23dp-14





古謝 樹(桐蔭横浜大4年)投手 182/75 左/左 (湘南学院出身) 





 「思い描く投球に近づいてきたのでは?」





 春までは、ボールの勢いはあっても、制球力が粗く、なかなか思い通りの通りに投げきれなかった 古謝 樹 。しかし、この秋は、だいぶ球筋が定まってきて、自分の思い描いたところに決まるようになってきたのではないのだろうか。


(投球内容)

 この秋の成績は、
29回 15安 7四死 36三 防 1.24(4位) 。春と比べて、勝ち星が上がるようになったとか、目に見えて勝ち星が増えたわけではないが、投球の変化について考えてみたい。

ストレート 常時145キロ前後 
☆☆☆☆ 4.0

 球速は目に見えて変わったわけではないが、打者の手元までピュッと来て、
打者として振り遅れないことが多い相変わらず高めに集まりやすく、ゾーン内での制球は甘い。それでも、神奈川リーグの打者相手ならば、少々な投げミスがあっても容易には捉えられないボールの威力がある。その辺は、29イニングを投げて15安打という、被安打率が 51.7% と圧倒していることからも伺われる。春のリーグ戦では、投球回数に近い 93.3% に比べると、格段に良くなっていた。

 さらにゾーン内での制球に甘さは残すものの、試合を見ていても打者の内角を狙って決まることも増えてきた。四死球率も 24.1% と安定しており、春の 50.4% とから半減している。特に
力を制御しなくても、制球が向上しているところは高く評価できるポイント。

変化球 スライダー・カット・ツー^シーム・カーブなど 
☆☆☆★ 3.5

 特に、
カットボールを交えカウントを整えるのが上手くなった。このへんが、無駄な四死球を減らし、投球にも余裕が生まれてきた要因ではないのだろうか。特に目立つのは、曲がりながら沈むスライダーの威力。しかし、基本的には、多彩な球種も交え打者に的を絞らせない投球が持ち味ではないのだろうか。 

 奪三振率は、1イニングあたり 1.24個 と、投球回数を遥かに上回っている。春は 0.98個 であったことを考えると、この部分でも成長がみられる。

その他

 春のクィックは 1.15秒前後 と平均的だったが、この秋は 0.95~1.0秒 ぐらいと縮めてきた。牽制も適度に鋭く、走者にもしっかり目配せ。容易には、次の塁は陥れられない。フィールディングの動きも悪くない選手なので、その点も問題無さそうだ。特別微妙なコースの出し入れするとか、間をじっくりといったほどではないにしろ、走者を出しても慌てることはない。

(投球のまとめ)

 全ての項目で大幅な改善が見られており、実際見ていても
春とはひと味違っていた。そういった意味では、秋になって1位候補に浮上してきたのは理解できる。その一方で、防御率は春の 1.82 ~ 1.24 と数字は良化していた。しかし、5勝0敗で全国大会に導き絶対的な内容だった春に比べると、秋は 2勝1敗 と勝ちきれなかった。この辺が、本当の意味での制球力がなく、ここぞの場面で甘く入った球を痛打されてしまう。そういった詰めの甘さは、本質的には改善しきれてはいないのではないのだろうか。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から、昨年と比較しながら考えてみたい。ノーワインドアップから、足を引き上げる勢いや高さは並みぐらい。軸足一本で立った時に、トの字 の形になっており、膝に余裕がなく突っ込みやすい立ち方にはなっている。昨年と、あまりこの辺は変わっていないようです。

<広がる可能性> 
☆☆★ 2.5

 引き上げた足を地面に向け、ピンと伸ばすことなく重心を沈めてきます。したがってお尻はバッテリーライン上に落ちてしまい、体を捻り出すスペースは確保できていません。そういった意味では、カーブやフォークといった捻り出して投げる球種には適さない投げ方です。

 「着地」までの地面の捉えも平均的で、体を捻り出す時間も並みぐらい。こうなると曲がりの大きな変化球よりも、球速のある小さな変化を中心にピッチングの幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。ただし、現時点でも、スライダーの曲がりには良いものがある。この辺の動作も、昨年から大きくは変わっていなかった。

<ボールの支配> 
☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力を内に留めることはできている。また、フォームが縦推進であるので、両サイドの制球は付けやすいのでは? しかし、その割にゾーン内でのコントロールはアバウト。さらに、この辺の動作も昨年から大きくは変わっていなかった。

 足の甲の地面の捉える時間も短く、
充分には浮き上がる力を抑えられていないように思える。全体的に高筋が高いのは、この辺が影響しているのかもしれない。「球持ち」も並みで、それほどリリースで押し込めていない感じ。指先の感覚も、あまり良い方ではないのだろうか。春より四死球が減ったのは、動作の変化ではなく、カットボールなどでカウントを整えやすくなったことが大きいのでは?

<故障のリスク> 
☆☆ 2.0

 お尻が落とせないフォームなので、カーブやフォークといった球種を投げようとする窮屈になる。そういった球を投げる機会も少なそうだが、負担は少なくはないだろう。

 それ以上に気になるのが、ボールを持っている肩が上がり、グラブを持っている肩が下がるなど、
腕の送り出しに無理が感じられる点。フォーム的にも結構力投派でもあり、肩への負担は少なく無さそうだ。この辺の動作も、昨年からあまり変わってはいなそうだ。

<実戦的な術> 
☆☆☆ 3.0

 「着地」までの地面の捉えは並みだが、ボールの出どころは隠せている。そのため、タイミングが図り難いほどではないにしろ、見えないとこからピュッと来る感じで差し込まれるのかもしれない。ただし、投げミスをすると容易には捉えられてしまう。

 腕はしっかり体に絡むなど、勢いは感じられる。ボールが見やすいので縦の変化などは見極められてしまいがちだが、そういった球もほとんど投げて来ない。
投げ終わったあと三塁側に流れることが多いので、まだステップの位置が適正ではなく、リリースまで力を伝えきれずロスしてしまっていると考えられる。この辺が改善されてくるとと、まだまだストレートの威力は増せるのではないのだろうか。このへんも、大きくは昨年から改善されていなかった。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、
「体重移動」に課題を抱えている。足の甲の抑えが短いので、球筋が高くなりがち。故障のリスクも高く、将来的に武器になる変化球を習得できるかも微妙であること。こう考えるとフォーム的には、かなりリスキーな素材だといえ、また昨年からフォームに関してはほとんどいじって来ていないことがわかった。


(最後に)

 秋になって、目に見えて
各ファクターの改善が見られました。その一方で、フォーム的には昨年からほとんど変わっていないこともわかってきました。そのため要所での制球ミスが致命傷になるという、本質的な部分では変わっていないように感じます。

 現状は、ドラフトでも上位指名されるぐらいのパフォーマンスは魅せていたものの、1年目から一軍の戦力になりうるかは未だ疑問です。評価的には春よりワンランク引き上げたいと思いますが、彼がプロで持ち味を発揮するのは、数年先のことになるのではないのでしょうか? 逆に言えば、それだけまだ良くなる、そういった余地は残されています。


蔵の評価:
☆☆☆(上位指名級)


(2023年 秋季リーグ戦)


 








古謝 樹(桐蔭横浜大4年)投手 181/75 左/左 (湘南学院出身) 





「ゾーンで押せるようになってきた」





 最終学年になって、ストライクゾーンの中で力で押せるようになってきた 古謝 樹 。 立ち上がりはそれほどではないのだが、要所では150キロを超えるボールを投げ込めるようになってきた。

(投球内容)

 オーソドックスなフォームのサウスポーで、上背の割にボールに角度を感じます。昨年までは何処か掴みどころがないタイプで、そのへんは明確に変わってきました。また今回の平塚合宿の参加を経て、大学日本代表のメンバーにも選出されました。

ストレート 140~150キロ ☆☆☆★ 3.5

 春先のリーグ戦の中継では、明らかに真っ直ぐの勢いが通っていました。しかし、生で観に行ったシーズン終盤の試合では、140キロ前後と思ったほどではありませんでした。しかし、平塚合宿での生で見たときは、やっぱり速くなっているのだと改めて実感。マイガンでは最速90マイル・145キロ程度でしたが、球速以上に感じさせるものがあります。この投手も右打者には両サイド散らせられるコントロールがあるのですが、
左打者相手だと左投手ながらアバウトになる傾向があります。本当の制球力がないので甘く入ることも多く、その球を痛打される場面は少なくありません。

変化球 スライダー・ツーシーム・カーブなど ☆☆☆ 3.0

 スライダーが曲がり切らず高めに抜けたりと、変化球の精度はあまり高くありません。右打者には、130キロ台中盤のツーシーム的な小さく逃げる球を使ってきます。他に余裕が出てくると、ゆるいカーブも使ってきます。曲がりながら沈むスライダーが低めに決まってくると、三振が奪えます。全体的に、
変化球のキレや精度はそれほど高いとは言えないでしょう。

その他

 クィックは、1.15秒前後と平均的。牽制は適度に鋭く、フィールディングの動きも悪くない。右打者に関しては、外角に速球とツーシーム的な球を投げ分けて、引っ掛けさせることができていた。基本的に、あまり「間」を使ってとか、微妙な出し入れをするとか、そういった投球術は観られない。

(投球のまとめ)

 ゾーン内を真っ直ぐで押せるので、そこでカウントを稼げたりするのは大きい。それだからこそキレ・精度が高いとは言えない変化球でも、活かすことができていた。ただし、本当の制球力がないので、時々高めに甘く浮いた球をヒットされたりと、投球に繊細さがないところをどう観るか? また、エンジンがかかってくるのに時間がかかるタイプで、リリーフよりは
先発タイプなのではないのだろうか?





(成績から考える)

 この春の成績は、
6試合 5勝0敗 39回2/3 37安 20四死 39三 防 1.82 。


1,被安打は投球回数の70%以下 ✕

 被安打率は、93.3% と、地方リーグの選手としてはかなり高い。これは、ボールの威力で圧倒できていないというよりも、時々甘く入る球をヒットされるケースが多いからではないのだろうか? 

2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕

 四死球率は、50.4% と、やはり高い。打力が上がるプロの打者相手だと、さらに制球で苦労することが予想される。

3,奪三振は1イニングあたり 0.8個 以上 ○

 ほぼ投球回数と同数の奪三振を奪えており、この点では評価できる。被安打は多くても、ボールに威力のあることを示しているのだろう。

4,防御率は 1点台以内 △

 防御率は 1.82 と、基準は満たしている。しかし、0点台という絶対的なものではないし、地方リーグでありながら 1点台後半というのは、やや物足りなくも映る。

(成績からわかること)

 150キロ台の球速に目が奪われがちだが、かなり リスキー な成績であることが伺われる。左右の被安打率も、右打者には .230厘、左打者には.221厘 とほとんど変わららない。いわゆる左腕としての有難味があるわけではないということ。すなわち、
右投手と同等の目線で考えるべき投手なのではないのだろうか?


(最後に)

 
右投手と同じ評価で考えると、成績的には危うい素材型の域を脱してはいません。実際の投球を観ていても、道都大の滝田や国学大の武内 あたりと比べると、ワンランク落ちる印象は否めません。そのため個人的には、あまりこの選手を上位で指名するというのはどうなのかな?という疑問を持っています。現状は、3位前後ゾーンの選手とみて、国際大会や秋のリーグ戦での変化があるのか判断して行きたいところです。現時点では、他の上位候補の左腕達に比べると危うさを感じるので、少し割り引いてみています。


蔵の評価:
☆☆ (中位指名級)


(2023年 平塚合宿)


 








古謝 樹(桐蔭横浜大3年)投手 181/75 左/左 (湘南学院出身) 
 




 「つかみきれない」





 過去、何度か観ている投手なのだが、イマイチ特徴がつかみきれない 古謝 樹 。 一体どんな選手なのか? 真剣に向き合ってみたい。


(投球内容)

 昨秋のリーグ戦では、5勝1敗 防 2.37(5位) で、最優秀投手に輝いた。6月の大学候補選抜・平塚合宿にも招集されていた。

ストレート 130キロ台後半~140キロ台中盤 ☆☆★ 2.5

 先発すると、130キロ台のことも多く、球速という意味ではやや物足りない。大まかに両サイドに散らせて来るコントロールがあるが、荒れ球で打者としては的が絞り難い。また、上背は180センチそこそこだが、角度を付けて投げてくるので、打者としては芯で捉え難い。秋は、38イニングで28安打と、73.7% と悪くない。

変化球 スライダー・チェンジアップ・カーブなど ☆☆☆★ 3.5

 最大の武器は、スライダー。カウントを整える球と、勝負どころでは角度を生かして左打者外角のボールゾーンに切れ込み空振りを誘う。また、右打者には、外角に小さく逃げるチェンジアップを使ってくる。たまに、緩いカーブを交えるといった感じだろうか。奪三振は、38イニングで38個と、適度には奪えている。

その他

 クィックは、1.15~1.25秒 ぐらいと、若干遅め。牽制は適度に鋭く、フィールディングの動きも悪くない。微妙な出し入れをするとか、「間」を使ってとか、そういった投球術は特に感じられなかった。

(投球のまとめ)

 荒れ球と角度を生かして、芯で捉え難いピッチングに特徴がある。左打者に対しては、外に逃げるスライダーを振らせるピッチングスタイルで、右打者に関しては、外角いっぱいに、真っ直ぐだけでなくスライダー・チェンジアップなどもしっかり集められる。


(投球フォーム)

 投球だけだとよくわからない部分もあるので、フォームも分析して考えてみたい。足を引き上げる勢いは並ぐらいですが、足は高くは引き上げてきません。軸足一本で立った時には、膝には適度な余裕があり力みは感じません。

<広がる可能性> ☆☆★ 2.5

 引き上げた足をピンと伸ばすことなく重心を落としてくるので、お尻はバッテリーライン上に残りがち。カーブやフォークなどを投げられないことはないと思いますが、曲がりが鈍くなってしまいやすいです。

 「着地」までの地面の捉えも平均的、体を捻り出す時間は並ぐらい。空振りを誘うぐらいの、曲がりの大きな変化球を習得できるかは疑問です。球速のある、小さな変化を中心に投球の幅を広げてゆくことになるのではないのだろうか。

<ボールの支配> ☆☆☆ 3.0

 グラブは最後まで内に抱えられており、外に逃げようとする遠心力を内に留めている。そのため軸はブレ難く、両サイドへの投げ訳はしやすいのでは? 特に、右打者外角への制球力は安定している。

 その一方で、足の甲での地面の捉えが浅いので、浮き上がろうとする力を充分に抑え込めていない。それほど「球持ち」が悪いとは思わないが、秋は38イニングで16四死球 と、四死球率は 42.1% とかなりアバウト。決まって欲しい時に、しっかりカウントを整えられないイメージは残る。したがって 指先の感覚は、けして良い方ではなさそうだ。

<故障リスク> ☆☆★ 2.5

 お尻の落としは甘さが残るものの、カーブも滅多に投げないしフォークもみられない。そういった意味では、窮屈になる機会も少なく、肘への負担は気にしなくて良さそう。

 むしろ腕の送り出しを観ていると、ボールを持っている肩が上がりグラブを持っている方の肩は下がっている。そういった意味では、腕の送り出しには肩への負担が感じられる。出だしは静かなフォームだが、結構フィニッシュに向けて力投派なので、疲労はそれなりには溜まるフォームではないのだろうか。

<実戦的な術> ☆☆☆ 3.0

 「着地」までの粘りは平均的で合わせ難くは無さそうだが、ボールの角度と出どころを隠せているので、その点で芯で捉え難いのかもしれない。

 腕は強く振れており、打者としては吊られやすく勢いは感じられる。体重がまだグッと前に乗って来ないので、打者の手元までボールが来ている感じがしてこない。このへんが、何か訴えかけてくるものが感じられない原因かもしれない。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、特に悪いところはないものの、「着地」や「体重移動」にもう少し粘っこさが出てきて欲しい。故障のリスクが少し高い点や、制球を司る動作や将来的に武器になるほどの球を見出だせるかといった部分でも微妙であり、今後どのように進化してゆくのかは見えて来ない


(最後に)

 投球の掴みどころの無さは、フォーム分析をしても変わらなかった。一つは、真っ直ぐが決まって欲しい時に決まってくれない制球力のアバウトさ。もう一つは速球に訴えかけて来るようなものがないことが、そう思わせる要因ではないかと。そういった意味では、制球力の改善と、「体重移動」などを工夫してウェートの乗った球を打者に投げ込めるかが課題であるように思える。今のままだと、指名はボーダーラインといった感じで、左腕であることを評価して育成枠あたりといった評価に落ち着くかもしれない。


(2022年秋 横浜市長杯)