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菊地 吏玖(専修大4年)投手 183/93 右/左 (札幌大谷出身) | |
一つ一つのボールが悪いとは思わないのだが、何か投球をみているとピリッとした感じがしないのが気になる 菊地 吏玖 。何が悪いというのでもないのだが、ピンと来るものがないのは何故なのだろうか? (投球内容) 東都リーグでは、過去3度最優秀防御率を獲得。この秋も、4勝2敗 防 0.85(1位) といった内容でした。チームを優勝に導き入れ替え戦にのぞみましたが、一部の壁は厚かった印象です。 ストレート 常時 145キロ前後 ☆☆☆★ 3.5 適度な角度と勢いに、球威のある球を投げ込んできます。けして空振りを奪うといった球ではなく、力で詰まらせるタイプ。それほど細かいコントロールがあるわけではないのですが、長打を喰らい難い傾向にあります。この秋も、53イニングを投げて被安打は34本。被安打率は、62.2%(目安は70%台) と低いです。むしろ、四死球が23個あり、四死球率が 43.4%(目安は33.3%以下) と高いところに、ピリッとしない要因がありそうです。 変化球 スライダー・カーブ・フォーク・ツーシームなど ☆☆☆ 3.0 球種は一通りあるのですが、三振を取れるというよりも、相手に的を絞らせないためのものといった感じがします。その証に、53イニングで33三振と、1イニングあたり0.62個(目安は0.8個以上)と、三振は少ないです。こういったところが、1位指名の選手としては、物足りなく感じさせる要因かもしれません。以前から気になるのは、スライダーなどが高めに甘く浮く点です。また、今シーズンは、緩いカーブで緩急をつけつつ、かなりツーシーム・フォーク系が落ちており、打者の的を絞らせないことはできていたのではとは感じました。 その他 クィックは、0.9~1.0秒 ぐらいと速いです。牽制も非常に鋭いものがありますし、ベースカバーなども速かったですし、フィールディングも下手ではありません。また、ランナーを背負ってからも、バタバタすることなくじっくりは投げられていました。投球のもっさり感とは違い、投球以外の動きは良いです。 (投球のまとめ) 四球やヒットなどで走者を許しても、粘り強く投げ込んでゆくのが、この選手の持ち味なのかもしれません。しかし、春から観ていて思ったのは、本当の意味でのコントロールがなく、結構甘い球が多い。東都二部の選手は、これを打ち損じてくれるだけれど、一部の打者は見逃さないだろうなという球が多いのは気になっていました。まして、プロの打者であればどうでしょうか? (投球フォーム) セットポジションから振りかぶり、足を引き上げる勢いや高さは平均的。軸足一本で立った時に、膝から上がピン伸びがちで、 トの字 になって余裕がありません。どうしてもこうやって立ってしまうと、バランスを保とうとして無駄な力が入ったり、突っ込みがちなフォームになりやすいです。 <広がる可能性> ☆☆★ 2.5 引き上げた足を地面に向けて伸ばしており、お尻はバッテリーライン上に残ってしまいます。そのためカーブやフォークを投げていますが、体を捻り出すスペースが確保できておらず、変化が鈍くなります。 「着地」までの地面の捉えもあっさりしていて、体を捻り出す時間が足りません。曲がりの大きな変化球で空振りを誘うというよりも、高速で小さな変化で芯をズラす、そういった投球になりがちです。 <ボールの支配> ☆☆☆ 3.0 グラブは最後まで体の近くにはあるので、外に逃げようとする遠心力は内に留めることができています。したがって、軸はブレ難く、両サイドのコントロールはつけやすいと考えられます。 足の甲手の地面押し付けは浅く、浮き上がろうとする力を抑え込めていません。そのため球筋は高くなりがちです。それでも「球持ち」自体は悪くないので、ある程度ボールを押し込んでリリースできているので、抜け球といったほどではありません。全体的にアバウトではあるものの、ある程度はストライクゾーンの枠の中には集めることができるといった感じでしょうか。 <故障のリスク> ☆☆☆ 3.0 お尻が落とせない割に、カーブやフォーク系の球は結構使ってきます。窮屈になりやすいので、肘への負担などは注意を払ってもらいたいものです。それでも腕の送り出しには無理は感じられないので、肩への負担は少ないのでは? また、けして力投派ではないので、疲労は溜め難いようにも見えます。足の甲の地面の捉えが浅いため、全体的にボールが高めに集まりやすいこと。お尻が落とせないで窮屈になるので、肘への負担が気になるところではあります。また、武器になるほどの変化球を身につけられるのか?といった部分でも不安が残ります。ある程度平均的な技術ではまとまっているのですが、特に優れている部分がないので、そのへんもピリッとしない投球につながっているのかもしれません。 <実戦的な術> ☆☆☆ 3.0 「着地」までの粘りは淡泊で、打者としては合わせやすいフォームなのかと。ボールの出どころは平均的も、フォームが直線的なので、予測はつけやすいように感じられます。東都二部の場合、その球威で打ち損じてくれていますが、打力が上がる上の世界では、打ち損じてくれなくなる可能性が高まります。 腕は適度に振れていますが、上記のように予測がつきやすいフォームだと、あまり縦の変化などを振ってもらえない恐れがあります。ボールには適度に体重を乗せてからはリリースできているので、打者の手元まで球威のある球は投げられているのですが。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「着地」までの粘りに課題があります。足の甲での地面の捉えの浅ささから、ボールが高めに集まりやすいこと。充分なスペースが確保できていないで投げ込むため、肘への負担などは気になります。また、武器になるほどの変化球を習得できるのかにも不安が残ります。実戦的というほど、投球フォームは実戦的とはいえません。 (最後に) プロ入り後、この微妙な部分を改善させて良化させて行けるのであれば、打たれながらも要所をまとめられる粘り強いピッチングが期待できます。そうなれば、先発としてイニングゲーターとして貴重な役割を果たせるかもしれません。そういった意味では、球威を活かして広いグランドの多いパ・リーグ向きなのではないのでしょうか。上手くゆけば、プロで5勝前後は勝てる投手になれるかもしれませんが、現状は制球や技術的な甘さがあり、一軍で即戦力になりうるかは懐疑的な見方をしています。その物足りない部分を、プロ入り後埋めて行けるかに懸かっています。 蔵の評価:☆☆ (中位指名級) (2022年 秋季リーグ戦) |
菊地 吏玖(専修大3年)投手 183/87 右/左 (札幌大谷出身) | |
私が知る限り、秋の時点では大学NO.1投手ではないかと思われるのが、この 菊地 吏玖 である。リリーフ的には面白い選手はいても、なかなかプロでローテーションを意識できる、そういった大学生投手は今のところ少ない。そんな中でも、最も総合力に優れた先発タイプといった感じがするのだ。 (投球内容) 春まではセットポジションから投げていたような記憶があるのですが、この秋はゆったりとワインドアップで振りかぶって投げ込んできていました。2年秋には、東都二部ながら最優秀防御率に。3年春も、2位の防御率を残し安定。そして3年秋は、リリーフで起用されていました。 ストレート 常時145キロ前後~151キロ ☆☆☆★ 3.5 適度な勢いに、球威も感じさせる真っ直ぐを投げ込んできます。それほど繊細なコントロールはないものの、四死球で自滅するようなそういった危うさはありません。特に、時々に指にかかった時のボールには見るべきものがあります。こういった球を、高い確率で投げられるようになれれば、文句なしの1位候補になれるかと。 変化球 カットボール・スライダー・カーブ・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5 見ていると、スライダーよりも140キロ前後カットボールみたいな球を使ってきている感じがします。それとカーブ頻繁に混ぜて、緩急を効かせて厄介。その他左打者の外角には、チェンジアップ・ツーシーム系の沈む球織り交ぜ、かなり球種は多彩な感じがしています。気になったのは、カット系の球が高めゆくので、長打を喰らわなければいいなという危惧はありました。変化球のキレ・多彩さはあるので、あとはカットボールの精度・沈む系を振らせる術が磨かれれば良いのではないのでしょうか。 その他 クィックは、1.0~1.05秒 ぐらいと素早いです。牽制やフィールディングに関しては、ちょっとよくわかりませんでした。このへんは、今年のチェックポイントとしたいところ。普段はゆったりして投げてきますし、ピンチでも精神的にグラつかないところは良いところではないのでしょうか。 (投球のまとめ) まだ投球全体に凄いとか隙きがないとかいう領域ではないものの、時々おっ!と思える球を投げたり、的を絞り難いだろうなと思わせてくれる多彩さがあります。秋の時点では、一番大学生投手の中では上位を意識できる素材なのではないかと感じられました。 (成績から考える) この秋は、リリーフで 3試合・4イニングしか登板していません。そのため、リーグ戦に登板した2年秋・3年春の成績も含めて、通算の成績から、この投手の傾向について考えてみましょう。通算では 14試合 6勝2敗 83回1/3 60安 24四死 81三 防 0.76 1,被安打は投球回数の80%以下 ◯ 被安打率は、72.0%であり、基準である80%以下を満たしている。まだ絶対的な数字ではないのは、投球を見ていても相手を圧倒するほどの凄みが感じられないところにも現れている。上位指名を狙うのであれば、大学生相手なら圧倒するか相手に付け入る隙きを与えないぐらいの投球をみたい。そうすれば、自ずと被安打率も60~50%台ぐらいにはなっているはずなので。 2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ◯ 四死球率も、28.8% と基準を満たしている。高い精度のコントロールがあるわけではないが、余計な四死球を与えるような危うさは観られない。 3,三振は1イニングあたり0.9個以上 ◯ 1イニングあたりの奪三振は、0.97個。先発ならば0.8個以上、秋はリリーフをしていたので0.9個以上のリリーフのファクターを設けてみたが、問題なくクリアしてきた。しかし、奪三振率が高い投手ならば、投球回数以上の三振を奪えるので、この点でも絶対的な領域にはまだ達していない。 4,防御率は1点台以内 ◎ 防御率1点台どころか、通算で0点台の安定感は素晴らしい。ただしリーグ戦実績が少なめなのと、東都二部であることは気になるところ。ぜひ春は優勝して入れ替え戦を制して、ラストシーズンには一部でその力を魅せつけて実力を証明して頂きたい。 (成績からわかること) 全てのファクターが基準を満たすなど、総合力に優れた選手。その一方で、まだどのファクターも絶対的な内容ではない。また防御率も東都二部でのものであり、このへんは大学ジャパンに選出され国際試合で活躍するか、4年秋に一部に昇格して力のあるところを示して実力を証明して欲しい。 (最後に) 現時点では、確かに大学生投手で一番手の位置づけと言っても過言ではないだろう。しかし、例年の上位候補ほど絶対的なものがあるわけではないので、このへんは最終学年にさらに総合力を引き上げてゆかないと1位指名かと言われると心許とない。その辺を、どう乗り越え成長してゆくかで、この選手の順位は決まってくるのではないのだろうか。 (2021年秋 東都リーグ戦) |