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冨士 隼人(22歳・日本通運)投手 181/85 右/右 (大宮東-平成国際大出身) 





 「やっぱり凄かった」




 平成鎖国最大の4年春のリーグ戦で観戦した時には、1位があっても不思議ではないほどの投球をしていた 冨士 隼人 。しかし、その試合をピークに、調子を崩して結局指名されることなく社会人に進んだ。しかし、社会人1年目のパフォーマンスを見て、改めてこの選手は上位の器だと実感させられた。


(投球内容)

 平成国際大の時は先発でしたが、社会人では主にリリーフで投げています。しかし、秋からは先発でも登板しており、2年目の今年は先発でも期待されるのではないでしょうか。

ストレート 常時150キロ前後~150キロ台中盤 
☆☆☆☆★ 4.5

 
昨年見た投手のストレートで、最もインパクトを感じたのが、この冨士投手の速球でした。大学4年時は、球速を多少落としながらも両サイドにポンポンと投げ込むような感じだった。そういった意味では、リリーフ時に投げ込む迫力の速球は、大学でも下級生時代の冨士を彷彿とさせるものがある。その球を今は、両サイドに散らせることができている。

変化球 スライダー・シンカーなど 
☆☆☆★ 3.5

 右打者外角低めに切れ込むスライダーを振らしたり、左打者の内角に食い込ませてきます。他にも縦の変化球を織り交ぜてきて、これはどうもシンカーとの話があります。この選手は、
速球派でありながら、変化球にキレがあり、空振りが奪えるのは強味だと言えるでしょう。

その他

 クイックは平均的な選手ですが、牽制は鋭く、フィールディングの動きも素早いです。ランナーを背負うと、ボールをじっくり持ったり、投げるタイミングを変えるなど、そういった投球術も持ち合わせています。

(投球のまとめ)

 4年生のときの平塚合宿では、すでに調子を落としていたのを思い出します。そう考えると、社会人1年目は、上手く元来の彼の良さを取り戻していたように感じました。そういった投球を、
年間通してできるかどうかが、この選手の評価の鍵を握るといえるのではないでしょうか。





(成績から考える)

 24年度の公式戦の成績は、
25回2/3 13安打 9四死球 28三振 防御率 2.10 といった内容になっている。8月の関東選抜、9月の日本選手権予選の試合では、先発で登板していた。

1,被安打は投球回数の80%以下 ◎

 被安打率は、社会人レベルでも 50.7% と圧倒的な数字を残している。むしろ、大学時代よりも数字を良化させているぐらいで、この点ではボールの威力で、社会人の打者たちを抑え込んでいる。

2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 △

 四死球率は、35.1% と、わずかに基準を満たせていない。そういった微妙なアバウトさが、この選手の課題なのではないのだろうか。それでも、4年春のシーズンでは、52.5%だったことを考えると、制球力もだいぶ改善してきていると言える。

3、1イニングあたりの奪三振は 0.9個以上 ◎

 1イニングあたりの奪三振は、1.09個と、投球回数を上回っている。多少四死球での出塁が多くても、三振で切り抜けることができるのだろう。さすがに、奪三振率はレベルが違うので、大学時代同様とはいかない。しかし、それでも、未だ投球回数を上回っているのだから、決め手という意味でも問題ない。

4,防御率は 1点台が望ましい △

 社会人で防御率1点台というのは、かなりハードルとしては高い。それでも、2.10 と、それに近い数字は出している。ましてサンプルも少ないので、1点の違いでかなり数字も変わってきてしまう。

(成績からわかること)

 この選手は、普段の制球力は悪くない。ただし、調子の悪い時期もあるので、そういった時に四死球を多く出したり、失点したりしてしまっているのではないのだろうか。
本当のコントロールがまだないところに、課題があるのかもしれない。


(最後に)

 ハマったときのボールの凄みは、
今年の候補の中でも指折りの存在であることは間違いなさそうだ。問題は、そういった投球を年間通して維持できるのかどうか? その問題をクリアできれば、今度こそ上位指名でのプロ入りを実現することになりそうだ。


(2024年 都市対抗)


 








冨士 隼斗(平成国際大4年)投手 181/85 右/右 (大宮東出身) 





 「ただの速いだけの男ではない」





 昨年までは、力任せの投球でありながら、150キロ台中盤のアマで最も速い球を投げる男、そういったイメージが強かった 冨士 隼斗 。しかし、今春は、見違えるほど実戦的なピッチングを魅せ、そのイメージは一変させられた。


(投球内容)

 昨秋は防御率 1.65 と、力でリーグ戦を圧倒。しかしこの春は、モデルチェンジがいつも上手く行っていたとは限らない。観戦した山梨学院大戦では素晴らしい内容だったが、優勝した白鴎大相手では早々降板するなど、まだ
自分のペースで投げられない時に脆さが出てしまう。

ストレート 常時145キロ前後~94マイル・151キロ ☆☆☆☆ 4.0

 下級生の時には150キロ~150キロ台中盤を投げ込んでいた時もあったが、観戦した日は先発ということもあり、やや球速は抑え気味だった。それでもポンポンとストライクを選考させ、ボールも両サイドに上手く散らせていて、制球の粗っぽさは感じられなかった。ただし、6月の平塚合宿での最速は89マイル・143キロ程度と、丁寧に投げようとする意志は感じられたものの、ボールの勢いはイマイチで調子は下り坂だった。

変化球 スライダー・チェンジアップ・シンカーなど ☆☆☆☆ 4.0

 昨秋は抜け気味で上手く制御できないこともあったスライダーでしたが、今春の試合では、左打者の内角に食い込ませたり、外角のボールゾーンからストライクゾーンいっぱいに入れてくるバックドアを魅せたりと、
自分の意図した配球で使い分けていたのにはびっくり。他にもチェンジアップ系の球や、狙って落とすシンカー系の球もおりまぜ、縦・横のコンビネーションで三振の山を築きます。真っすぐが突出している粗っぽいタイプとのイメージは、リーグ戦の投球を見て誤りだったことを強く認識させられました。

その他

 クィックは、1.15秒~1.20秒ぐらいと平均的だったものの、牽制は適度に鋭く、フィールディングの動きも良かったです。それ以上に何より、ランナーを背負え投げるタイミングを変えたり、ボールを長く持ったりして相手を焦らしたりする技術やマウンドさばきがあるのには驚かされました。けしてこの投手は、ただの素材型ではないのだと。

(投球のまとめ)

 見下ろして投げられる相手だと、凄いピッチングを魅せます。そういったハマったときの投球は、1位の12名に入ってきても不思議ではないほどです。その一方で、そうでない時の脆さや好調期間の持続など、まだまだ課題も多く残っていることを伺わせるシーズンでもありました。
絶対能力は極めて高いのですが、アベレージでのパフォーマンスが課題だと考えます。





(成績から考える)

 今週のリーグ戦では、
4勝2敗 40回 28安 21四死 58三 防 3.38 と、数字に直してしまうと平凡に見えてしまう。

1、被安打は投球回数の70%以下 ◯

 被安打率は、ちょうど基準である70%。通算では61.7%だったので、やはり力で押さなかった部分が数字を若干悪くした要因かもしれない。このへんは、モデルチェンジを図っているところなので、気にするほどではないように思える。

2,四死球は投球回数の1/3(33.3%)以下 ✕

 四死球率は、52.5% と高い。私が観戦した山梨学院大戦では、試合中盤ぐらいまではそういった不安定さはなかった。試合によっての違いなのか? 疲れると一気に制球を乱すかは定かではない。しかし通算でも 48.6% と、この部分は大きくは改善されなかった。

3,三振は1イニングあたり0.8個以上 ◎

 奪三振は、右投手ながら遥かに投球回数を上回る 1.45個 を記録。通算では1.37個 なので、この部分では良化の傾向がみられる。これは、真っすぐでグイグイ押すピッチングから、変化球を交えたコンビネーションが功を奏したのかもしれない。やはり、
三振が取れるというのは、この投手の大いなる魅力

4,防御率は1点台 △

 今春の防御率は 3.38 と、終わってみれば物足りない数字に。特に3回でK.Oされた、白鴎大戦によって数字を大きく悪化させてしまった。通算では、2.52 といったもので、昨秋のリーグ戦では 1.65 と基準を満たしていた。

(成績からわかること)

 地方リーグの成績ではあるものの、
四死球の多さや防御率の不安定さを見ると、絶対的ではないことがわかる。上記にも記したように、好調時の投球は素晴らしいので、安定した内容、レベルの高い相手でも自分の投球を貫けるかが課題であることが伺われる。


(最後に)

 
持っている能力は、今年の大学生でも指折りであるのは間違いない。ただし、その能力をプロで遺憾なく発揮できるようになるのには、数年はかかるのではないのだろうか。もし早い段階で活躍するとすれば、リリーフからといったことになりそうだ。その絶対能力を買ってハズレ1位ぐらいにとランクする球団が出てきても不思議ではないが、常識的でみれば2位前後と見るのが妥当であるように思える。ただし、上手く導けば将来チームの主力投手になれる器の持ち主だろう。


蔵の評価:
☆☆☆ (上位指名級)


(2023年 春季リーグ戦)


 








冨士 隼斗(平成国際大3年)投手 181/85 右/右 (大宮東出身) 
 




 「馬力は凄い」





 昨秋リーグ戦で話題になっていた時にも見たけれど、非常に速い球を投げ込んでくる投手だったと記憶している 冨士 隼斗 。秋の大学日本代表・松山合宿にも選出され、そこでも常時150キロ台の圧倒的な球速を誇っていた。


(投球内容)

 3年秋のシーズンでは、4勝1敗 49回 24安 18四死 66三 防 1.65(7位) といった成績をリーグ戦で残している。 

ストレート 常時150キロ~150キロ台中盤 ☆☆☆☆★ 4.5

 真っすぐの勢いや球速においては、今のアマチュア球界でも屈指のストレートを投げ込んでくる。ボールに勢いがあるので、多少高めに集まりやすいのはあまり気にならない。ただし、合宿では高めの真っすぐを本塁打される場面も。むしろ気になるのは、コントロールがかなりアバウトなところ。それでもリーグ戦では 36.7% と、投球回数の1/3以上のペースで出しているものの、そこまで荒れ荒れといった数字ではないのだが ・・・ 。

変化球 スライダーなど ☆☆ 2.0

 速球中心の配球ながら、時々スライダーを投げ込んでくる。ただ、この球が決まらなかったり、高めに抜けたりしがちなのは気になる。確認できなかったが、他にもチェンジアップやシンカーやカーブなどもあるようだが、現状さほど頼れる球種とは言えないのだろう。まずは、真っすぐ以外の球で、確実にカウントが取れる球が欲しい。

その他

 クィックは、1.15秒前後と基準レベル。フィールディングの動きも、けして悪くなかった。牽制に関してはよくわからなかったが、間を意識して投げるとか、微妙な出し入れをといった投球術ではなさそう。あくまでも、力でグイグイ押してくる強気なスタイルだ。

(投球のまとめ)

 現状は、ひたすら馬力にかまけて押してくるタイプといった感じだった。そのため、先発でゲームメイクをというよりも、プロではリリーフタイプなのだろうなといった感じ。まずは、確実にカウントをとれる変化球を身につけることから始めたい。最終学年で、そういった投球にどのような変化が生まれるのか見極めてみたいところ。


(投球フォーム)

 今度は、フォームの観点から考えてゆきたい。セットポジションから、足を引き上げる勢いや高さがあるリリーフタイプ。軸足一本で立った時に、膝から上がピンと伸びがちですが、全体的にバランスよく立てています。

<広がる可能性> ☆☆☆★ 3.5

 比較的足を高い位置でピンと伸ばせており、お尻の一塁側への落としは悪くありません。したがって体をひねり出すスペースを確保できているので、カーブで緩急をつけたりフォークのような縦の変化の習得も可能な投げ方をしています。

 「着地」までの地面の捉えも、前に足を逃がそうという意識は感じます。まだ幾分股関節の柔軟性に欠けるのか? もう少しステップの幅が広げられると、「着地」までの時間が稼げそう。そうなれば、切れや曲がりの大きな変化球の習得も期待できるようになりそう。

<ボールの支配> ☆☆☆★ 3.5

 グラブは最後まで内に抱えられ、外に逃げようとする遠心力は内にとどめています。そのため軸はブレ難く、両サイドへのコントロールはつけやすい。足の甲の地面の捉えも悪くないのだが、上記に記したように若干重心が高い上に、リリースでの押し込みができないまま投げ込まれているので、高めに集まりやすいのではないのだろうか? そのため、指先の感覚が良くない。

<故障のリスク> ☆☆☆★ 3.5

 お尻が落とせているので、カーブやフォークを投げても窮屈になり難い。また現状は、ほとんど真っすぐとスライダーなので肘への負担は少ないと考えられる。腕の送り出しも、それほど違和感や極端ではないので、肩への負担もそこまで気にしなくても良さそう。かなりの力んで投げているので、その点で疲労を溜めやすいのかなと思う部分はある。

<実戦的な術> ☆☆☆★ 3.5

 「着地」までの粘りは平均的なため、打者としてはそれほど合わせ難いフォームではないだろう。それでもボールの出どころは、なんとか隠せている。腕は強く振れているので、あとは球持ちが良くなってくれば、投げ終わったあともっと腕が体に絡んできそう。

 ボールのへの体重の乗せも悪くはないが、この辺もリリースが我慢できると、もっと体重が前にグッと乗ったフォームになれる。まだ時々一塁側に重心が流れる時があり、作り出したエネルギーをロスしてしまっている。

(フォームのまとめ)

 フォームの4大動作である「着地」「球持ち」「開き」「体重移動」では、「球持ち」に課題があり、他の部分は平均的で、まだ良くなる余地を残している。制球を司る動作も、リリースの押し込みの部分には改善の余地があるが、思ったほどは悪くない。故障のリスクも、力みが消えると負担は軽減できそう。将来的に武器になる変化球を習得してゆけるのか?といった部分では、フォームの土台は悪くないので、「着地」までの時間を改善できてくると、曲がりの大きな変化球も習得可能ではないのだろうか。そういった意味では、まだまだ発展途上ではあるものの、今後の取り組み次第では大きく改善できる可能性を秘めている。


(最後に)

 投球はまだまだ素材型の域を脱してはいないものの、フォームの土台などからも、今後の取り組み次第では良くなって行ける可能性に満ちた素材ではないのだろうか。大学生の間に間に合うかはわからないが、この一年でどのぐらい実戦的になってゆけるのか楽しみな素材ではある。期待して、今後も追いかけてみたい。


(2022年秋 松山合宿)