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冨士 隼斗(平成国際大4年)投手 181/85 右/右 (大宮東出身) 





 「ただの速いだけの男ではない」





 昨年までは、力任せの投球でありながら、150キロ台中盤のアマで最も速い球を投げる男、そういったイメージが強かった 冨士 隼斗 。しかし、今春は、見違えるほど実戦的なピッチングを魅せ、そのイメージは一変させられた。


(投球内容)

 昨秋は防御率 1.65 と、力でリーグ戦を圧倒。しかしこの春は、モデルチェンジがいつも上手く行っていたとは限らない。観戦した山梨学院大戦では素晴らしい内容だったが、優勝した白鴎大相手では早々降板するなど、まだ
自分のペースで投げられない時に脆さが出てしまう。

ストレート 常時145キロ前後~94マイル・151キロ ☆☆☆☆ 4.0

 下級生の時には150キロ~150キロ台中盤を投げ込んでいた時もあったが、観戦した日は先発ということもあり、やや球速は抑え気味だった。それでもポンポンとストライクを選考させ、ボールも両サイドに上手く散らせていて、制球の粗っぽさは感じられなかった。ただし、6月の平塚合宿での最速は89マイル・143キロ程度と、丁寧に投げようとする意志は感じられたものの、ボールの勢いはイマイチで調子は下り坂だった。

変化球 スライダー・チェンジアップ・シンカーなど ☆☆☆☆ 4.0

 昨秋は抜け気味で上手く制御できないこともあったスライダーでしたが、今春の試合では、左打者の内角に食い込ませたり、外角のボールゾーンからストライクゾーンいっぱいに入れてくるバックドアを魅せたりと、
自分の意図した配球で使い分けていたのにはびっくり。他にもチェンジアップ系の球や、狙って落とすシンカー系の球もおりまぜ、縦・横のコンビネーションで三振の山を築きます。真っすぐが突出している粗っぽいタイプとのイメージは、リーグ戦の投球を見て誤りだったことを強く認識させられました。

その他

 クィックは、1.15秒~1.20秒ぐらいと平均的だったものの、牽制は適度に鋭く、フィールディングの動きも良かったです。それ以上に何より、ランナーを背負え投げるタイミングを変えたり、ボールを長く持ったりして相手を焦らしたりする技術やマウンドさばきがあるのには驚かされました。けしてこの投手は、ただの素材型ではないのだと。

(投球のまとめ)

 見下ろして投げられる相手だと、凄いピッチングを魅せます。そういったハマったときの投球は、1位の12名に入ってきても不思議ではないほどです。その一方で、そうでない時の脆さや好調期間の持続など、まだまだ課題も多く残っていることを伺わせるシーズンでもありました。
絶対能力は極めて高いのですが、アベレージでのパフォーマンスが課題だと考えます。





(成績から考える)

 今週のリーグ戦では、
4勝2敗 40回 28安 21四死 58三 防 3.38 と、数字に直してしまうと平凡に見えてしまう。

1、被安打は投球回数の70%以下 ◯

 被安打率は、ちょうど基準である70%。通算では61.7%だったので、やはり力で押さなかった部分が数字を若干悪くした要因かもしれない。このへんは、モデルチェンジを図っているところなので、気にするほどではないように思える。

2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕

 四死球率は、52.5% と高い。私が観戦した山梨学院大戦では、試合中盤ぐらいまではそういった不安定さはなかった。試合によっての違いなのか? 疲れると一気に制球を乱すかは定かではない。しかし通算でも 48.6% と、この部分は大きくは改善されなかった。

3,三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎

 奪三振は、右投手ながら遥かに投球回数を上回る 1.45個 を記録。通算では1.37個 なので、この部分では良化の傾向がみられる。これは、真っすぐでグイグイ押すピッチングから、変化球を交えたコンビネーションが功を奏したのかもしれない。やはり、
三振が取れるというのは、この投手の大いなる魅力

4,防御率は1点台 △

 今春の防御率は 3.38 と、終わってみれば物足りない数字に。特に3回でK.Oされた、白鴎大戦によって数字を大きく悪化させてしまった。通算では、2.52 といったもので、昨秋のリーグ戦では 1.65 と基準を満たしていた。

(成績からわかること)

 地方リーグの成績ではあるものの、
四死球の多さや防御率の不安定さを見ると、絶対的ではないことがわかる。上記にも記したように、好調時の投球は素晴らしいので、安定した内容、レベルの高い相手でも自分の投球を貫けるかが課題であることが伺われる。


(最後に)

 
持っている能力は、今年の大学生でも指折りであるのは間違いない。ただし、その能力をプロで遺憾なく発揮できるようになるのには、数年はかかるのではないのだろうか。もし早い段階で活躍するとすれば、リリーフからといったことになりそうだ。その絶対能力を買ってハズレ1位ぐらいにとランクする球団が出てきても不思議ではないが、常識的でみれば2位前後と見るのが妥当であるように思える。ただし、上手く導けば将来チームの主力投手になれる器の持ち主だろう。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2023年 春季リーグ戦)


 








冨士 隼斗(平成国際大3年)投手の本当に凄いやつは