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滝田 一希(広島)投手のルーキー回顧へ







滝田 一希(星槎道都大4年)投手 183/77 左/左 (寿都出身) 
 




 「真っすぐの見栄えは左腕屈指」





 ビシッとミットに突き刺さる真っ直ぐの威力は、今年の左腕候補の中でも屈指のものがあるのではないかと思える 滝田 一希 。そのボールの威力は健在であることを、大学選手権や平塚合宿で証明した春だった。


(投球内容)

 少々上下動の激しいフォームから、小さめなテイクバックで投げ込んできます。大学選手権の大商大戦では、4回2/3イニングで降板したものの、三回までは見事な投球を魅せました。

ストレート 145キロ前後~150キロ ☆☆☆☆ 4.0

 大学選手権での東京ドームでは、最速147キロを記録。平塚でのマイガンでは、91マイル(146キロ)ほどでした。ただし、その球を
右打者外角中心に集めることができ、3回からは右打者の内角にも厳しく突くことができています。コントロールにバラツキがあるように見えますが、右打者への制球は悪く有りません。むしろ、左投手ながら左打者への方が的がつけ難くアバウトになるようにも思えます。

変化球 チェンジアップ・スライダー・カーブなど ☆☆☆★ 3.5

 110キロ前後のチェンジアップというよりは、
パームボールのような逃げながら沈む球が独特です。その他にはスライダーに、余裕が出てくるとカーブなども交えます。チェンジアップが遅いので、他にもツーシーム系のボールもあるかもしれません。ただし、変化球は抜けて制御できなかったり、ストライクが欲しい時に決められなかったりといった不安定さはあります。チェンジアップの変化は強力なのですが、遅いので真っ直ぐと見分けのつかない球ではないということ。すなわち、慣れられて来ると効果のほどはどうなのか気になる部分ではあります。

その他

 牽制はそれほど鋭いものは混ぜて来ないで、クィックは 1.10~1.20秒 ぐらいと悪くは有りません。大商大戦では、セーフティバントで揺さぶられ連続出塁を許し動揺し、その流れでベースカバーも遅れて降板の原因を作っていたのは気になりました。

(投球のまとめ)

 一つ一つのボールの威力は良いのですが、まだ試合をまとめる、作るという部分で課題を残します。現状は、リリーフから入ってゆくのか? 数年かけて先発左腕に仕立てるのかといった感じでしょうか? 
左腕でこれだけのボールを放ることができるという魅力はあるものの、プロでモノになるかは微妙な素材ではあるように思えます。





(成績から考える)

 この春は、
4試合 3勝0敗 19回1/3 8安 13四死 31三 防 1.40 。

1,被安打は投球回数の70%以下 ◎

 地方リーグの選手なので、被安打率は70%以下を望みたい。そんな中でも、41.4% と
驚異的な数字を残している。真っ直ぐで押せるという意味では、今年の大学生左腕でも屈指のものを持っていることは数字の上でも証明されている。

2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕

 四死球率は、67.3% と、ボールの威力で圧倒できる相手でも基準の倍以上なのは気になる。この制球力の粗さは、
今後も彼の課題としてつきまといそう。ただし、大商大戦の序盤には、右打者相手にはしっかりボールをコントロールできており、本当の意味でそこまで制球力が悪いのかには疑問の部分も。精神的に余裕がなくなると制球を乱すとか、左打者相手だと苦労するとか、何か制球を乱す条件があるのかもしれない。

3,奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎

 1イニングあたりの奪三振は、投球回数を遥かに上回る 1.60個 。被安打の少なさといい、三振の多さだといい、ボールの威力は圧倒的なことがわかる。

4,防御率は 1点台以内 ◯

 防御率 1.40 と基準を満たしている。ただし、0点台ではないので、絶対的とは言えないだろう。

5,左腕としての有難味はあるか? △

 左打者へは的がつき難い印象は受けるものの、左打者への被安打率は .167厘 。右打者へは、.183厘 ということで、若干ではあるが左打者への方が強いことがわかる。ただし、サンプルも限られていることから、誤差と言えば誤差の範囲内なのかなと。そのため、それほど
左右問わず得意・不得意は成績には無さそう。その一方で、左打者に強い左投手でもないので、そういった左投手として期待して獲得する価値があるのかは微妙なのではないのだろうか?

(成績からわかること)

 今年の左腕候補の中でも、細野 晴希(東洋大)の好調時に匹敵するボールを投げ込みます。そのボールの威力は、被安打の少なさと奪三振の多さからも証明されています。その一方で、やはり制球力の悪さからくる不安定さが顔を覗かせているという部分。この辺の危うさを、今後改善できるのかどうかとみるかで、評価は別れそうです。


(最後に)

 球団によって評価は別れる素材だと思いますが、ボールの威力をより重視するのであれば最上位の投手の一人かと思います。その一方で、制球の粗さや投球の危うさを考えると、あまりに高い評価は怖いとみることもできます。そのため評価としては、2位前後あたりのラインで観るのが妥当な気がします。球団によってはハズレ1位ぐらいもあるかもしれませんが、2位や場合によっては3位の頭ぐらいまでは残る、そういった展開もあるかもしれません。それでも、上位候補の一人であることは確かだとみています。いずれにしても、ある程度の育成力が求められる素材ではないのでしょうか。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2023年 平塚合宿)








滝田 一希(星槎道都大3年)投手 183/77 左/左 (寿都出身) 





「ちょっと粗っぽい」 





 今年の地方リーグを代表するサウスポーの一人である 滝田 一希 。 全日本代表選考・松山合宿にも参加するなど、にわか注目される存在となっている。ちょっと、上下動の激しい粗っぽいタイプのサウスポーといった印象を持っている。


(投球内容)

 3年秋のシーズンは、4試合 3勝1敗 26回 16安 16四死 35三 防 1.73(4位) といった成績だった。投球の模様は、この松山合宿の時のものと、たんちょうリーグの時のものを参考にさせて頂いた。

ストレート 常時140~中盤ぐらい ☆☆☆★ 3.5

 MAX151キロという触れ込みだが、普段の投球は140キロ~中盤ぐらいといった感じです。それでも、適度に勢いのある真っ直ぐを、打者の外角中心に集めてきます。26イニングで16四死球(61.5%)の数字が示す通り、制球に課題があることがわかります。

 それほど普段は荒れ荒れという感じではないのですが、上下動の激しいフォームで決まって欲しい時にストライクが決まらない、そういった危うさはあるのかなといった感じがします。

変化球 スライダー・チェンジアップ  ☆☆☆★ 3.5

 真っ直ぐ中心の配球で、それほどスライダーを使ってきません。それでもこの球でカウントを整えつつ、勝負どころではチェンジアップを効果的に使えます。この球が使える右打者相手の方が投げやすそうで、むしろ左投手ですが左打者を苦手にしているのかもしれません。チェンジアップは、プロでも通用する球種ではないのでしょうか。

その他

 クィックは、1.05秒前後とまずまず。牽制やフィールディングに関してはよくわからず。特に間を使ってとか、微妙な出し入れをするとか、そういった投球術は感じませんでした。

(投球のまとめ)

 勢いのある真っ直ぐを中心に、打者の外角に集めてくる投球です。それに、スライダーやチェンジアップを交える感じで、今のところオーソドックス投球スタイルかと。やや制球力に難があり、これをいかに改善して行けるかがポイント。現状はリリーフタイプで、もう少し投球に奥行きが欲しい感じが致しました。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から、今後の可能性について考えてみましょう。セットポジションから、足を高い位置まで引き上げてきます。軸足の膝がピンと伸びがちで力みは感じられるのですが、全体のバランスとしては取れて立てています。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 足をピンと伸ばすことなく、前に少し倒れ込む感じで重心を下げてきます。したがって体を捻り出すスペースが確保できず、お尻はバッテリーライン上に落ちてしまっています。こうなるとカーブで緩急をつけたり、フォークような縦に鋭く変化球を投げるのには無理があります。

 それでもすぐに地面を捉えないように、少しステップしてから着地をしています。そのため、体を捻り出す時間としては平均的。いずれにしても、スライダーやチェンジアップ、球速のある小さな変化を中心に、投球の幅を広げてゆくことになるのではないのでしょうか。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。したがって軸はブレは難く、両サイドのコントロールはつけやすいのでは? 足の甲での地面の捉えも深いのですが、逆に膝小僧に土が着いてしまうほどなので、その効果は限定的なのかなと。球も前で放せており、制球を司る動作の土台は悪くありません。

 これでも制球を乱す理由を考えると、上下動の激しいフォームなので、それが制球を乱し安定しない要因なのかなといった印象は持っています。

<故障のリスク> ☆☆☆ 3.0

 お尻を落とせないフォームなのですが、カーブやフォークのような球を使って来ないので、その点ではあまり気にしなくても良いのかもしれません。腕の送り出しにも無理は感じられませんし、少し力んで投げている印象はありますが、そこまで力投派といったほどでもないのではないのでしょうか。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的で、特に合わし難いといった感じはありません。それでも、ボールの出どころは隠せているので、投げミスをしなければ、そこまで打ち返されることはないのではと。そのへんは、26イニングで16安打の成績が示す通り、被安打率61.5% と、地方リーグの成績としても充分です。

 腕は強く振れており、フォームとボールに勢いがあり空振りが誘えます。このへんも、26イニングで35三振と、投球回数を遥かに上回る三振が奪えており、効果的なのがわかります。膝小僧に土が着いてしまうほど重心が沈んでいるので、少し前への体重移動が阻害され(少し後ろに残りがち)ている可能性があり、若干ですが重心を高くしても良いのかなと思う部分はあります。しかし、それをやろうとすると、「着地」までの時間が稼げなくなる恐れがあり、さじ加減は難しそうです。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、極端ではないにしろ「着地」と「体重移動」に改善の余地はあるのかなといった気はしています。制球を司る動作のベースは良いので、もう少し上下動の動きを緩和できればと。また、故障のリスクは平均的で、むしろ将来的に武器になる変化球をいかに見出して行けるかが鍵になりそうです。ただし、現状でもチェンジアップはかなり効果的な印象。それだけに、左打者に対する変化球が重要になってきそうです。


(最後に)

 投球を見ていると、ちょっとまだ本当の制球力が無く荒っぽい印象は受けました。それでも、思ったほどは普段の球筋は荒れていませんし、フォームも悪くありませんでした。ちょっと観ていると、能見 篤史(阪神-オリックス)左腕を彷彿とさせるフォームです。現状は、3位前後ぐらいが基本線に、この選手を観てゆこうかなと思っております。ただし、一年前の 曽谷 龍平(白鴎大-オリックス1位)も、このぐらいの感じだったので、最上位の可能性も残しています。最終学年での、さらなる飛躍を期待せずにはいられません。


(2022年 松山合宿)