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菊地 吏玖(専修大3年)投手 183/87 右/左 (札幌大谷出身) | |
私が知る限り、秋の時点では大学NO.1投手ではないかと思われるのが、この 菊地 吏玖 である。リリーフ的には面白い選手はいても、なかなかプロでローテーションを意識できる、そういった大学生投手は今のところ少ない。そんな中でも、最も総合力に優れた先発タイプといった感じがするのだ。 (投球内容) 春まではセットポジションから投げていたような記憶があるのですが、この秋はゆったりとワインドアップで振りかぶって投げ込んできていました。2年秋には、東都二部ながら最優秀防御率に。3年春も、2位の防御率を残し安定。そして3年秋は、リリーフで起用されていました。 ストレート 常時145キロ前後~151キロ ☆☆☆★ 3.5 適度な勢いに、球威も感じさせる真っ直ぐを投げ込んできます。それほど繊細なコントロールはないものの、四死球で自滅するようなそういった危うさはありません。特に、時々に指にかかった時のボールには見るべきものがあります。こういった球を、高い確率で投げられるようになれれば、文句なしの1位候補になれるかと。 変化球 カットボール・スライダー・カーブ・チェンジアップなど ☆☆☆★ 3.5 見ていると、スライダーよりも140キロ前後カットボールみたいな球を使ってきている感じがします。それとカーブ頻繁に混ぜて、緩急を効かせて厄介。その他左打者の外角には、チェンジアップ・ツーシーム系の沈む球織り交ぜ、かなり球種は多彩な感じがしています。気になったのは、カット系の球が高めゆくので、長打を喰らわなければいいなという危惧はありました。変化球のキレ・多彩さはあるので、あとはカットボールの精度・沈む系を振らせる術が磨かれれば良いのではないのでしょうか。 その他 クィックは、1.0~1.05秒 ぐらいと素早いです。牽制やフィールディングに関しては、ちょっとよくわかりませんでした。このへんは、今年のチェックポイントとしたいところ。普段はゆったりして投げてきますし、ピンチでも精神的にグラつかないところは良いところではないのでしょうか。 (投球のまとめ) まだ投球全体に凄いとか隙きがないとかいう領域ではないものの、時々おっ!と思える球を投げたり、的を絞り難いだろうなと思わせてくれる多彩さがあります。秋の時点では、一番大学生投手の中では上位を意識できる素材なのではないかと感じられました。 (成績から考える) この秋は、リリーフで 3試合・4イニングしか登板していません。そのため、リーグ戦に登板した2年秋・3年春の成績も含めて、通算の成績から、この投手の傾向について考えてみましょう。通算では 14試合 6勝2敗 83回1/3 60安 24四死 81三 防 0.76 1,被安打は投球回数の80%以下 ◯ 被安打率は、72.0%であり、基準である80%以下を満たしている。まだ絶対的な数字ではないのは、投球を見ていても相手を圧倒するほどの凄みが感じられないところにも現れている。上位指名を狙うのであれば、大学生相手なら圧倒するか相手に付け入る隙きを与えないぐらいの投球をみたい。そうすれば、自ずと被安打率も60~50%台ぐらいにはなっているはずなので。 2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ◯ 四死球率も、28.8% と基準を満たしている。高い精度のコントロールがあるわけではないが、余計な四死球を与えるような危うさは観られない。 3,三振は1イニングあたり0.9個以上 ◯ 1イニングあたりの奪三振は、0.97個。先発ならば0.8個以上、秋はリリーフをしていたので0.9個以上のリリーフのファクターを設けてみたが、問題なくクリアしてきた。しかし、奪三振率が高い投手ならば、投球回数以上の三振を奪えるので、この点でも絶対的な領域にはまだ達していない。 4,防御率は1点台以内 ◎ 防御率1点台どころか、通算で0点台の安定感は素晴らしい。ただしリーグ戦実績が少なめなのと、東都二部であることは気になるところ。ぜひ春は優勝して入れ替え戦を制して、ラストシーズンには一部でその力を魅せつけて実力を証明して頂きたい。 (成績からわかること) 全てのファクターが基準を満たすなど、総合力に優れた選手。その一方で、まだどのファクターも絶対的な内容ではない。また防御率も東都二部でのものであり、このへんは大学ジャパンに選出され国際試合で活躍するか、4年秋に一部に昇格して力のあるところを示して実力を証明して欲しい。 (最後に) 現時点では、確かに大学生投手で一番手の位置づけと言っても過言ではないだろう。しかし、例年の上位候補ほど絶対的なものがあるわけではないので、このへんは最終学年にさらに総合力を引き上げてゆかないと1位指名かと言われると心許とない。その辺を、どう乗り越え成長してゆくかで、この選手の順位は決まってくるのではないのだろうか。 (2021年秋 東都リーグ戦) |