェアゾーンに残すのも上手いです。

　スイングの孤もそれなりに大きいですし、この春はフォロースルーなどを使って打球を遠くに飛ばす意識もあったように感じられました。内角のさばきも上手いですし、パワフルさだけでなく対応力の高さが光ります。

＜軸＞　☆☆☆☆　4.0

　足の上げ下げは小さいので、目線の上下動は少なめ。体の開きも我慢できていますし、軸足も地面から真っ直ぐ伸びて安定しています。そういった意味では、調子の波は少ないタイプではないのでしょうか。

（打撃のまとめ）

　始動が遅いのも、タイミングをとる一環として捉えることができ、その点はあまり気にしなくても良いような気がします。それほど打撃フォームに変化は感じませんが、若干遠くに飛ばすことを意識したスイングに変わってきているように思えます。

　打撃スタイルは、強打者ではあるものの、長打で魅了するというよりも、対応力の高さの方が目立つタイプかと。そういった意味では、年間２０本弱ぐらいになるかもしれませんが、将来的には３割前後の成績をコンスタントに残せる資質はありそうです。

（最後に）

　圧倒的な長打力があるわけではないので、できれば三塁を守れる選手になって欲しいところ。逆に一塁や左翼となると、やや物足りなさが残るかもしれません。しかし現状は、三塁手としての不安と外野へのコンバートには疑問が残る部分もあります。そういったことも諸々加味すると、全く使えないことは考え難いものの、入るチームによっては中途半端な位置づけになる恐れもあります。それだけに、あまり入れ込んで上位指名することには、個人的には疑問が残ります。現状は、３位前後ぐらいと見るのが妥当ではないのでしょうか。ただし、今年の候補中でも、最も失敗がイメージし難い選手の一人です。

蔵の評価：☆☆☆　（上位指名級）

（２０２３年　平塚合宿）