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津田 淳哉(大阪経済大)投手 178/83 右/右 (高田商出身) | |
4年秋の 津田 淳哉 の投球を観ていると、実に安定した投球内容が光った。エースとして託された第1戦では、全て勝利し5連勝・2失点以内。唯一の黒星は、第3戦までもつれた大商大との試合で、5回を3失点で敗れた試合のみだった。そういった、ゲームメイクできる能力は、今年の関西の学生球界の中でも屈指のものを誇っていた。 (投球内容) 非常にオーソドックスなフォームから、この秋は、5勝1敗 49回 28安 11四死 31三 防 1.29(1位) といった成績で、球筋自体も安定した投球ができていた。 ストレート 140キロ台後半~150キロ台前半 ☆☆☆★ 3.5 そんなにフォームやボール自体には、球速ほどの威圧感は感じられません。それでも安定してストライクを先行させることができ、安心して観ていられる投手です。そういった投げミスも少ないので、49イニングで28安打で被安打率は57.1%。地方リーグの被安打率の目安は70%以下と厳しめに設定しても、その条件を充分満たしています。また四死球率も、22.4% 。四死球率の目安も、投球回数の1/3(33.3%)以下であることを考えると、この安定したコマンド力こそ、この投手の最大の持ち味かもしれません。 変化球 フォーク・スライダー・カット・カーブなど ☆☆☆ 3.0 スライダー・カット系の球よりも、フォークとのコンビネーションで構成されます。このフォークも、ストンと落ちるというよりも、チェンジアップのような感じでストライクゾーンに落ちてくることが多いです。また、ボールゾーンに沈むフォークは、打者が中々振ってもらえていないように思います。そのため、縦の変化を多く投げる割に、1イニングあたりの奪三振は 0.63個と平凡です。先発投手ならば、0.8個以上のペースが目安となり、そういった三振を奪える球がないところが課題でしょうか。 その他 クィックは、1.05~1.15秒 ぐらいとまずまず。フィールディングの反応も悪くなく、ランナーを背負うと、じっくりボールを持つなど冷静な一面も観られます。また得点圏に走者を置く、力を入れて仕留めに行きます。 (投球のまとめ) 三振をバシバシ奪うとか、そういった派手さのあるピッチャーではありません。しかし、自分の役割をしっかりこなすだけの、確かな制球力と精神力がある。この点に関しては、高く評価して好いと思います。あとは、いかに自分の武器、売りを明確にできるかではないのでしょうか。 (投球フォーム) セットポジションから、足を引き上げる勢いは並ぐらいだが、それほど高くは引き上げない。軸足一本で立ったときにも膝に力みは感じられないものの、全体のバランスとしては並ぐらいか。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 比較的高い位置でピンと足が伸びすので、お尻の一塁側のへの落としは悪く有りません。したがって、カーブやフォークのような捻り出して投げる球種も無理はありません。「着地」までの地面の捉えは平均的で、体を捻り出す時間は並ぐらい。多彩な球種は操れますが、武器になるほどの変化球を見出だせるかは微妙です。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで体の近くにあるので、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができています。したがって軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすいのかと。足の甲での地面の押しつけが少し浅いので、まだ充分に浮き上がろうとする力が押さえられていないのかもしれません。 それ以上に「球持ち」が浅く、ボールが抜けてしまうことも少なくないのでは。四死球を出すような危うさはないのですが、球筋が真ん中~高めに集まりやすい気がします。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻は落とせているので、カーブやフォークといった球種を投げても、それほど窮屈になること無さそう。したがって、肘などへの負担は少ないのではないかと考えています。気になるのは、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている方の肩が下がるような送り出しなので、肩への負担はそれなりに感じます。しかし、けして力投派ではないので、疲労は溜め難いのではないかと感じます。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは並で、ボールの出どころも平均的。そういった意味では、特に打者から嫌がられるフォームではありません。腕の振りも平均的ですし、ボールへの体重の乗せもまだ充分といったほどではありません。体重が乗るまでリリースが我慢できると、打者の手元まで活きた球が行くようになるのではないのでしょうか。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、全てが平均的で嫌らしさを感じない。逆に悪いほどではないので、動作全体にさらなる粘りが出ればという伸び代を残している。足の甲でのおさえやリリースなどでの押し込みなどで、ボールが上吊りやすいこと。「着地」まで粘りが平凡なだけに、武器になる変化球を習得するほどの時間が物足りないこと。肩への負担が大きいそうな腕の送り出しなどをみると、投球は実戦的なものの、必ずしもフォームの完成度が高いわけではないことがわかった。この辺をプロで追求して行けると、より実戦的な投手へと変貌できそうだ。 (最後に) 安定したマウンドさばき、制球力、癖のないフォームなど、大きな欠点は見当たりません。逆に現時点では、プロで売りにできるほどの絶対的な武器がない点、嫌らしさなどが感じられない部分を、いかに改善して行けるかではないのでしょうか。このへんは、本人の努力と発想力、球団の指導力が問われそうです。ただし、こういった投手をモノにするのが上手い、阪神らしい指名ではないかと思います。数年後には、先発の一角に食い込むような投手になっている、そんな可能性も感じられます。 蔵の評価:☆ (下位指名級) (2023年 秋季リーグ戦) |