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後藤 凌寿(22歳・トヨタ自動車)投手 183/82 右/右 (四日市商-東北福祉大) | |
秋の日本選手権では、リリーフで150キロ台中盤を叩き出していた 後藤 凌寿 。しかし、台湾で行われたアジアウインター・リーグでは、先発として起用されていた。その投球を見ている限りは、本質的には先発タイプなのではないかと思えてきた。 (投球内容) トヨタの分厚い投手陣のため、チームでの起用はリリーフとなっている。少し小さめなテイクバックではあるが、オーソドックス投球スタイル。新人一年目は、都市対抗と日本選手権で合わせて3試合・5イニングほど投げているが、自責点はなかった。 ストレート 145キロ前後~150キロ強 ☆☆☆★ 3.5 150キロ台の球速が注目されがちだが、本質的にはそこで勝負するタイプではないように思える。それでも打者の外角一杯のゾーンで出し入れしたり、左打者の内角の厳しいゾーンを突けるなど、そういった真っ直ぐのコマンドの高さ・きめ細やかさこそが、この選手の一番の魅力ではないのだろうか。 その一方で、ボールの出どころはやや見やすいタイプ。それだけに、投げミスをしてしまうと簡単に痛打されてしまう側面もある。 変化球 カーブ・スライダー・カット・スプリットなど ☆☆☆★ 3.5 110キロ台の少し緩めのカーブ・120キロ台のスライダー・130キロ台のカットボールと、こういった球を速球と織り交ぜて使ってくる。そのため、それほど単調な印象は受けない。しかし、その一方で、縦の変化が強力ではないので、追いこんでからの決め手不足も感じられる。この辺が改善されてくると、手がつけられなくなってくるかもしれない。 また、緩いカーブがアクセントになるというよりも、対応されてしまってヒットを浴びるケースが目立っていた。その一方で、スライダーなどを、左打者の外角ボールゾーンから入れてくる、フロントドアの活かし方は上手かった。 その他 大学時代は、クィックも1.0秒~1.05秒と素早かったのですが、今は 1.10~1.25秒ぐらい,少し落ち着いて投げるようになり、かつ投げるタイミングを微妙に変えてきているのかもしれない。元々牽制は鋭い選手であり、フィールディングも悪くなかった。 特に走者への目配せとか、ボールを長く持ってという感じではなかった。むしろ、コースで微妙の出し入れできるなど、そういった投球術の方が目立っていた。 (投球のまとめ) 少々合わされやすいフォームなのと、追いこんでからの縦の変化などが弱いのは気になった。このへんが、今年変わって来るのかが、ドラフトでの評価に直結しそう。現状は、ドラフト中位前後のイメージだが、内容次第では即戦力候補として、上位も狙える位置まで来るかもしれない。 (投球フォーム) 今度は、フォームの観点から可能性について考えてみたい。ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いは静かで、あまり高い位置までは引き上げて来ない。そういった意味では、この選手は自分のペースを大事にする先発タイプなのかもしれない。軸足一本で立った時に、膝から上がピンと伸びてしまい トの字 の形になってしまっていて直立気味。こうなるとバランス良く立つために、余計な力が入って制球を乱しやすかったりする。また、いち早く地面に着地にゆくことになりがちで、ツッコミやすかったり粘りのある形を作り難い。 <広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5 比較的高い位置で足をピンと伸ばせているので、お尻はしっかり一塁側に落とせている。そのため、身体を捻り出すスペースは確保できており、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適したフォームだと言える。 その一方で、「着地」までの地面の捉えは平凡。したがって身体を捻り出す時間は並であり、曲がりの大きな変化球を習得し難い側面がある。せっかくヒップファーストができる貴重な存在なだけに、もったいない感じがした。故に現状は、多彩な球種を操れる土台はあるものの、武器になる変化球まで習得できないといったジレンマに陥っている。 <ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めることができている。したがって軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつきやすい。一方で、足の甲での地面の捉えが浮いてしまっている。そのため、浮き上がろうとする力を抑えられず、ボールが真ん中~高めに浮きやすい。「球持ち」も並ぐらいではあるが、外角の微妙な出し入れができるように、指先の感覚は悪い投手ではなかった。 <故障のリスク> ☆☆☆☆ 4.0 お尻を落とせるフォームだけに、カーブやフォークを投げても窮屈にはなり難い。そういった意味では、肘への負担は少ないのではないかと思える。また、腕の送り出しを見ても、けして肩への負担は大きいそうには見えない。けして力投派でもないので、疲労を溜めやすいといったことも無さそう。大学時代は故障に悩まされた選手だが、フォームを見る限りは、故障へのリスクは低そうおに見えた。 <実戦的な術> ☆☆★ 2.5 「着地」までの粘りが平凡で、ボールの出どころも少し早く見えます。そのため、打者としては、球速ほど苦になるタイプでは無いように思えます。 腕はしっかり振れていて、投げ終わったあとも身体に絡んできます。しかし、ボールの出どころが見やすいので、勢いで空振り誘い難いのではないのでしょうか。ボールもしっかり体重を乗せてから投げている感じではないので、打者の手元までグッと来る感じはしない。 (フォームのまとめ) フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「開き」と「体重移動」に課題を抱えている。制球を司る動作では、足の甲での押し付けが浮いてしまい、高低の制球に課題が。故障に泣かされてきた選手だが、現在のフォームを見る限りは、そこまでリスクは高くは無さそう。「着地」までの粘りが作れれば、もっと武器になる変化球が期待できるかもしれない。 (最後に) 割合、吉村 貢司郎(東芝-ヤクルト1位)に近いタイプかなと思える部分はある。しかし、吉村の場合、縦の変化に優れていて、そのぶん後藤投手は、両サイドの投げ分けや出し入れに優れたタイプであるように思える。プロで活躍するためには、もう少し縦の変化を使える目処をたてたいところ。そうすれば吉村投手のように、最上位でのプロ入りも見えてくるのではないのだろうか。 (2024年冬 アジアウインター・リーグ) |
後藤 凌寿(東北福祉4大年)投手 183/76 右/右 (四日市商出身) | |
この春、怪我のため出遅れた 後藤 凌寿 。秋には、大学代表松山合宿にも参加し、最終学年での飛躍が期待された本格派。しかし、この春は、納得の行くシーズンは言い難く、春の代表合宿である平塚のメンバーからも外れてしまった。 (投球内容) 非常にキレイなフォームから投げ込んでくる、正統派といった投手です。シーズン途中から復帰し、3試合ほど先発としてもマウンドに上っていました。試合の模様は、先発に復帰した東北工業戦の模様から。 ストレート 常時145キロ前後~150キロ ☆☆☆★ 3.5 驚くほどの球威はないものの、質の良い140キロ台中盤の真っ直ぐを両サイドに投げ込んできます。この投手の良さは、真っ直ぐのコマンドがしっかりしていて、コーナーにビシッと集められるところにあります。特に左打者に対しては、内角の球で結構空振りを奪えていました。 変化球 スライダー・カーブ・スプリット? ☆☆☆ 3.0 一通りの球を投げてきますが、武器は曲がりの鋭いスライダーにあると思います。その他にもカットボールや、時々緩いカーブもあります。また何やら、少し沈むスプリット?系の球もありますが、空振りを奪えるのは右打者外角に切れ込むスライダーなのではないのでしょうか。昨秋は、スライダー・カット系が高めに甘く入ってくる部分が気になったのですが、この試合ではそこまで気にはなりませんでした。 その他 クィックは、1.0~1.05秒ぐらいとまずまず。牽制も鋭いですし、フィールディングの動きも悪くありません。ランナーを背負うとボールを長く持つとか、そういった「間」や時間的な意識は無さそうで、投球が単調にならないように注意したいところです。 (投球のまとめ) 立ち上がりから、コーナーに質の良い球が決まるのは爽快感があります。ただし、投球や素材としての奥行きはそこまでないので、イニングが進んで来ると、馴れられて打たれてしまう、そういった傾向にあるように思えます。それだけに、もう少し縦の変化球などに磨きがかかるなど、幅を広げて欲しい部分はあります。 (成績から考える) この春の成績は、19回 10安 11四死 26三 防 3.32 といった内容でした。昨秋は、防御率 0.00 で最優秀防御率を獲得していたので、それに比べると物足りないシーズンだったことが伺えます。 1,被安打は投球回数の80%以下 ◎ 被安打率は、52.6% と圧倒的。そのため、それほど打ちこまれていたわけではなかったようです。元々ボールが見やすいフォームでもあるので、優勝を懸けた仙台大戦で打ち込まれた点は気になります。 2,四死球は、投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕ 四死球率は、57.9% と、かなり制球を乱していたことがわかります。昨秋も、44.8% だったことを考えると、元々四死球はそれなりに多いことがわかります。コントロールを乱し制御できない日があるのか? 確認した東北工業戦では、両サイドにしっかり投げ分けられていました。 3,奪三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎ 奪三振は投球回数を遥かに上回っており、質の良い真っ直ぐや切れ味鋭いスライダーなどで空振りが奪えていました。この辺も、縦の変化が強力ではないので、全国レベルの打線相手だとどうなのか? といった疑問は残ります。 4,防御率は1点台 ✕ この春の防御率は3点台と、元来の状態ではなかったことが伺われます。実は、リーグ戦で失点したのは今春が初めてだったようです。四死球などでランナーは出しても高い奪三振力で失点を防ぐ、それが彼の持ち味なのかもしれません。 (成績からわかること) 被安打の少なさ・奪三振の多さからも、ボールの威力自体が見劣っていたわけでは無さそう。そのへんは、東北工業戦でも感じました。しかし、悪い時にはボールが制御できなくなることがあるのか? 四死球が多かったり、それが失点に絡むケースが多いようです。実際昨秋の松山合宿では、そういった傾向が垣間見られました。 (最後に) オフに作成した寸評でも記載したように、全国レベルを考えた時にどうなのか? そういった疑問はこの春も残りました。当然それは、プロを想定した場合も同様で、即戦力になりうるのか? と言われると疑問が残ります。そういった意味では、まず秋はしっかり復調したところをアピールすること。そして、その上で何処まで安定した投球、高いレベルの打者でも打ち取れそうな術に磨きをかけてくるかではないのでしょうか? 現状は、ファームで数年かけて素材の良さを磨く必要がありそうだといった感じでしょうか。秋の内容次第では、中位ゾーン(4位前後)ぐらいで指名されても不思議では無さそうな素材ではあるのですが。 蔵の評価:☆(下位指名級) (2023年 春季リーグ戦) |