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常廣 羽也斗(広島)投手のルーキー回顧へ







常廣 羽也斗(青山学院大4年)投手 180/73 右/右 (大分舞鶴出身) 





 「二桁を意識できる」





 今年の大学・社会人の候補でも、最も即戦力が期待されるのが、この 常廣 羽也斗 。元々先発タイプだったが、下級生ではリリーフでの起用だった。適正は高いとはみていたが、見事に先発で結果を残して魅せたシーズンとなった。


(投球内容)

 
非常に正統派といった感じの、スラッとした投手体型からキレイなフォームやキレのある球を投げ込んできます。特に春のリーグ戦では、怪我などもあり、シーズン途中で欠けることも。しかし、全日本大学選手権では、リーグ戦以上の内容を示し評価を不動のものとした。

ストレート 140キロ台後半~MAX153キロ ☆☆☆☆ 4.0

 けして力んで投げなくても、コンスタントに先発時に150キロ前後の球速を刻んできます。ボールが
ピュッと切れるキレ型なので、空振りは奪える一方で、長打を食らいやすい傾向にはあります。コーナーや低めにバシバシ決まるといったよりは、大まかに両サイドに散らして来る感じで、変化球とのコンビネーションで討ち取ってきます。そのため、速球の力でねじ伏せて来るタイプではありません。ちなみに、大学選手権の決勝から日が浅く調子は落ち気味だったのですが、平塚合宿ではマイガンで 92マイル(148キロ)ほどでした。

変化球 スライダー・カーブ・スプリットなど ☆☆☆★ 3.5

 昨年までは、スライダーや小さく沈むチェンジアップ系の球が目立っていました。しかし今年は、かなりの確率で沈むスプリットの存在感を増しています。昨年は、この球を投げても振ってもらえないことが多かったです。しかし、この春は、この球が低めにコントロールでき、三振をこの球で奪え場面が増えてきました。また、緩いカーブを使うことで、緩急も交えられるようになってきています。そういった意味では、
昨年よりも投球の幅が広がってきたのは間違いないでしょう。

その他

 クィックは、0.95~1.05秒と素早く投げ込めます。牽制も鋭く、フィールディングの動きも悪くはありません。まだ、微妙なところで出し入れするとか、ボールを長く持つとか投げるタイミングを変えるとか、そういった投球術は観られませんでした。

(投球のまとめ)

 
縦の変化に磨きがかかり、緩急も使えるようになったことで、投球に幅が出てきました。特に真っ直ぐの威力が増したとか言った感じではなかったのですが、先発でしっかり実績をアピールできたのは大きかったのではないのでしょうか。心配な点をあげるとすれば、けして線の太い選手ではないので、体力・怪我などに対し、プロの長いシーズンを想定した時にはどうか?といった部分。特に、リーグ戦・大学選手権・日本代表と休むことなく来ているので、秋のシーズンでの反動が心配されます。





(成績から考える)

 この春のリーグ戦での成績は、
3勝0敗 31回1/3 26安 13四死 27三 防 1.44(5位) 。リーグ戦の内容では、チームメイトの 下村 海翔 の方が良かったです。しかし、大学選手権の時に調子をあげ、チームの日本一に大きく貢献しました。

1,被安打は投球回数の80%以下 △

 被安打率は、83.0% と、やや基準を下回っている。彼の場合は、的が絞りやすいとかフォームが合わされやすいというよりも、真っ直ぐの球質がキレ型で、
甘く入ると簡単にはじき返されやすいことが原因ではないのだろうか。東都のリーグ戦では、打者を圧倒していたわけではなかった。

2,四死球は、投球回数の1/3(33.3%)以下 △

 四死球は 41.5% と、これも基準を満たしていない。コントロールは良さそうに見えるのだが、実際のところは繊細なコントロールの持ち主ではない。むしてコントロールといった意味では、絶妙なところにビタビタ決まる 下村 海翔 の方が高いと言えるだろう。ゾーン内で圧倒できない上に、繊細なコントロールや駆け引きが絶妙なタイプではないだけに、落とし穴があるとすれば、ここなのかもしれない。

3,1イニングあたりの奪三振は、0.8個以上 ◯

 キレ型の球質で空振りが奪えるのと、縦の変化に磨きがかかったことで、1イニングあたり 0.86個 と基準を満たしている。絶対的な数字ではないが、
先発でもある程度狙って三振が奪えるということだろう。

4,防御率は1点台 ◯

 防御率は、1.44 と、基準は満たしているが絶対的ではない。ただし、昨年の秋のシーズンでは、リリーフではあったものの 0.30(2位)という、絶対的な内容は示せている。むしろ、先発でガンガンまわるようになったのはこの春からなので、秋への調整という意味ではどうだろうか?

(成績からわかること)

 ほぼ成績的には、同じ東都でもパーフェクトだった 下村 海翔 に比べると、数字の上からは不安が残る。あるいは、絶対的ではなかったことは気になる材料ではある。大学選手権での快投をイメージすると、
いつもがああいった状態ではないというのは頭の片隅に入れておいても良さそうだ。


(最後に)

 大学選手権に上手くピークが来たことで、即戦力NO.1候補に浮上した。確かに良い時の内容は、プロでも一年目から二桁を意識できる、そういった投球だった気がする。その一方で、リーグ戦から観ていると、そこまでいつも良いわけではないといった部分は気になる材料。特に、悪いときに悪いなりの投球ができるかなど、秋のシーズンがどうなるのか? 注視してみる必要はありそうだ。それでも現状は、1位指名を濃厚にした春のシーズンだったと言えるであろう。大学生右腕という意味では、森下 暢仁(明治-広島1位)以来の実力者であるのは間違いなさそうだ。


蔵の評価:
☆☆☆☆(1位指名級)


(2023年 平塚合宿)


 








常廣 羽也斗(青山学院大)投手 180/73 右/右 (大分舞鶴出身) 





 「即戦力性では一番では?」





 23年度のドラフト候補の中でも、現時点で最も即戦力として計算できそうなのは、この 常廣 羽也斗 ではないのだろうか。秋のリーグ戦では、30回1/3イニングで1失点。防御率 0.30 という抜群の安定感で、リーグ2位の成績を残している。


(投球内容)

 典型的な先発タイプのようにみえるのだが、秋は先発投手から早めにバトンを受けてのロングリリーフでの起用が目立った。3年秋のリーグ戦では、30回1/3イニングで、15安打 7四死球 29奪三振  といった内容だった。

ストレート 140キロ台後半~153キロ ☆☆☆☆ 4.0

 秋の中大との試合で、ランナーを背負った場面でリリーフ登板。この時に150キロ台を連発し、自己最速となる153キロを記録している。元来力でねじ伏せるタイプではないと思うのですが、力を入れればいつでも150キロ前後を投げられるスピード能力があります。

 ボールに角度とキレを感じさせる球質で、力むと多少抜けることはあるものの、大方両サイドに散らすこともできています。30回1/3イニングで7四死球ですから、四死球率は23.1% 。けして、四死球で自滅するような危うさはありません。

変化球 チェンジアップ・スライダー・スプリットなど ☆☆☆ 3.0

 カーブのような曲がりながら沈む球がスライダーなのか? この球は結構右打者に使ってきます。左打者には、小さくシュート回転して沈むチェンジアップを使ってカウントを整えてきます。その他、追い込むとスプリットを使って来るのですが、結構の割合では沈むものの、手を出してもらえないという課題があります。いずれにしてもこの投手は、変化球とのコンビネーションで、投球を組み立ててくる総合力で勝負するタイプなのでしょう。

その他

 クィックは、1.0~1.1秒 ぐらいとまずまず。牽制も鋭く、フィールディングの動きも悪くはありません。まだ、微妙なところで出し入れするとか、ボールを長く持つとか投げるタイミングを変えるとか、そういった投球術は観られませんでした。

(投球のまとめ)

 多少真っ直ぐが暴れる傾向にはありますが、ボール一つ一つの威力・全体の制球力など、総合力に優れた投手です。今後、もう少し投球術を磨いたり、縦の変化を振ってもらえるようになると、容易には攻略できない投手になるのではないのでしょうか。あとは、キレ型の球質なので、甘く入ると長打を浴びやすいので注意したいところです。


(投球フォーム)

 セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さはおとなしめです。こういったタイプには、自分の「間」を大切にする、先発投手に多くみられます。軸足一本で立ったときにも、膝から上がピンと伸び切ることなく、力み無く立てているところは良いところ。

<広がる可能性> ☆☆☆ 3.0

 引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、お尻はバッテリーライン上に残りがち。したがって、カーブで緩急をつけたりフォークのような球にはあまり適さないように見えます。スライダーが曲がりながら沈むカーブのような役割のようですし、縦の変化も握りの浅いスプリットを使っているようには見えました。

 前に大きめにステップすることで、「着地」までの地面の捉えは平均的。そのため、体を捻り出す時間は並ぐらい。したがって将来的に武器になるほどの変化球を、習得できるかは微妙です。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは内に最後まで抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めている。そのため軸はブレ難く、両コーナーへの制球はつけやすい。一方で、足の甲での地面の捉えは浅く、力を入れて投げるとボールが上吊りやすい。それでも「球持ち」が良く指先の感覚に優れており、ある程度大崩れしないでピッチングをまとめることができている。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻の落としが甘いので、カーブやフォークを投げようとすると窮屈になりがち。曲がりながら沈む球が、スライダーではなくカーブだとすると、結構頻繁に使ってくる。また、握りが浅いとはいえスプリットも多く使ってくるので、肘への負担が全くないわけでは無さそう。

 腕の送り出しには、角度は感じられるものの無理な感じはしない。けして力投派でもないので、現状はそこまで疲労を溜めやすいフォームではなさそう。

<実戦的な術> ☆☆★ 2.5

 「着地」までの粘りは平均的で、特に打者が苦になるといったフォームではない。それでも、打者の手元でピュッと切れる球質であることと、適度に角度を感じさせることで芯を外しやすいのかもしれない。そのため被安打も、30回1/3イニングで15安打と50%を切ってきている。この数字は、東都一部としては破格なのではないのだろうか。

 その一方で、ボールの出どころが見やすく「開き」の早いフォームとなっている。こうなると、コースを突いた球が打ち返されてしまったり、縦の変化を振ってもらえないなどの弊害が出てくる。実際に、スプリットは高い確率で落ちている割に、打者は振って来ない。

 腕は投げ終わったあと体に絡んでくるなど、「球持ち」自体は前で放せていて悪くない。ただし、上記に触れたようにボールが見やすいので、なかなな打者としては吊られ難い。またボールにしっかり体重を乗せてからリリースできているわけではないので、どうしても上半身や腕の振りでキレを生み出すしかない。そのため、打者の手元まで球威・強さという意味では物足りない球となっている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」においては、「球持ち」こそ優れている者の、「開き」と「体重移動」に課題を抱えている。制球を司る動作は、足の甲の地面の捉えが浅いので、力を入れるとボールが上吊りやすい。また、故障のリスクがありそうなフォームの割には、実際そこまで負担は大きくはないのでは? 指先の感覚には優れていそうだが、武器になるほどの曲がりの大きな変化球を習得できるかには疑問が残る。投球は実戦的だが、フォーム技術はそれほど実戦的ではないところをどうみるべきか?


(最後に)

 まだ詰めの甘さや物足りない部分は残るものの、投球のベースは今年の候補の中でも最も即戦力性の高い投手ではないのだろうか。問題は、そういった微妙な部分を最終的に追求して、総合力を引き上げられるか? それができれば、1位の12名に入ってきて、プロ入り一年目からローテーションに加わって行ける、そういった存在になりうるのではないのだろうか。期待して、シーズンの到来を待ちたいところである。


(2022年 秋季リーグ戦)